スズメの巣 第10話

第10話 いざ参らん。

夜景がきれいに見えるようになってきたが、橋口たちはそれには気づかないほど集中していた。

土井が話し出す。
「それでは、後半戦。第3巡指名に移ります。選手氏名と団体名を記入してください。」

「取れるのかなぁ・・・。」
「大丈夫だよ!うーみん!」
「そうだよね!ありがとう。」

北条が話し出す。
「それでは、お名前出そろいました。指名選手発表に移ります。」

「最初に、海王ゴールドバンディッツ 3巡目希望・・・。」
「榊 愛斗 全日本麻雀連盟。」

「やっぱり、全日本の中で今勢いがあるからな。」
「私、てっきり2巡目指名かと。」
「まぁ、堀内さんがどうしても欲しいと思っていたんだろうな。」
「まぁ、無理はないな。」

「続きまして、大阪ラフミカエルズ3巡目希望・・・。」
「岡田 波奈 全日本麻雀連盟。」

「来ましたね。」
「しゃべりも経つからなぁ。」
「混ぜるな危険なにおいがする。松崎さんとは。」
「当たり前だろ。危険極まりない。」

「続きまして、オダイバ eレインボーズ3巡目希望・・・。」
「藤 津奈 プロ電現麻雀連盟。」

「おっとこれもサプライズだな。」
「なんでですか?」
「まだプロ歴は5年ぐらいで、初タイトルがeサバイバル総合優勝っつう猛者だな。」
「怖い若手ですね。」

「続いて、キャピタル麻雀部。3巡目希望・・・。」
「川口 慧(かわぐち けい)プロ競技麻雀協会」

「取られましたね。」
「まぁ、確定かぁ。」

「続きまして、JOY V-deers 3巡目希望・・・。」
「日ノ出 大吾。プロ電現麻雀連盟。」
観客は納得した感じだった。

「理解してもらってよかったです。」
「正直5年前までくすぶってたからな。」
「面談の時も本人も泣いてはいたなぁ。」

ドラフト1週間前。
鳳は、とある会社を訪ねていた。
「15時よりお約束している鳳ですが。日ノ出社長はいらっしゃいますか?」
「少々お待ちください。日ノ出社長~。」

そこから、2分ほど。

「お待ちしておりました。株式会社トラベルサンライズの社長。日ノ出と申します。」
「JOYグランドスラムの鳳です。よろしくお願いいたします。」
「では、こちらへどうぞ。」
「失礼します。」


「こちらにお入りください。」
「あっ。失礼いたします。」
応接室のようだ。
少しカジュアルな感じはしたが、リラックスできるソファへ腰を下ろした。
「お茶がよろしいですか?それとも、コーヒー?」
「お気遣いなく。すぐ終わりますので。」
「まぁお茶入れちゃいますね。」
「あぁありがとうございます。恐れ入ります。」

日ノ出は、お茶を出した。
「どうぞ~。」
「ありがとうございます。頂戴します。」
「で今回は?」
「実は、日ノ出さんにご相談がありまして。」
「ほう。何でしょうか。」
「私、リーグ・ザ・スクエアのチーム担当を会社で担当しています。」
「つまり、麻雀ということですか?」
「はい。それで日ノ出さんの成績を鑑みたときにぜひ、うちのチームは獲得したいと考えています。」
「なるほど・・・。」
「まだ確定ではないですが、ドラフトで指名するつもりではいます。」
「うん・・・。」
「他のチームからお誘いとか受けてますか。」
「いえ、まったく・・・。」
「左様でしたか。お気持ちをお聞かせください。」


すると、日ノ出の様子がおかしかった。
「ぜひお願いします!!!」
そう言うと、号泣した。

泣きながら、「もう終わりだ。そう思ってました。今年何もなかったらやめようと思っていたんです。そんな時にチャンスを頂いて何と言えばいいのか・・・。」と話した。

鳳は困りながら、「2カ月ですが、かなり本気と感じられました。成績もよろしいですから。自信持ってください。」と励ました。

その後、30分ぐらいは話した。
鳳は、時計に目をやって「私はこの後予定がありますので、ここで失礼します。」と言った。

「お気をつけて。」
泣き腫らした目を見せつつ笑って見送ってくれた。
その光景は、忘れられない。

「いい人だな。」
「真面目なんでしょうね。」

そんな中でも、指名発表が続く。
「神保町ブラックタートルズ 3巡目希望・・・。」
「日ノ出 大吾 プロ電現麻雀連盟。」

「こっちで被るか?」
「読み間違えましたね。」
橋口はもう何も言えない。

「乃木坂アイロンマレッツ 3巡目希望・・・。」
「田村 あすか プロ競技麻雀協会。」

「育成枠かぁ。」
「未タイトル。プロ歴半年の新人だ。ここで、鍛えてタイトルを取らせる狙いだな。」
「なるほど。」

「幕張麻雀闘宴団 3巡目希望・・・。」
「日ノ出 大吾 プロ電現麻雀連盟。」
「3かぶりか。」
「うーみん!うーみん!大丈夫?」
「ほっとけ。」
橋口はがっくりしていた。

「最後に、夕暮れポセイドンズ 3巡目希望・・・。」
「榊 愛斗 全日本麻雀連盟。」

「かぶりましたね。」
「あの人だからねぇ。」

「さぁ。それではですね。ラフミカエルズとeレインボーズ、キャピタル麻雀部、アイロンマレッツは交渉権獲得です!おめでとうございます!」
「それでは、重複が少ないチームから抽選を行います!なので、榊選手争奪でゴールドバンディッツとポセイドンズの代表者はステージまでお願いします!」

スーツの男性二人が並んだ。
「順番は、お任せします。では引いてください。」
遠慮せずに、ポセイドンズの代表者が、パイを引いた。
続けてゴールドバンディッツの代表者が引いた。
「では参ります。お二人とも一斉にオープンです!どうぞ!」
ポセイドンズの代表者はグッと拳を突き上げた。
ポセイドンズ陣営は、ハイタッチしていた。
よほど欲しかったんだろう。

「ポセイドンズが交渉権獲得です!おめでとうございます!」
「さぁ続いて、日ノ出選手の抽選です。代表者の方どうぞ―!!」

「じゃあ、私行ってくるね。」
橋口が言うと、「ダメダメ!!」と3人が慌てて静止した。
「なんでよぉ!」
「あの件忘れてないよね!」
「頼む。行くな。」
「取るには、運が欲しいんだ。落ち着け。」
ひどい言われようだった。

「大丈夫ですよ!今回は行ける気がします!」
「ほんとにダメ。金洗頼んだ。」
「はい。もちろんです!」
「そんな言わなくても・・・。」
橋口はすねた。


金洗は、ステージに向かった。
「さぁ抽選です。例によって順番はお任せします。それではどうぞ。」
決まらなそうだったが、じゃんけんで決まった。金洗は2番目。
麻雀闘宴団の代表が、真ん中を選択。
続いて、金洗は左を選んだ。
最後にブラックタートルズの代表は、右を選んだ。

「さぁ。出そろいました!では、パイを一斉にオープン!!」
パイをめくった。
「ありがとうございます!!!」
金洗が叫んだ。
「ということで、日ノ出選手は、V-deersが交渉権獲得しましたー!おめでとうございます!」

「よかったぁ。」
金洗が戻り、席に着く。
「ナイス!さくちゃん!!」
「橋口じゃなくてよかったなぁ。」
「次は行きますからね。」
「あったらな。でも行かせないかな。」
「なんなんですか?そろそろ怒りますよ。」

そうは言いつつも、橋口は内心ホッとしていた。
「私じゃなかったなぁ!!!!」

「では抽選に漏れた3チームは、再度入力をお願いします。」

「ここも怖いですね。」
「まぁ、信じるしかないだろ。」
「そうだよ。うーみん。まだ分からないし。」

北条が話し出した。
「3チームの指名が揃いました。では、発表に移ります。」
「来ますよ。」

「海王ゴールドバンディッツ 3巡目再希望・・・。」
「鮫島 武 プロ競技麻雀協会」

「プロ歴は30年とベテラン。翻王戦については、18年連続準々決勝以上進出記録継続中。優勝は3回。高打点型だな。」

「神保町ブラックタートルズ 3巡目再希望・・・。」
「戎井 華音 プロ競技麻雀協会」

「取られました。まずいですね。」
「あいつ取りに動くか?」
「もう私は、腹をくくりました。動きます。」
「了解です。」

「最後に、幕張麻雀闘宴団 3巡目再希望・・・。」
「浜田 海斗 全日本麻雀連盟」
「若手か。」
「タイトルはまだありませんね。ただ、ネクストブレイクで注目はされてます。」

「それでは、3巡目全員確定しました。交渉権獲得です。」
「続いては、最終選択に移ります。選手のお名前と団体名をご記入ください。」

「責任は私が取ります。」
「わかった。書いてみろ。」
「橋口ありがとう。」

橋口は、名前を書き終えた。

第11話に続く。




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