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ふたりで親になる

互いに「相棒」と呼び合うパートナーとの間に、子を出産して約1ヶ月半。日ごとに成長する我が子を2人でお世話しています。

家事も育児も全部分担。いや、家事は相棒の方がこまごまとしたことに気づいて、よくやってくれている気がします。自分はそんな相棒に甘えすぎないように、母乳を出せることにあぐらをかかまいと頑張る日々。
いや、もちろんあぐらをかこうなんて気持ちは微塵もないのですが。傍からそう見られないよう頑張っているって話です。

自分達にとってはこれが当たり前の日常になりました。
でも他の人から見たら、ふたりで平等に家事も育児もするというのは「旦那さんすごい!」となるらしいのです。もうこれまでに何度言われたことか。子の夜間の面倒を1日交代で見ることも驚かれて、こちらが驚きました。二人とも育休を取るなら普通に出来るのでは……?

繰り返しますが、自分達にとってはこれが当たり前なのです。当たり前になる確信を持てていなかったら、トランスジェンダーの端くれな私が、子を産む決心をするわけなどなかったのです。
身体の構造上やむを得ないことを除けば、家事も育児も当たり前にこなす。それが我々の在り方。

この世の中ではどうして、“男性”が家事や育児をできると褒められて、“女性”が家事や育児をできるのは当然だと思われるのでしょうか。
仕事をしている男性がなかなか長期の育休を取れないなど、仕事に重きをおかざるを得ない男性が未だに多いことはわかっています。だから、家の中での作業を女性が多く受け持ちがちなこともわかっています。
けれども、家事や育児のスキルを身につけるのは、やる気があればできるのではないでしょうか。実行する機会こそ少なくても、やる気があって行動していれば、「家事や育児は出来ません」とはならないと思うのです。

我々は育児をするようになってから、なおのこと、世間とのギャップを感じずにはいられません。

“女性”側として扱われる自分が、育児するのを当たり前と思われて、特段褒められもしないことはまだ些細な問題です。
自分ばかりが子育てをしている前提で労わってもらえる時は少し辛いです。産後の身体を労わってもらう分には素直にありがたいのですが、子育て疲れは平等に両方に来ていますから。相棒の頑張りも見てくれって思っちゃいます。

“男性”側に属する相棒は逆に、家事も育児も「お手伝い程度」にするものだと思われがちな世の中で主体的に子育てすることになります。育休を取得しても、仕事から解放されて楽をしているかのような見られ方をされがち。きっとたまったものではないでしょう。
また、当たり前なはずのことでむやみに褒められて、男性に求められているレベルの低さにモヤモヤすることもあります。

だから相棒は、元々の気質もあれど、より完璧にこなさねばという思いに駆られて自分自身を追い込んでいる様子です。子が泣き止んでくれない時、子と闘うようにあやし続け、私とも競うようにして頼らず消耗していく相棒の姿は、たまに見ていられなくなります。
育児を孤独に頑張る人が壊れていく過程って、きっとこんな風なんでしょうね。

世間には育児で心身の調子を悪くした人への支援サービスも増えてきましたが、大体は母親向けか、そうでなくても母親をターゲットにしていることがありありとわかる内容のものばかりです。無論それらは必要で貴重なものですが、サービスを受けたい男性が同様に頼りやすい場は手近に無いものでしょうか。

ところで、二人で平等に赤ちゃんの育児を分担してみて、産んだ側には2つの大きなアドバンテージがあることに気づきました。

・赤ちゃんが聴覚や嗅覚から本能的に自分を求めてくれる
・産後のホルモン分泌により短時間の睡眠を繰り返すことで回復できるようになっている

産んでいない側の親は、子が産まれたら自分を認識してもらうところから始めなければなりません。そして、本能的には求められない立場であるため、赤ちゃんがごく幼いうちは、あやしてもなかなか落ち着いてもらえない確率が高い様子です。
さらには、昼夜問わず2,3時間おきに授乳するのは、いうまでもなくかなりの苦行なはずです。産んだ側の親にとってももちろん苦行ではありますが、ホルモンの効果でダメージが少なくなっていることは体感できます。

相棒は、経験を重ねることで子育てスキルを高めて、アドバンテージを持つ私との差を帳消しにしようと努めています。アドバンテージの差が最も出るように思える局面が寝かしつけの場面ですが、相棒はとにかく積極的に回数を重ねて試行錯誤することで差を詰めています。
その様子からは、産んでいない側の人が育児をする時にはかなりの根気や体力が必要なことがうかがえます。男性陣や該当の子を産んでいない人が育児を続けるのに、産んだ本人以上の粘り強さが必要なのは事実なようです。

最初っから匙を投げる“男性”のことはさておき、少し頑張ってみてから匙を投げたくなるのは、無理もない気がします。
子が両親を本能と違う形で求めるようになる頃には、アドバンテージの差は減るかと思うのですが。

逆境の中、と言ってしまっても過言でない状況の中で家事にも育児にも全力な相棒。感謝しかありません。自慢の相棒です。
だから、こういう人への適切な評価や支援をしてくれる社会づくりがなされていくこと、それによって、我々の子育てスタイルが当然のスタイルのひとつとなる未来を願います。

我々は子育てのある生活を回す上でも、どちらが「母親」でもどちらが「父親」でもない、「相棒」という名のパートナーになりました。


#私のパートナー


現状、自分の生き様や思考を晒しているだけなので全記事無料です。生き様や思考に自ら価値はつけないという意志の表れ。 でも、もし記事に価値を感じていただけたなら、スキかサポートをいただけるとモチベーションがめちゃくちゃアップします。体か心か頭の栄養にしますヾ(*´∀`*)ノ