青大井空

目印はいくつもある、この星の上に この星の上でぼくたちが いつかまたやり直せるように …

青大井空

目印はいくつもある、この星の上に この星の上でぼくたちが いつかまたやり直せるように 時を越え再びめぐり会えるように 目印はいくつもある、この星の上に……。 /小説と詩を公開中。1962年生まれ、男

マガジン

  • 詩の倉庫と化してます。多分1、000個位はいくかと。

  • (詩集)きみの夢に届くまで

    詩の数が多いので、厳選しました。っても多い?

  • 小説と童話

    小説と童話です。 赤字のnoteに貢献すべく、有料にしました(多分貢献度0でしょうけど)。

  • 詩、小説以外

    雑記など。

  • (戯言集)コロナと戦争屋

    コロナとの戦いでなくコロナ騒動を起こした連中との戦い。併せてロシア・ウクライナ間にみられるプロパガンダ並びに戦争屋との戦い。

記事一覧

固定された記事

(小説)八月の少年

43章の連載です。よかったらお付き合いください。どの章も長文なので、時間のある時にお読み下さい。 (あらすじ)#アインシュタイン #リトルボーイ #マンハッタン計画

青大井空
4週間前
35

(小説)八月の少年(三十)

(三十)線香花火駅 「次は線香花火駅。お降り遅れのないよう、お気を付け願います」  雨の季節を駆け抜け、列車はとうとう真夏へと突入した。車窓から見上げる夏の星座が美…

青大井空
3時間前
15

(小説)八月の少年(二十九)

(二十九)ほたる駅  暗い窓ガラスの彼方に明滅する光が現れた。何だろう、あの光は?ネオンライトのようにも見えるが。列車は光へと近付いていった。ゆっくり、ゆっくり。…

青大井空
1日前
26

(小説)八月の少年(二十八)

(二十八)離脱者  列車は暗黒と静けさの中を黙々と走り続けた。やがて遠くに灯りが見えた。どこか見覚えのある灯りの群れ。どこだ、ここは?わたしは記憶を辿った。ここは…

青大井空
2日前
27

(小説)八月の少年(二十七)

(二十七)ある夢  街灯り駅の灯りが遠ざかると地上はまたまっ暗になった。長いトンネルにでも入ったかのようなそれは永い永い闇で空に星の瞬きすら見えなかった。わたしは…

青大井空
3日前
19

(小説)八月の少年(二十六)

(二十六)街灯り駅  桜並木が途絶え再び列車は殺風景な地上を走り続けた。やがて遠くに灯りが見えた。 「次は街灯り駅。お降り遅れのないよう、お気を付け願います」  街…

青大井空
4日前
27

(小説)八月の少年(二十五)

(二十五)桜  ネオンの波が途絶えると窓の外はまっ暗になった。日は既に沈み夜の帳が降りていた。何処を走っているのか灯りひとつ見えない。空を見上げても巨大な雲の群れ…

青大井空
5日前
26

(小説)八月の少年(二十四)

(二十四)人波駅  おや何だ?このざわめき。押し寄せては引いてゆく、まるで波の音、何て心地いい。もしかしてここは海?  目を覚ました。わたしはシートに座り窓にもたれ…

青大井空
6日前
26

(小説)八月の少年(二十三)

(二十三)Tokyo  目を開けると列車は地上に戻っていた。空は夕闇に包まれ外の景色はもう薄暗かった。建物はなく地平線だけが何処までも続いている。列車はレールの上をひた…

青大井空
7日前
29

(小説)八月の少年(二十二)

(二十二)1945年駅 「ご安心下さい。この列車は水の中でも平気ですから」  車掌が現われた。 「何?」  けれど車掌の言う通りだった。列車は川の中に沈んでいるのに不…

青大井空
8日前
24

(小説)八月の少年(二十一)

(二十一)黄昏  車掌が通りかかったので声をかけた。 「だいぶ涼しくなったね。夏も終わりかね?」 「もう秋でございますから」 「秋?」  驚いたわたしを置いて車掌はさ…

青大井空
9日前
20

(小説)八月の少年(二十)

(二十)夕映え駅  わたしは我に返った。列車はすでに海岸線を離れもう海は見えなかった。  わたしは滝のような汗をかいていた。その時車掌の声がした。 「次は夕映え駅。…

青大井空
10日前
24

(小説)八月の少年(十九)

(十九)戦場  雨が止むと暑さが増した。いつこんな所まで来たのか遠くに海が見えた。  美しい島々が見えた。青い海、空には入道雲が広がっている。島の緑、白い砂浜、照り…

青大井空
11日前
22

(小説)八月の少年(十八)

(十八)tsuyu  激しい雨が降った。そのせいで暑さは少し和らいだのだが。雨に混じって遠くから爆発音が聴こえた。  またか?  今度はどこだ?  確か前に爆発音を聴いた…

青大井空
12日前
18

(詩)母の日には

母の日には 部屋の窓辺に 赤いカーネーションの 一輪挿しを飾り 窓を開け 風に吹かれよう カーネーションが 五月の風に揺れ あたかも おかあさん、 あなたがわたしに 笑…

青大井空
12日前
26

(小説)八月の少年(十七)

(十七)サンタクロース  ドスン。  突然列車が止まった。車掌が現われ急いで外へ出た。 「どうしたのかね?」  わたしも後に続いた。外は豪雪。吹雪の中を列車の先頭まで…

青大井空
12日前
28
(小説)八月の少年

(小説)八月の少年

43章の連載です。よかったらお付き合いください。どの章も長文なので、時間のある時にお読み下さい。

(あらすじ)#アインシュタイン #リトルボーイ #マンハッタン計画 #原爆 #ヒロシマ #昭和天皇 #尾瀬 #創作大賞2024 #ミステリー小説部門

《本文》(エピグラフ)
 That we are is the certainty that, we have been and will be.(

もっとみる
(小説)八月の少年(三十)

(小説)八月の少年(三十)

(三十)線香花火駅
「次は線香花火駅。お降り遅れのないよう、お気を付け願います」
 雨の季節を駆け抜け、列車はとうとう真夏へと突入した。車窓から見上げる夏の星座が美しかった。
 列車は次の駅に到着しプラットホームに停車した。ホームは薄暗かった。暗いホームを見渡すと何やら人影があった。良く見るとどうやら子どもたちのようだ。
 一体何をしているのだろう?
 子どもたちはひとかたまりになってしゃがみ込ん

もっとみる
(小説)八月の少年(二十九)

(小説)八月の少年(二十九)

(二十九)ほたる駅
 暗い窓ガラスの彼方に明滅する光が現れた。何だろう、あの光は?ネオンライトのようにも見えるが。列車は光へと近付いていった。ゆっくり、ゆっくり。そして列車は止まった。
 そこは駅だった。
 では、ここがほたる駅か?瞬く光はほたる?わたしはホームの端から端まで見渡した。無数のほたるの火が駅を包み込むように飛んでいた。わたしは息を飲みその幻想的な風景に魅せられた。辺りは心臓の鼓動さえ

もっとみる
(小説)八月の少年(二十八)

(小説)八月の少年(二十八)

(二十八)離脱者
 列車は暗黒と静けさの中を黙々と走り続けた。やがて遠くに灯りが見えた。どこか見覚えのある灯りの群れ。どこだ、ここは?わたしは記憶を辿った。ここは確か。
 そうだ、ここはロスアラモス!
 人里離れた山奥に建つ研究所。しかし、またなぜここへ?そう思う間もなく列車は止まった。目の前には研究所の門があった。相変わらず固く閉ざされた門。
 ドアが開くわけでもなく列車はしばらくそこに停車して

もっとみる
(小説)八月の少年(二十七)

(小説)八月の少年(二十七)

(二十七)ある夢
 街灯り駅の灯りが遠ざかると地上はまたまっ暗になった。長いトンネルにでも入ったかのようなそれは永い永い闇で空に星の瞬きすら見えなかった。わたしはただぼんやりと暗い窓ガラスに映る自分の顔を眺めていた。
 ふとその時わたしは夢を見た。それは眠りの中の夢だったか、それとも暗い窓ガラスに映った幻想だったのか定かではない。ただいずれにしろそれは奇妙な夢だった。その夢とは。

 いずこよりひ

もっとみる
(小説)八月の少年(二十六)

(小説)八月の少年(二十六)

(二十六)街灯り駅
 桜並木が途絶え再び列車は殺風景な地上を走り続けた。やがて遠くに灯りが見えた。
「次は街灯り駅。お降り遅れのないよう、お気を付け願います」
 街灯り駅?ではあれは駅の灯りか?しばらくすると駅に到着した。列車はホームへと静かに停車した。駅のまわりはまっ暗で駅の灯りだけが闇の中に浮かんでいた。静かだった。まるで時が止まったかのような静けさ。ホームにはベンチがひとつ置かれていたが人影

もっとみる
(小説)八月の少年(二十五)

(小説)八月の少年(二十五)

(二十五)桜
 ネオンの波が途絶えると窓の外はまっ暗になった。日は既に沈み夜の帳が降りていた。何処を走っているのか灯りひとつ見えない。空を見上げても巨大な雲の群れが星の瞬きを覆い隠している。上空では強風が吹いているのか空を駆ける雲の流れは速かった。

 風の中にノイズが聴こえて来た。やがてノイズは声へと変わった。ラジオの声だ。何のニュースだろう?わたしは聞き耳を立てた。声は叫んだ。
『臨時ニュース

もっとみる
(小説)八月の少年(二十四)

(小説)八月の少年(二十四)

(二十四)人波駅
 おや何だ?このざわめき。押し寄せては引いてゆく、まるで波の音、何て心地いい。もしかしてここは海?
 目を覚ました。わたしはシートに座り窓にもたれていた。車掌が倒れていたわたしを起こしてくれたのだろう。列車は停車していた。外を見ると辺りはもう薄暗い。空にきらりと何かが光っている。また爆撃機か?爆撃機のライト?いやそうではない。光は同じ位置にとどまって動かなかった。しかもやさしいそ

もっとみる
(小説)八月の少年(二十三)

(小説)八月の少年(二十三)

(二十三)Tokyo
 目を開けると列車は地上に戻っていた。空は夕闇に包まれ外の景色はもう薄暗かった。建物はなく地平線だけが何処までも続いている。列車はレールの上をひたすら走り続けた。
 しばらくして物音に気付いた。空だ。急いで空を見上げると何かが飛んでいる。何だろう?よく見るとそれは戦闘機だった。夕闇の中に無数の戦闘機が飛んでいる。きれいに整列して次から次へと編隊を組んだ戦闘機の集団が現れては空

もっとみる
(小説)八月の少年(二十二)

(小説)八月の少年(二十二)

(二十二)1945年駅
「ご安心下さい。この列車は水の中でも平気ですから」
 車掌が現われた。
「何?」
 けれど車掌の言う通りだった。列車は川の中に沈んでいるのに不思議と水は浸入して来なかった。恐る恐る窓の外を眺めた。列車はゆっくりゆっくり沈んでゆき、やがて川底に到着すると止まった。外はまっ暗で何も見えない。時より魚がガラス窓に当り驚いたように逃げていったがそれ以外は静かだった。しーんと静まり返

もっとみる
(小説)八月の少年(二十一)

(小説)八月の少年(二十一)

(二十一)黄昏
 車掌が通りかかったので声をかけた。
「だいぶ涼しくなったね。夏も終わりかね?」
「もう秋でございますから」
「秋?」
 驚いたわたしを置いて車掌はさっさと歩き去った。窓を見た。すると確かに木々の葉が色づき街の景色はもう秋の佇まいだった。列車はいつか川沿いを走っていた。川の向こう側にビルが建ち並んでいる。随分都会のようだが。もう夕暮れのラッシュ時なのか人の波が慌ただしく行き交ってい

もっとみる
(小説)八月の少年(二十)

(小説)八月の少年(二十)

(二十)夕映え駅
 わたしは我に返った。列車はすでに海岸線を離れもう海は見えなかった。
 わたしは滝のような汗をかいていた。その時車掌の声がした。
「次は夕映え駅。お降り遅れのないよう、お気を付け願います」

 夕映え駅?
 走り続ける列車の窓から空を見上げた。夏の夕映えが広がっていた。地平線の彼方に小さな駅が見える。あれが夕映え駅か。列車はゆっくりと駅に到着した。駅舎もホームの看板や線路もみな夕

もっとみる
(小説)八月の少年(十九)

(小説)八月の少年(十九)

(十九)戦場
 雨が止むと暑さが増した。いつこんな所まで来たのか遠くに海が見えた。
 美しい島々が見えた。青い海、空には入道雲が広がっている。島の緑、白い砂浜、照りつける夏の日差し。けれど爆発音は聴こえ続けた。その美しい島々が爆発で燃えていた。
「あそこも戦場なのか?あの場所でも戦争を」
 と問いかけて車掌がいないことを思い出し止めた。
 ここは何処だ?あの島々は何という島だろう?
 列車が海岸線

もっとみる
(小説)八月の少年(十八)

(小説)八月の少年(十八)

(十八)tsuyu
 激しい雨が降った。そのせいで暑さは少し和らいだのだが。雨に混じって遠くから爆発音が聴こえた。
 またか?
 今度はどこだ?
 確か前に爆発音を聴いた時そこはスターリングラードで、ドイツが敗北した場所。
 今度はどこが戦場なのだ?

「激しい雨ですね」
 突然声が。驚いて振り向くと車掌だった。
「何だ、きみかね」
 わたしは安堵したようにため息を吐いた。
「雨もだが、きみ。あの

もっとみる

(詩)母の日には

母の日には
部屋の窓辺に
赤いカーネーションの
一輪挿しを飾り

窓を開け
風に吹かれよう
カーネーションが
五月の風に揺れ

あたかも
おかあさん、
あなたがわたしに
笑い掛けて
くれているかのように

この星の
大地に、海に
そして夜になれば
遠い銀河の中に
今はもう
眠るあなたのために

今は夢見る少女のように
眠るあなたが
くすくすっと
わたしに
笑い掛けてくれるように

五月の窓辺に

もっとみる
(小説)八月の少年(十七)

(小説)八月の少年(十七)

(十七)サンタクロース
 ドスン。
 突然列車が止まった。車掌が現われ急いで外へ出た。
「どうしたのかね?」
 わたしも後に続いた。外は豪雪。吹雪の中を列車の先頭まで辿り着いた。まっ白な車掌の背中が立ち尽くしている。
「どうした?」
 問いかけながら前を見ると線路に雪が!なんと列車の高さまで降り積もっていた。列車はその雪に衝突して止まったのだ。
「すごい雪だね、どうするのだ?」
 尋ねてはみたが車

もっとみる