ピロン

自分探しの旅の途中で書く作業をしてみたくなった。 すると 言葉を打つ右腕からゾワゾワ鳥…

ピロン

自分探しの旅の途中で書く作業をしてみたくなった。 すると 言葉を打つ右腕からゾワゾワ鳥肌が立ってきた 書いた言葉は私である。でも、読者に読んでもらえたらもうすでに私のものではなくなる フィクションのようなノンフィクション、ノンフィクションかと思うとフィクション一体これは何だ⁉️

最近の記事

小説「灰色ポイズン」その8-美菜子先生と昼食

「うちの病院の食事って案外いけるのよ。事務長がホテルのシェフだった人を根気強く口説いてここにきてもらったの。さあ、冷めないうちにどうぞ」 そう言うと、いつの間にかシチューとクロワッサンを交互に食べ始めていた。美菜子先生は、本当にお腹が空いていたようだ。 『おいし過ぎず、まず過ぎず。町にある大衆食堂のような程よいうまさで飽きがこない食事。そして懐かしいヘルシーなメニューを心がけている』 と待合室で読んだ病院のパンフレットに書いてあった。その後の文章は読んでない。今更だが気にな

    • 小説「灰色ポイズン」その7-由流里病院

      「11番の番号をお持ちの方2番の診察へお入りください」 待合室の椅子にボーっと座っていたのでアナウンスがかかってビクッとした。11番。私は何番だっけ?上着のポケットに突っ込んだ紙を取り出す。ああまだだ。私は12番、あと1人で順番が来る。何だか緊張してきた。私は夕べのことを成田さんに上手く伝えられるのだろうか? 明け方に高校の同級生で精神科医になった成田美菜子の名刺を見つけた。そして、この由流里病院の受付時間が始まる8:30amに予約の電話を入れた。 今日は、成田美菜子は、あ

      • 小説「灰色ポイズン」その6-同級生の名刺

        一睡もできなかった。頭が冴えているのか、それとも鈍っているのかわからない。わかっているのはただ一つ、私は「おかしい」らしいということ。夕べ母さんに殺意を抱いて、自分のことが恐ろしくなって、なんとか仕事を終えて治療室の床に座り込んだままだった。 自分が正気を保っていられる保証ができない気がする。 えっと、こういう時はどうするんだっけ?病院に行く?交番に行く?兄さんに電話する?....。 時計を見た。午前4:44。まもなく夜明けだ。 救急病院に行っても仕方ない。行って何と言えば

        • 小説「灰色ポイズン」その5ー限界⁉︎

          頭の中で「ぷつん」と音がした。まるで漫画のようにそんな音がするとは思っていなかった。 母さんを「殺そう!」一瞬そう頭によぎった。母さんを殺して自分も死んでしまおう。あの20年前のあの日に母さんが私を道連れに逝こうとしたようにー ことが起きたのはほんの些細なことからだった。 治療の合間にご飯を煮て作ったお粥を母さんが食べて言った、ちょっとした感想だった。 風邪を引いて寝込んでいる母さんにお粥と梅干しと卵焼きの昼食を作った。 精一杯だった。ゆうべも軌道に乗ってきた治療院の仕事で

        小説「灰色ポイズン」その8-美菜子先生と昼食

          小説「灰色ポイズン」その4

          「うーん!」 わたしがお菓子の匂いに負けてガレットをひと口かじろうとしたまさにその瞬間、母さんの声がした。 母さんの目が覚めた! 母さんは寝返りを打ってダイニングにいる私の方を向いた。 「お おはよう母さん」 夕方なのにわたしは朝のような挨拶をした。母さんはキョトンとした顔でわたしを見た。 「あら おはようカナタ」 母さんは、まだ眠そうでだるそうな身体を起こしてそう言った。 そして、それからゆっくりわたしのいる方にふらふらとゾンビさながらの動きでやってきて椅子に座った。

          小説「灰色ポイズン」その4

          小説「灰色ポイズン」その3

          結局、教会に行くには行ったけどいつもより早めに帰ってきた。 そこら辺の洋菓子店のクッキーに負けないくらいにおいしいガレットをお土産に2枚もらったけどイエスさまのお話の紙芝居を観る間は他の子ども達と一緒にクッキー入れの缶から一枚もらって食べた。 それで少し早めに帰ってきたけど母さんは、眠り続けていた。兄さんのメモには母さんは夕方迄起きないと書いてあった。 時計に目をやると4時をまわっていた。午後4時って夕方なのだろうか?子どもの国語辞典で調べた。 夕方とは15時から18時を指す

          小説「灰色ポイズン」その3

          小説「灰色ポイズン」その2

          ん?なんでここにいるんだろう...ここはいわゆる巷でいうところの天国ってところのはずなんだけど。あまり生きてた世界と変わらないようだ。 目の周りが乾いた涙の跡でカペカペしてる。天国にいてもこんなにリアルを感じるものなのか。目を開けてみて横を向いたら母さんの横顔が見えた。 どうやらわたしは息をしてる。ここは天国とやらではなくて家の中。 布団の中から辺りを見渡すとそこには、いつも通りの風景があった。そして横には母がいびきをかいて眠っている。わたしはゆっくりと伸びをしてみた。大丈

          小説「灰色ポイズン」その2

          小説「灰色ポイズン」その1

          「ねえ、わかってんの?あんたの母親はね、妻のある男に色目使って言い寄ってんのよ」受話器の向こうから、しゃがれた声が聞こえた。 いつも思う。おばちゃん、なぜこんなにも攻撃的なのか。きっと、彼女も何かに傷つけられているのだろう。色目?色目って何?ブルーとか、そんな風に色がついた目のことか、それとも外国人? 「わたし、何もわかりません」ガチャッ…。 時々、世界がまるでぼやけて見えるように、言葉が霧の中に消えていく。私は自分ではそんなにはおバカじゃないと思うけど、わからない言葉

          小説「灰色ポイズン」その1