ペダルの重さを勇気に変えて。
ここ数日猛烈な暑さが続いている。
週末に体調を崩したし、確実に気候は夏である。
早朝からアブラゼミがジリジリとけたたましく鳴いているし、入道雲はもくもくと湧いている。
これで山口県を含む九州北部は梅雨明けをしていないと言うのはいささか無理があると思う。
全国的にも東北の梅雨が明けたし関東も同様である。
ははぁ、これはタイミングを逸したに違いないと思う。
明日にかけてにわか雨の可能性があると言うのが頑固に梅雨明けを宣言しない理由なのだそうだが、知り合いとはぁ梅雨明けしたじゃろと言うのがここ最近の挨拶である。
街に出ると子どもたちが自転車で集団で移動しているのでああ、夏休みなんだなと思う。
私が子どもの頃だったら行先は公園やプールだったりしたのだが、その集団のいきつく先が予備校だったりするのが少しだけ切ない。
中学生にしてみればそろそろ部活を引退して受験勉強に本腰を入れる頃である。
そんな時期に私は遊ぶことしか頭になく、またそれに付き合う友達も私と同類だった。
あの頃は自転車一台でどこまでも行けたものである。
ある日暇を持て余した私はそうだ祖母の家に遊びに行こうと思い立った。
自宅から祖母の家まで距離にして約四十キロ。
これまでそれだけの長距離を自転車で漕いだことはなかったが体力には自信があったので決行した。
その日は朝からカッと太陽が照り付けるとても暑い日だった。
自宅から市道に出て国道に乗り換えてからは大型トラックに煽られながらおっかなびっくり進んだ。
道中にコンビニもない時代だったので途中で見かけた自動販売機でポカリスエットを買ってゴブゴブ飲んだ。
前半はわりと順調に進んだが、途中から汗だくになって着ていたTシャツの汗が絞れるくらいになった。
残り五キロくらいの所で恐怖のトンネルゾーンに差し掛かった。
その時初めて自転車で交通量の多い国道のトンネルを走ったがトラックの風圧でバランスを崩すし、邪魔だとばかりにクラクションをバンバカ鳴らされるしでとてつもない緊張感を味わった。
トンネルを二つ越えて残りはのどかな農道を走るだけになった時は生きていて良かったと本当に思ったものである。
何だかんだで半日以上かけて祖母の家に辿り着いて玄関のチャイムを鳴らすと祖母が私を見て目を丸くしていた。
まぁ、あんたどうしたん?と尋ねられたので自転車で来たと言うとはぁ…と呆れられた。
それから汗だくだったのですぐにお風呂に入れてもらって昔、祖父が着ていた菜っ葉服を借りて人心地着いた。
これでも食べんさいと言ってスイカを出してくれたのですぐに齧り付いた。
喉がカラカラだったのでその時のスイカの美味かったこと。
家族の誰にも言わずに出かけてきたので実家に電話をすると、危ない事をしちゃいけんと結構怒られた。
その日はもう遅かったので祖母の家に泊まることになった。
久しぶりに食べた祖母の手料理は疲れた体にしみじみと染みた。
九時過ぎにはウトウトしてきたのでそのまま就寝。
翌日に帰ろうとしたら祖母がおにぎりとお茶を持たせてくれた。
ええかね、時間がかかってもええから車の少ない道を帰るんよと何度も言われた。
その教えを守って帰り道は県道をメインにゆっくり帰宅した。
あれは中学生の私にしてみれば一泊二日の大冒険だった。
今でも祖母と昔話になるとこの話はよく出てくる。
あの時は嬉しかったんよという祖母の言葉にやってよかったなと思う。
そんな昔話を思い出しながら昨日の晩御飯の話を少し。
昨日は病み上がりだったのであまり作る気力が無かった。
買い物は数日前にしていたのである程度の食材はあった。
まずはゴーヤを半分に切ってワタと種を出して薄く切る。
塩を振って置いておく。
トマトを四分の一に切る。
ゴーヤに塩が馴染んで苦みが抜けたら水で洗う。
それをキュウッと絞っておく。
フライパンに油を敷いてニンニクを入れる。
ニンニクの香りが立ってきたらゴーヤを投入。
軽く炒めて透き通ってきたらそこにトマトを。
トマトを崩しながら炒める。
味付けは鶏がらスープの素とポン酢。
全体がしっとりしたらゴーヤとトマトのポン酢炒めの出来上がり。
次はメインをサクッと作る。
豚肉を炒めてそこに玉ねぎを加える。
しっかり炒めたら味付けは砂糖、塩、酢、みりん、醤油。
仕上げに水溶き片栗粉でとろみをつけたら豚肉の甘酢炒めの完成。
後は中華麺を茹でる。
固めに茹で上げて水で締める。
ゴマダレがついていたのでこれも使う。
これで三品で来たので晩御飯完成。
妻に今日は質素でごめんねと言うと、十分よと言ってくれたのでありがたかった。
お酒はもちろん休肝日。
いただきますをしてゴーヤから食べる。
薄切りと塩で揉んだので苦みはかなり軽減されている。
トマトの旨味と鶏がらの塩気が良いコンビネーションである。
何より元気になりそうな味だったのでパクパク食べた。
次は豚肉の甘酢炒め。
酢を強めに効かせたのでちょっと酸っぱいがそれがいい。
これを茹で麺に絡めて食べると中華風で結構イケてる味になった。
ゴマダレと一緒に食べてもコクが出てニコニコである。
妻は甘酢炒めが気に入ったみたいでモリモリと食べていた。
残ったら明日の料理にリメイクしようと思っていたが気がついたら完食されていた。
うんうん、いっぱい食べてくれる人がいるのはシアワセだなぁと思いつつ、私は八分目でご馳走様。
ここ数日あまり料理が出来なかったので今日は夏っぽいご飯を作りたいなと思っている。
だとしたらお祭り的な、そうなるとあれかしらこれかしら。
こうやって考えている間が一番楽しいんですよねぇ。
うふふ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?