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お冷のぬるい料理店

飲食店に行った時、その店の最終的な評価を下すにあたってかなり重要な要素になりえるのがこれ、「お冷(ひや)」である。

飲食店で出てくるお冷って、めちゃめちゃ大事。宮迫博之もがん保険の次に大事に思ってるらしい。負けないこと、投げ出さないことに次いで6番目くらいに大事なのもこれ、ここだけの話ですよ。

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言ってしまえば、お冷がどのような提供スタイルなのか、これかなり大事。最初に店員さんがコップと水を持ってきてくれるか否か、ピッチャーが机に置いてあるか、完全セルフスタイルなのか。ちなみに私がよく通っていたインド料理屋の店員は、1分に1回くらい水を注ぎに来る。大袈裟ではない、マジだ。私は砂漠を彷徨う旅人ではないぞ。
インド人は度が過ぎているとして、普通の店でももちろん、客人に手間取らせない心遣いが垣間見えれば高評価なのだが、一概にそうともいえない。

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たとえば、熱々でアブラこってりのとんこつラーメン屋に行ったとする。
開幕早々、店員から異常にちっさいグラスが手渡されたら、どうする?ラーメンが催すであろう喉の乾きに対してあまりにも無力な量の水しか注げない、それはそれはちっさな一寸法師サイズのグラスが出てきたら、どうする?

加えて、水のお代わりが店員に対してその都度オーダーしないと頂けないお店だったら?テーブルにピッチャーが常備されていないタイプの店だったら?ラーメンにつきものである水を効率的に摂取できない時点で私は容易に死ぬ。味の濃いものを提供する店ほど、飲料水へのアプローチも容易であってほしいのだ、わかるか?

家系ラーメン屋でよく見る水の提供スタイル、ウォーターサーバー。人力で水を注ぐスタイルよりも便利で素早いものと思われがちだが、意外とクセモノだったりもする。

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ここは森の奥の湧き水が湧く泉か?なんだこの水量は?と思わずにはいられないほどパワーの感じられないウォーターサーバーがたまにある。一刻も早く喉の乾きを潤したいのに、こんなにチョロチョロと冗長に注がれても困る。

最近のウォーターサーバーは高機能なのか知らないが、3つの選択肢があったりする。水のみ or 水と氷 or 氷のみ。用途によって使い分けることができるのは強みと捉えて間違いないが、必ずしもそれらの性能がいいとは言えないことが多い。

たとえば、水と氷パターン。明らかに氷の比率が多い。AAAの男女比くらい偏っている。EXLIEのボーカルとダンサーの比率くらい偏っている。注ぎ終わったコップを見ると、在りし日の南極を思わせるように氷がその大部分を占めている。水を飲むというより、氷をガリガリ噛み砕くことになる。私はしらせか!砕氷船か!しかもちっさい氷ってなかなか溶けないんだよね。

次いで、氷のみパターン。その勢いがおかしい。氷が降り注ぐ勢いがおかしい。氷の粒を無数に射出するよりも、デカい氷をひとつふたつ落とせばいいんじゃないのか。金平糖みたいな氷がコップに残った僅かな水に、まるで集団入水自殺するレミングのように。その飛沫がかかるかかる。あたりどころが悪いと小さな氷が床に飛散したりと散々だ。小さな氷が業務用という面で優れているのはなんとなくわかるが、この副作用については議会で取り上げるべき喫緊の問題である。

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氷が多いとか、水を汲むのが手間だとか、インド人が早すぎるとか、そんなことはどうでもいい。それより遥かに許されざる事象がある。

「水がぬるい」ということ。

店員がテーブルにそっと置いたグラス。氷は見当たらない。嫌な予感が胸を過ぎる。冷静になれよ、いや、冷製であってくれ。ミ・アミーゴ...。

ああっ!やっぱりぬるい!口当たりが悪い!イワンコッチャナイ。氷入れとけよな〜!
お冷がぬるいお店に限って、ピッチャーも準備されていないしウォーターサーバーも置いていないことが多い。仮にウォーターサーバーがあったとしても、出てくる水はやっぱりぬるい。類は友を呼んでしまうのだ。万が一、万が一だが、氷の射出ボタンがあったとしても、これまた小さい砕氷が集団入水自殺するレミングのごとく手狭なコップに飛び込んで水しぶきを散らして終わりだ。

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飯が美味かったとか店主が愛想良かったとか、そんな感想を押しのけて前に来るのが、「お冷がぬるかった」である。これ以降、その店の名前を見る度、あっお冷がぬるい店だ、あっ氷だけは1人前の店だ、となってしまう。
いや待て、水をタダで飲めるという事実を当然のように受け入れている私たちは、少し常識を疑わないといけないのではないか?いや、だからといって飲み水に800円払うというのも私からしたら非常識なんだけども。

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