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神崎川にて

 下水処理場の横を通ると、なめらかで不快なにおいが鼻をついた。最近、鼻の調子が悪いと思っていたのだが…。無機質な機械がフェンスの向こうで静かに騒ぎ立てている。後ろから不規則に差す光を警戒しつつ、川へと歩いた。涼しい風がなめらかに吹いている。

 友人と2軒ほど、天満で飲んできたが、どうも少しエンジンがかかりきらなかった。空ぶかしした夜の行く末は、半額のお惣菜と安いチューハイ2本に託された。空が灰色に染まって、ぶっきらぼうな風がにわかに強くなった。私は堤防に腰掛けて、新御堂の喧騒に左耳を傾ける。

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 安易なエモには染まりたくない。あくまでダサい酔い方をしていたい。ただし、自分の許せる範囲で。
 ザラザラしたコンクリの堤防にこすりつけた背中が少し痛くて、星さえ見えない仰ぎ見たこの空を、私は哀れに思った。大阪の夜はパチ屋の看板の方が一等星よりも明るい。それは例え晴れた日の夜でも同じ。
 私の声よりも、街の雑踏の方が大きくて、薄い透明な板一枚を隔てた貴方にさえ、この声は届かない。こんなにも近いのに、対岸のあの光はあまりにも遠くて。

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