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Rule of 72

「a law of gravity(引力の法則)」のように(科学上の)法則は、法律を意味する単語と同じで「law」ですが、「a rule for success(成功の法則)」のように、「rule」にも 法則という意味があります。

今回のタイトルは「72の法則」です。

本稿は「マインドセット」をテーマにしているので、この法則の解説もしますが、それが主体ではなく、考え方プロセスが重要です。

前半は「72の法則」につなげるための助走なので、まどろっこしいときは、読み飛ばして下さい。

ステップ1
既に「九九」を習った小学生なら即答するのが次の問題です。
8×9=〇〇 あるいは 9×8=〇〇

九九を暗記していれば、考えることなく正解を出せます。

ステップ2
今度は、次のような1桁×2桁の掛け算の場合はどうでしょうか?
4×18=〇〇   あるいは 18×4=〇〇
6×12=〇〇 あるいは 12×6=〇〇

九九の暗記だけでは、計算はちょっとむずかしいですが、足し算も出来れば
計算ができます。

4×(10+8)=(4×10)+(4×8)=40+32=72
6×(10+2)=(6×10)+(6×2)=60+12=72

算数では、計算のトレーニングをして、正確さとスピードを上げて正解を出します。

ステップ3)
The Area of a Rectangle(長方形の面積)=Length(タテ)×Width(ヨコ)

いう公式では「1×1の正方形」が(上記の場合だと)72個分だと習ったのではないでしょうか?

このような2つの数字の掛け算は長方形の面積のイメージと連動させると数字とにらめっこしているだけよりも頭に入ってきます。

面積が一定だとすると、タテが長くなるとヨコが短くなり、逆にタテが短くなるとヨコが長くなる関係なので、いろいろな長方形をイメージできます。

ステップ4
72という数字を分解してみると、72=2×2×2×3×3

*2、3、5、7、11、13のように、1とその数自身しか約数を持たない2以上のnatural number(自然数)prime(素数)といいます。素数以外の整数は素数の積に分解することができます。
(これをfactorization in prime numbers(素因数分解)といいます)

仕事でもプラベートでも難問にぶち当たることがありますが、シンプルな問題に落とし込む発想を素因数分解から学ぶことができます。

算数と違って、数学では創造性論理性が大切です。

ステップ5
大学生がアルバイトで1年間に72万円を稼ごうとする場合を考えます。
現在の最低賃金は東京が1,013円、神奈川が1,011円、埼玉が926円、
千葉が923円ですが、計算しやすいように時給1,000円とします。

①72万円が1年後の目標金額ですが、すべての月(12ケ月間)でアルバイトできる場合   72万円=60,000円×12ケ月間
           =1,000円×60時間×12ケ月間
1ケ月の内、平日20日間働けるとすると、1日の労働時間は3時間を確保する必要があります。

②試験や旅行などの為に3ケ月はバイトをせず、働けるのは9ケ月間のみの場合
        72万円=80,000円×9ケ月間
           =1,000円×80時間×9ケ月間
1ケ月の内、平日20日間働けるとすると、1日の労働時間は4時間を確保する必要があります。

もし、200円時間給の高いバイトを見つけることができれば、当然ながら労働時間を短縮することができます。
        72万円=90,000円×8ケ月間
           =1,200円×75時間×8ケ月間

これはあくまで簡単な事例ですが、仕事になると、目標金額(=答え)が先にあって、それを達成するための方策(=計算式)をブレイクダウンしてプロセス考えることが重要です。

ステップ6
日本と違って、アメリカでは学生に貯蓄がいかに大事かということを実践的に教えています。
例えば、銀行に預けた元金(元本)に利息がついて2倍になるには、どれだけの年数がかかるのかを簡単に計算する時に「72の法則」が登場します。

15世紀のイタリアの数学者で「会計の父」と呼ばれたルカ・パチョーリが最初に唱えたとされています。

日本でも数学、経済学、ファイナンスなどの分野ではよく知られていますが、特に専門家でなくても生活者が知っておいて損のない法則です。

複利金利(年利)X%のとき、元金と利息の合計が元金の2倍になるまでの年数Y年とすると次の近似式が成立します。
X × Y ≒ 72   ⇔   Y ≒ 72 ÷  X

*この計算式の証明は、対数テイラー展開などの数学の知識が必要なので、数学が得意な人にお任せします。

(ステップ5)までの流れから理解が早いと思いますが、例えば、
(金利を与件とする場合)
⓵金利が6%なら元利合計が2倍になるまで12年かかる
②金利が8%なら元利合計が2倍になるまで9年かかる

(年数を与件とする場合)
③10年計画で元利合計を2倍にするには7.2%の金利が必要
④18年計画で元利合計を2倍にするには4%の金利が必要

③のように、国の高い経済成長率に当てはめた場合、10年で国の経済規模が2倍になることがわかります。

かつて悪名高い消費者金融のグレーゾーン金利があった時代の利率は29.2%
だったので、72÷29.2≒2.465で3年目には返済額が元金の2倍になる計算です。高金利の借金は恐ろしい限りです。

証明にはなりませんが、少し数学っぽく「72の法則」が成り立つのか複利の計算式で2倍になるかチェックしてみます。
(1+X)^Y ≒ 2   *累乗の記号「^」は「ハット」と読みます。

今回は計算アプリを使って答えを出してみます。
①金利1%の場合⇒(1+0.01)^72 ≒ 2.04710
②金利2%の場合⇒(1+0.02)^36 ≒ 2.03989
③金利3%の場合⇒(1+0.03)^24 ≒ 2.03279
④金利4%の場合⇒(1+0.04)^18   ≒ 2.02582
⑤金利6%の場合⇒(1+0.06)^12  ≒ 2.01220
⑥金利7.2%の場合⇒(1+0.072)^10   ≒ 2.00423
⑦金利8%の場合⇒(1+0.08)^9    ≒ 1.99901
⑧金利9%の場合⇒(1+0.09)^8    ≒ 1.99256
⑨金利12%の場合⇒(1+0.12)^6   ≒ 1.97382
⑩金利18%の場合⇒(1+0.18)^4   ≒ 1.93878

divisor(約数)が多いことが「72の法則」を使う場合に便利です。

このように、ほぼ2倍になっていることがわかりますが、8%付近が誤差が一番小さく適用できます。
6%から10%くらいまでの複利計算ならこの法則が概算として使えますが、これを外れると誤差が大きくなります。

法則とは、一定の条件のもとで成立する事物相互の関係です。

「72の法則」は元本が2倍になる年数が簡単に計算できて便利ですが、
There is no rule without exceptions.(例外のない法則はない)といわれるように、法則には妥当性に欠けるような例外や制限が多くあることには注意が必要です。















 

 





            


  

  
 










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