【読書記録】2021年12月

ごきげんよう。ゆきです。

出産のため里帰りをしています。毎日ゆっくりさせてもらっているので、読書が捗ること捗ること。きっと子どもが産まれたらのんびり読書なんてしばらく出来ないでしょうし、今のうちに満喫しようと思っています。先日Amazonのセールがあり、気になっていた書籍たちが96円になっていたので(安すぎる)まとめ買いしちゃいました。特に縛りもなく、気の向くままの選書になっております。

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俺を殺した犯人は誰だ?現世に未練を残した人間の前に現われる閻魔大王の娘―沙羅。赤いマントをまとった美少女は、生き返りたいという人間の願いに応じて、あるゲームを持ちかける。自分の命を奪った殺人犯を推理することができれば蘇り、わからなければ地獄行き。犯人特定の鍵は、死ぬ寸前の僅かな記憶と己の頭脳のみ。生と死を賭けた霊界の推理ゲームが幕を開ける―。

メフィスト賞受賞作という看板がついていたら買ってしまう私。西尾維新著『クビキリサイクル』を彷彿とさせるラノベっぽい表紙が印象的。あらすじを読む限りなかなかファンタジーな設定だったので迷ったものの、メフィスト賞なら間違いないという信頼のもと選書。

読了後の感想を正直に言えば、メフィスト賞にしては捻りがないな、という感。4つの短編からなる1冊だが4つとも展開は同じだし、死者を現世に戻すための呪文(?)もチープでちょっと赤面。沙羅のファッションやキャラも、キャラ立ちを目論んだ結果ちょっとから回っている印象。この個性が逆に受賞に繋がったのかしら。

「与えられている条件を全て整理したら事件が解ける」というコンセプトなので、登場人物と一緒に推理を楽しみたいタイプの読者はそこそこ楽しめると思う。が、そこまでレベルの高い話ではないので物足りないかも(そんなに推理力のない私でも全話真相が予想できたので)。空き時間にサクッと読むのには丁度いい1冊だった。続編は長編らしいので期待。

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山中に隠棲した文豪に会うため、高松の合宿をぬけ出した僕と友人の葛城は、落雷による山火事に遭遇。救助を待つうち、館に住むつばさと仲良くなる。だが翌朝、吊り天井で圧死した彼女が発見された。これは事故か、殺人か。葛城は真相を推理しようとするが、住人と他の避難者は脱出を優先するべきだと語り―。タイムリミットは35時間。生存と真実、選ぶべきはどっちだ。

『十角館の殺人』『屍人荘の殺人』『眼球堂の殺人』等々、建物名をタイトルに含んだミステリーって最近多い気がする。全て著者は違うのに。いずれも名作な感があるので、今回は『紅蓮館』をチョイス。

山火事から逃げてきた人々が山頂付近の1つの館に集まりそこで殺人事件が起こるという、タイムリミット有りのクローズドサークルもの。設定としては面白い。が、なんだろう、個人的にはあまりヒットするポイントが無くて少々残念。続きが気になって手が止まらない、というよりは、とりあえず読み終えておこう、というくらいの気持ちで早々に読了してしまった。

この著者は「ミステリー」を書きたかったのか、「名探偵」という役割に葛藤するやたらと面倒な少年の心を書きたかっただけなのかがよく分からない。台詞の言い回しもどこか鼻につく。怪しい奴は引っ掛けでもなんでもなくもれなく怪しい。この結末を書くためだけに無理矢理登場人物を設定しました、と言われても違和感がないくらいご都合主義の仕上がり。

と、正直な印象をつらつらと述べたが、事件の謎解きパートは重厚で話題作になるのも納得。一筋縄ではいかないので、サラッと読んでいるだけの読者は真実にたどり着けないと思う(私です)。

ミステリーとしては面白かったので、余計な探偵論やら強引な登場人物設定をクリアにしてくれたらもっと満足度が高かったのにな、と偉そうに締めてみる。こちらの続編、どんな感じだろう。

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百人一首カルタのコレクターとして有名な、会社社長・真榊大陸が自宅で惨殺された。一枚の札を握りしめて…。関係者は皆アリバイがあり、事件は一見、不可能犯罪かと思われた。だが、博覧強記の薬剤師・桑原崇が百人一首に仕掛けられた謎を解いたとき、戦慄の真相が明らかに!?第9回メフィスト賞受賞作。


私が通っていた中学校では、1年次に百人一首を全暗記、3年次に百人一首の文法を総ざらいというカリキュラムが組まれていたので、百人一首に対して少し親近感を持っている。当時読もうか悩んだけれど、西尾維新と森博嗣を追うのに忙しくて手に取れていなかった本書を15年越しに遂に選書。こちらもメフィスト賞受賞作ということで期待大。

まず、この筆者の百人一首への執念が凄い。多分中学で百人一首に触れていなかったら、噛み砕くまでにものすごく時間がかかったと思う。生半可な知識だけでは、本書に綴られている歌の魅力や定家の執念がよく分からないまま読了してしまうだろう。専門書を1冊読んだくらいの密度が本書にはある。

もちろんちゃんとミステリー要素もある。1つの殺人事件を解くために百人一首を紐解くのだ。途中、事件のことを忘れるくらいには百人一首がメインとなっているが、謎解きパートで「あれは必要なくだりだったのか」と腑に落ちたので不満はない。

登場人物が変人ばかりで、メフィスト賞らしいなと笑ってしまった。被害者も加害者も関係者も探偵役も、とにかくクセがすごい。この設定を楽しめないと本書は厳しいかもしれない。続編を楽しむのは、もう少し自分の教養を深めてからにしよう。

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中堅調査会社が併設する探偵養成所に、決して笑わぬ美少女・紗崎玲奈が入校する。探偵のすべてを知りたい、しかし探偵にはなりたくない、という彼女には、自分から言えぬ過酷な過去があった。調査会社社長・須磨は玲奈の希望を汲み、探偵を追う“対探偵課”の探偵として彼女を抜擢した。怒涛の書下ろしシリーズ開幕。

一瞬で読了してしまった。無駄のない設定とスピード感、アクション要素も備わり、映画1本観終えた時のような充足感。全4巻がひと続きとは知らず、1巻だけ購入してしまった事が悔やまれる。Kindleによくある合本版にすればよかった……というか初めから1冊、または上下巻にして欲しい。続きが気になって仕方ない。

あらすじは上記の通り。文章もクセがなく読みやすい。エンタメに振り切った内容かと思いきや、シリアスな場面あり、化学的要素ありな本格推理小説に近い。冷酷なようで随所に人間味溢れる主人公も愛せる。初めて手に取った作家だったがすっかり虜である。

既にドラマ化、漫画化もされている。ドラマに関しては、読みながらイメージしたキャストそのままの配役だった(だからと言って見るわけではないけれど)。結構えげつない描写があるので、その辺りをどのように実写化したのかは気になるところ。

セールで手当り次第買った積読本がまだあるので続編に手を出すのはそれらを消化してから……と思いつつ、欲しい本リストの先頭に2巻を置いてしまった。来月はこのシリーズ読破が目標。

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ウォーカロン。「単独歩行者」と呼ばれる人工細胞で作られた生命体。人間との差はほとんどなく、容易に違いは識別できない。研究者のハギリは、何者かに命を狙われた。心当たりはなかった。彼を保護しに来たウグイによると、ウォーカロンと人間を識別するためのハギリの研究成果が襲撃理由ではないかとのことだが。人間性とは命とは何か問いかける、知性が予見する未来の物語。

中学生の頃に出会って以来、貪るように読んできた森博嗣作品の中で珍しく未着手だったWシリーズに手をつけた。未着手にしていた理由は単純で、SFに僅かな苦手意識があったからだ。セールもあったし里帰りでゆっくりしているし、この機会を逃したらもう読まないかもしれない、と思い遂に選書した次第。

読み慣れている作家なのもあり、サクサクと読了。自分が思っていたよりもすんなり世界観に入り込む事ができ、実現可能性がゼロではない近未来の科学に思いを馳せる時間となった。

舞台は今よりも二世紀ほど未来。今の私たちを取り巻く環境が「そんな時代もあったな」と語られる場面があるが、本当に未来でそのように振り返られそうな気がする。SF=難しいという先入観があったけれど、面白いかも。このシリーズなら難なく読み進められそう。

新しいジャンルに挑戦するときは、既読の作家の著書から選ぶのが正解だと学習。とはいえ多様なジャンルを股にかけて活躍する作家って珍しいと思うので、森博嗣作品の沼にハマっていてよかったなと今更思うばかりである。

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久しぶりにゆっくり5冊読めて大満足な1ヶ月でした。セールを言い訳に気になった本を片っ端から買うというのは、新しいジャンルや作家に出会うきっかけになるので悪くないですね。安価で自分の世界を拡げられるし、素敵な作家を知ることが出来れば手に取る本も今後増えていくし。

改めてご報告しますが、12月の末に第一子となる男の子が無事に産まれてきてくれました。というわけで、またしばらくゆっくりと読書をする時間はおあずけになりそうです。しばらくは息子との今しかない時間を楽しみたいと思います。

本日もお付き合いいただきありがとうございました。

またいつか、読書記録でお会いしましょう。ゆきでした。

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