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「もうこれで終わってもいい」って終わりたい、のかなって話。

『HUNTER × HUNTER』という作品に、ゴンという主人公がいる。ツンツンヘアーで緑の服を着た、天真爛漫かつ仲間思いかつ自分の強い信念を持ち、確かに目の前にある壁に立ち向かっていく、そんな少年である。

「もうこれで終わってもいい」
これはゴンが敵を倒すために覚醒した際、長年を経て辿り着くはずの姿になり口にした言葉である。圧倒的な意志、決意、力、その強さや姿に敬称をつけ、読者からゴンさんと呼ばれるほどである。

現代において「もうこれで終わってもいい」をゴンさんと同じシーンで使うことは稀なことであるだろう。現実世界で言う火事場の馬鹿力、のような印象を受けるが、より私たちに身近なものは自棄になるような感覚では無いだろうか。もうこれで終わってもいい、もうどうにでもなれ、ヤケになったような心情である。こういった心情の際に用いる「もうこれで終わってもいい」は言い換えれば「もうこれで終わって欲しい」なのではないだろうか。自棄になるとき、自分なんてもうダメだと思いヤケになるとき、逃れることの出来ない事象に対峙し、自分を評価しながら生きるからこそ陥る感情だと考えられる。長く逃れることの出来ない状態が続くと早く終われ、と願うことは身近にあるだろう。例えばテストなどで全然問題が解けなかった時、「もうどうせ解けないんだから早く終われ」と思うことがあった。逃れられないもの、自分一人ではどうすることもできないもの、においてどうすることもできないにも関わらずこうしたい、という理想を考える。故にその理想とのギャップで逃れた先のシーンを思い浮かべるという人も一定数いるのでは無いだろうか。先のことを考えることが出来るからこそ行き着く地点でもある。
加えて終わってもいいとは終わることをゆるすこととも捉えられる。途中で終わることをあまり良いことと思えないような流れがある中で何か自分で打つ終点をゆるすことが自棄になることと近い位置にあるのも、今の在り方を象徴しているとも考えられるかもしれない。

「「もうこれで終わってもいい」って終わりたい、のかなって話。」

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