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鳥籠が鳥を探しに行く

 

鳥籠が鳥を探しに行く

 かの孤高の天才、カフカがノートに残したフレーズである。

 カフカは解釈すべきではない……という安部公房の教えのままに、つい目を閉じると、まさしく鳥籠が空を滑空して、自由に飛び回る可憐な小鳥を追いかけている姿が見えるようだ。

 いっそ、鳥籠を牢獄に置き換えてみたらどうだろうか?

 とたんに、僕は自ら描いたところの図に愕然となった。
案ずるに、鳥籠も牢獄も、自然物にあらず、人間が作り上げたものだろう。さあ、どういうことになるのか?
 そう、これを操るのは人間の力である。しかし、飛行機を操るのとは事情が違う。キーワードはまさしくカフカの短編そのままの「変身」ではないのか?

 組織の中で、自らを針金や鉄格子に変身させている人間。ちょっと見回せば、そんな人間はいたる所に存在する。古びた言い草ながら、所謂「組織人間」という奴らだ。針金や鉄格子よろしく、いかなる血の巡りも拒絶し、冷酷なまでに保守安寧を金科玉条とし、法規、信念、効率……ご都合主義の錦繍に彩られながらも、要は大過なく機械油ならぬ俸給が頂けるのが賢明だと信じている奴らだ!

 思えば、その代表こそ政治家という奴らだろう。立派な鳥籠や牢獄に自らを変身させるべく選挙カーは、自らのコードネームを連呼して今年も巷を走り抜けることだろう。

 今更いうまでもないが、政治家とは所詮官僚の操るお猿の電車の猿にすぎない。
いや、その官僚にして、アメリカの操る猿でもあり、そのアメリカにして、ユダヤロビーに操られた別口の猿だろう。そしてそのユダヤロビーというのも、やはり組織なのだ。
 
 ちょっと皮相的かも知れないが、僕はふと、鳥籠が鳥籠を探している図を想像してしまった。 

 思えば、いつぞやの選挙の折、パネルに貼られたポスターを仰ぎ見ながら、ふと、新作の「猿の惑星」のポスターではないかと錯覚してしまったことがあった。
 
 しかし、絶望する気にはなれない。組織の材料たる針金になることを断固拒絶し、血を流しながらも、あくまで個を主張し続けた人間こそ、まさしくユダヤ系のカフカなのだ。

  

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