銀騎士カート

左脳デジタルの時代ながら、基本、右脳アナログ人間です。 シンギュラリティーが目睫に迫っ…

銀騎士カート

左脳デジタルの時代ながら、基本、右脳アナログ人間です。 シンギュラリティーが目睫に迫ってるとはいえ、いっそ迫っているからこそ言葉に魂を込めて、文章を綴ってゆく所存です。 雑文、エッセーから小説まで……綴ることしか能のない身ですが……

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  • 小説 小説らしきもの

    基本 短いです。 長いのは一本だけ……

  • 連載した長めの小説です。お暇な時に、どーぞ(^o^)

    大人むきの純文学です……でもキャッチコピーは「面白系純文学」と言っておきます。

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星月夜の夢

                             経済学の祖アダム・スミスがこんなことを言ってる。 世界にどんな悲劇が勃発しようとも、人間というものは自らの爪先の痛みに関心を向けたがる…… 人間のエゴを……とりもなおさず、野放図の欲望を起爆剤とした資本主義のシクミを見事に言い当てている。 試みに、ついそこの新聞を斜めにでもいいから読んでみよう。 コロナは未だ終点が見えず、政局は猿芝居に終始し、海彼の紛争は後をたたず、地球はカタストロフィーに向け

    • 【SF連載小説】 GHOST DANCE 22章

              22 悪夢  答えろ。答えろ。答えろ!  野太い濁声が怒鳴り散らす。はて。ここは、学校の教室か。正面にぼんやりと黒板が見える。黒板にはところせく、ヌラヌラと光った色さまざまの物体がピンで留められてある。腑分けされた内蔵のようであった。  声の主は教壇にあって鞭を手に、青いサングラスをかけているが、どうも稲垣博士のようである。近くに薄い緑色の液体の入った巨大な壜が置かれ、博士はそこから這い出したものか、雫しとどに、皮膚は糜爛して半ば崩れ、死臭まき散らすのふぜ

      • 【SF連載小説】 GHOST DANCE 21章

                21 移植  手足をベルトで固定されたベッドの上で、冬吉は目が覚めた。甲高い金属音が響き、消毒臭が漂う。手術室か。術衣にゴム手袋のやつらが数人、準備に忙しい。  不意に、一人の男の面が真上から覗き込んだ。貴宏であった。 「なんの真似だ。美也子はどうした」  見下ろす貴宏の、のびた鼻毛がしきりになびく。何やら昂奮隠しきれず、目は釣り上がって冬吉の質問なぞ無視の構えで言うことに、 「君は、存在証明のないモルモットさ。例の臓器をいただくよ。どうせ蜥蜴の尻尾みた

        • 【SF連載小説】 GHOST DANCE 20章

                  20 希望  それから数日が過ぎた。その間、稲垣博士も涼一郎も顔を見せない。見知らぬ看護師が無愛想に餌を運ぶのみの、息詰まる家畜生活である。美也子のみならず、刑天のことが冬吉には気懸かりであった。判ったつもりの、何がチェリオだ。テロリストと自称するからには、いのちを賭した自爆に違いない。来世を夢と開き直っての無責任か。友よと信頼され、あたかもヒロイックのひとつまみを共有したごとく感じたはなんたる愚かさだろう。しかし、俺に何ができる。友よ。その響きが罪の烙印

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          13本
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          88本

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          【SF連載小説】 GHOST DANCE 19章

                   19 たましい  その日の深夜である。カードは再び取り上げられ、むしゃくしゃする冬吉のところに、自由を運ぶ一陣の風のようにささやきが現れて言うことに、 「刑天君が会いたいって……」  冬吉はさっそくささやきをともない、廃墟の地下室に赴いた。  刑天は、もはや生首なんぞいらぬお世話の、正常な姿でベッドに胡坐をかき、たくましい胸をはだけ、口と開いた臍にビールを流し込んでいた。冬吉を認めると、その目を輝かせ、 「よく来てくれた。まあ座って、ビールでもやってく

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 19章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 18章

                 18 先祖返り  さすが百年後の医療と褒めてやるべきか、それとも《愛の臓器》なぞ所詮盲腸の親戚とでもいうか、ブローカー一味に剔出を受けてから一週間ののちには抜糸もすみ、冬吉の体力はすでに平常に近ずいた。胸の傷も、肋骨を斜めに走る爪痕に似た。ただし、平常は肉体のみにしてカードの支給はなく、電話も切られて以前の囚人に逆戻りであった。  白衣を脱いだ涼一郎がひょっこり現れたのは、そんな日の昼下がりのことであった。 「どうかな。運動もかね、メシでも食いに出よう」

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 18章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 17章

                  17 復活  数日間、冬吉は昏睡状態にあったらしい。それを教えてくれたのは、目覚めた直後部屋に入ってきたささやきであった。何度か、無駄な見舞いをさせたらしい。からだは水を含んだ毛布のように重いながらも、とりたてて苦痛はない。時間は夜の八時。窓にはカーテンが引かれ、輸液のチューブ痛々しく、改めての病人であった。それでも、冬吉が思った以上に元気そうなのに安心したのか、ささやきもちゃっかり緊張を解き、何やら顛末を知った口ぶりに、 「たいへんな災難だったね。刑天君

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 17章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 16章

                  16 素性  仲秋の夜道を車は走る。おんぼろのくせに、エンジンは快調であった。  空いている車庫をしばらく貸してくれと、近所の高校生に頭を下げられたのは一ヵ月ほど前のこと。彼はカー・キチ。と言っても、マイカーを置かせてくれという不料簡ではない。ガラクタ同然の廃車を蘇らせたい。そのための工場代わりということであった。妻は反対したが、俺は高校生のひたむきさに折れた。さっそく、ひどく汚いやつが運び込まれた。高校生は毎日やってきては、真剣に修理に取り組む。廃車は日

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 16章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 15章

                 15 アダムとイヴ  革命という魔羅を振りたて、病院体制にいどむ刑天のいきごみとは裏腹に、目下の冬吉はプロジェクトの掌中なさけなく、やはり憂慮すべきは《愛の臓器》の件に他ならない。貴宏と臓器ブローカーとの密談の真相はいかに。究明しようにも、白衣の訪問はぱったり途絶え、ひたすら苛立ちの一週間が過ぎていた。  来ないとなるといっそ不安が募るは、やはり病のこころだろう。カードを手につい病院内をうろつけど、少しでも枢要においたつ地帯に踏み込めば、おい、どこへゆく。同

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 15章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 14章

                 14 刑天(けいてん)  少女と生首との整合性いまだつかぬうち、時計は九時を回ってノックとともに、 「螺旋サービスのものでーす。遅くなりました」  冬吉が扉を開くと、作業着姿の若いやつが立って一礼うやうやしく、訊けば、電話と錠前の取りつけに参じたとのこと。招き入れれば慣れた手つきテキパキと抱えた梱包を解けば、電話は昨今流行という黒いレトロなやつで、なんとコードの先のプラグを壁のコンセントに差し込んだ。訊けば、インターネットとをはじめとする通信網もコンセントに

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 14章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 13章

              1    3 禁じられた遊び  冬吉が部屋の前で美也子と別れると、一服する間もなく待ち構えていたように稲垣博士と涼一郎がやってきた。  まず、稲垣博士が開口一番、 「どうだったね、デートは」 「まあ、そこそこ」 「それはよかった。さっそく、質問に答えてもらいたい」  涼一郎は立ったままながら、稲垣博士は椅子にかけて冬吉に向かうとカルテとボールペンで身構え、ひどく真剣な表情でぶつけるには、 「どんな些細なことでも、すっかり話してもらいたい。まず、口説きの文句。キスの

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 13章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 12章

                 12 あかね  明くる日の昼すぎ、ノックとともに入ってきたのは貴宏であった。顔色は相変わらず冴えない。それでも、灰色のカードを冬吉に手渡すと、事務的な口調で言うことに、 「もうじき、美也子君が来ます。さっそくのデートの件、よろしくお願いします。外の案内は彼女に……」  冬吉は手で制して、 「その前に話がある。単刀直入に訊く。おぬしと美也子さん、恋人同士じゃなかったのか」  答えもせず顔をそむけたのに、 「もし、なんらかの圧力によって仲を裂かれ、言ってみれば研

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 12章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 10章、11章

                 10 PSD  その日の夜である。冬吉はデジタルピアノの前に座り、ヘッドホンを耳に鍵盤を叩いた。そう。涼一郎との『蟻の巣』見学を終え部屋に戻ったところで自由は打ち止め。カードは取り上げられ、再び幽閉の身に逆戻りであった。おまけに、先ほど食事を運んできたのが美也子とは別口の看護師で、美也子のことを訊いても何も答えず、明日検査があると事務的に告げただけ。  いくら作り物と理解はしてみても、血塗れの美也子の姿が眼間にちらついて容易に消えず、加えて当人が消息不明とあ

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 10章、11章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 9章

                 9 スナッフゲーム  気になるカップルを残し、冬吉は涼一郎とともにすぐにエレベーターに乗って一階に出た。  降りたフロアはやはり大病院の、白衣あわただしく舞い、外来らしい患者ひしめく不安ただよう待合室。ここを抜け、カートに乗って芝を渡る。所々にプールやファーストフードの店舗が並び、南国の植物も形よく、ちょいとしたレジャーランドのとば口のながめであった。  それでも、じきに目に迫るはかっての東西ベルリンを仕切った壁にも似て、構えいかめしく、こちらとあちらを厳然

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 9章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 8章

                 8 滅亡の遺伝子  翌日の朝、いつもより食事の時間が遅いと訝る冬吉のところに、美也子ならぬ貴宏がラフなジャケット姿で現れるなり、 「さあ、今日は外の見学です。食事も向こうでとりましょう」  そう言って渡されたのは、白よりは格の落ちるらしい灰色のカードながら、とりあえずのパスポートであった。冬吉は、さっそく貴宏に従って扉を抜けた。  すでにささやきとの見学で都市と融合したこの時代の病院の概要をおぼろに掴んでいたはずが、貴宏とのゆったりとした散策に於て冬吉は改

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 8章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 7章

                7 愛国少年の物語 遊園地と性教育ふたつながら半端になったせいか、プリプリと膨れるささやきを宥めすかし、冬吉がやっとの思いで1707号室に舞い戻ったのと、美也子が配膳車にて夕食を運んできたのはぎりぎりセーフの、時間差にして五分足らずのことであった。  美也子は態度そっけなく、顔つきも冷たい。やはり、当方の責任だろう。そう。最初に言葉を交わしたノリを件の肉体的条件故にひとまず引っ込めたに代わってヌッと顔を出したタチは、自分でも首をひねるほど陰気な、辞令すらままなら

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 7章