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レントゲンと健康問題

 

 理由は定かではないのだが、我が家ではレントゲンに対する恐怖症というのがあった。


いわゆるレントゲン被曝というのだろう。叔父2などは、かなりインテリだったにも関わらず、レントゲンで白血病になると、本気で信じてしたらしい。

 さすが学校で行う定期健診を辞めさせることは出来なかったが、確か中学の時だったろうか……歯の治療で、抜くか抜かないかをレントゲンで検査しましょうという時、僕は家族からこれを禁止され……歯科医もやむを得ず、ダメな歯と認定してこれを抜くことになったのだが……意に反して、根っこは健全であったらしく、ギシギシという不快な音と同時になかなか抜けず……ついてはかなりの出血であった。
 脱脂綿を噛まされたのだが、家に戻ってからも出血がなかなか止まらず、うんざりした覚えがある。

 もとより、レントゲンはいくらかの被曝も考えられるが、それほど神経質になるのもどうかと思うが、かかる環境にあって、僕自身もレントゲンは極力回避してきたようだ。

 高校を出てからは、今に至るまで……歯科のレントゲンを除けば、ほぼ数回ほどしか浴びていない。

 と同時に、健康診断の類いも殆ど受けた経験がない。
これは、叔父2とは別に、お袋が極度の健康診断嫌いで、なんでも……あちこち調べれば、人間どこか悪い所が見つかるもの……そんなコトを気にすれば、かえって身体に良くない、とのことであった。

 まあ、僕もその伝で、医学的数値よりは、自らの身体のポテンシャルを信じている。

 思えば祖母などは、塩分の取りすぎは身体に悪いと言い聞かせても、全く頓着しなかったものだ。
 例えば、塩鮭が好物だっのだが、甘口は好まず、辛口のしょっぱいやつが好きだったのだ。
 これを焼き上げた上に、昆布を乗せお湯を掛ける。結果、塩も多少抜ける。やはり、塩分を気にしているのかと思いきや……鮭を食べ終わった後、コブの風味の加わった残りのショッパイ汁をすっかり飲み干してしまうのだ。

 呆れたものであるが、当人に言わせると……ショッパイものを食べすぎたのなら、あとで甘いものでも食べれば、お腹の中で中和するとのこと。

 医学的にはハチャメチャではあるが、ついては九十を過ぎるまで、頭確かに恙なく過したのだから、何をか言わんやである。

 僕もそんな環境に育っているので、医学的数値よりは、自らの体調のサインを信じている。
 僕にとっては別世界の出来事ではあるが、世の中には定期健診での様々な数値を気にしている人も多いらしい。
 僕のように、酒、煙草、偏食、……不節制限りなき生活では、さぞやビックリの数値もはじき出されそうだが、そこはなに、身体自身がうまく調性してくれていると信じている。

 そう。普段、あまり食べていない食物が不意に食いたくなったり。大好物を、何故か敬遠したくなったり……こういった身体のサインだけは聞くようにしている。
 昨日も不意に蜜柑が食べたくなったし、出し抜けに豆類を欲する時もある。

 お陰様でというか、19歳を境に、歯科以外医者にかかったことはない。最近では風邪もひかない。
 インフルエンザに至っては、その症状さえ知らないのだ。

 たまに腹の調子が悪い時もあるが、正露丸を飲めばケロリと治ってしまう。

 なんのことはない。僕は科学以前に、動物でもある人間の「野性」を信じているのだ。
 あたかも、猫が誰にも教えられずとも、体調が悪い時に草を食むように……

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