自慢ではないが、女性からバレンタインデーのチョコを貰ったためしが殆どない。

まあ、バイト先で義理チョコみたいのは……なんとなく記憶はあるが、女子から貰ったと言えば、中学時代に遡る。

　当時、ちょっと卓球が流行っていて……とある卓球場で、時に顔を合わす一学年下の女子（結構可愛い子）から、無言のままにチョコレートを貰ったことがあった。
　当時は、バレンタインなど一般的ではなく、僕としては些か戸惑ってしまったものだ。
　なにせ、やたら初心な年頃とあって、女子から好意を寄せられるなどは……本当は嬉しいくせに……恥ずかしい、いっそ屈辱とまで思っていたのだ。
　ついては、貰ったチョコを友人に、「これT子さんが、君に渡してくれって……」と偽って、あっさり譲ってしまったのだ。今にして思えば、とんだ人でなし行為ではあるが……譲り受けた友人は、やたらモジモジ……顔を赤らめていたと思う。

　たぶん、かかる非道のバチが当たったのだろう。

　スーパーでは、例年どおりこの時期、チョコのコーナーが設けられている。チョコは好きなのだが、どうも意識過剰で、この期間、チョコを買い難い。
　まあ、近頃は「逆チョコ」というのもあるようだが……

　思えば、ガキの頃からチョコは大好きで、食べ過ぎて気分が悪くなることもしばしばであった。
　今に至るまで……チョコレートは身近にに置いていて、ついつい摘んでいる。
とは言え、好みはガキの頃と違って、甘いミルクチョコではなく、ちょっとビターの奴がいい。
　今気に入っているのが「カレ・ド・ショコラ88」である。

　別に、身体にいいから食べているわけではない。
　だいたい僕は、これを毎日食べれば云々的な意見は一切信用していない。
　何か効能があるからと言って、不味いものを食って、何か足しになるのか？　

　僕がチョコを食べるのも、身体が欲するからで、他に大意はない。煙草を吸ったり、コーヒーを飲んだり、ポテチを摘むとの同じである。

　時には甘いミルクチョコレートも食べるが……やはり基本はビターに限る。

　確かに、ビター系は、苦いが……中学の頃の罪を、今では、いっそほのかな甘さとして追憶しているのだろう。