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移住体験記①


去年の12月に単身、地方移住することを考え出して、
実際に今年の6月から某田舎で暮らしはじめた。
ほんとうは2月あたりから住みたいと考えていたのだが、いろいろな条件が整わず、現住所に落ち着くまでに数ヶ月かかった。

これまで生活してきた東京と、あまりに違う環境。
身体がそれに適応するのにはしばらくかかったし、現在だって、急激にやってきた暑さに絶賛ギアチェンジ中だ。数日前まで最高気温22°くらいだったのに……プラス10°という、
突然の猛暑。
移住したことで、身体は相当びっくりしたらしい。
ホルモンバランスが乱れて月経周期が大幅にずれたり、食生活の変化で体重が4〜5キロは落ちたり。
一日のなかでも寒暖差が大きいので、衣類による体温調節も、なかなかむずかしかった。

最初のひと月は、とにかく慣れることに精一杯だった。
もう31歳だけれど、はじめてのひとり暮らし。
家事は慣れていたけど、何もかも違う環境の中でこなすそれらは、また勝手がちがう。
毎日絶え間なく変動する体調にうまく合わせながら、必要最低限のこと、その日できることをコツコツ地道に取り組んでいる。
少しずつしかできないようでいて、ちょこちょこやっていれば成果はある。
私の中の完璧主義な面が、満足にこなせないことを責め立てる日もあるけれど、できても、できなくても。確実に、一日は過ぎていく。
時計のないこの家では、時がゆっくり流れるように感じる。
焦ってものんびりでも、ちゃんと明日は来る(byフックブックロー)。

初めてここに来たときに苦しめられていた睡眠障害は、ゆらぎを繰り返しながら、少しずつよくなってきている。
ほんの少しだけ、急によくなったりしやしないか、だなんて期待もあったけれど。
考えて見れば、月の満ち欠け、潮の満ち引き、ホルモンの波——ゆらぎを経て変化を辿るのが、自然というものなのだ。
つねに一定の自然などない。振り子のように、ゆるやかなペンデュレーションを描くのが、大地の流れだ。

森に囲まれたこの地では、夜、部屋の電気を消すと、本当のほんとうに! 真っ暗になる。
都内にいる頃はこうはいかなかった。隙間なく立ち並ぶマンションやアパートの数々の灯りが、夜中でも辺りを煌々と照らしていた。
家の隣には病院、また、近くに消防署や警察署があることで、救急車やパトカーの音がしょっちゅう鳴り響いていた。
クマやイノシシやサル等の動物や虫、ここにはたくさんの自然が息づいている。
「人間は、山を間借りしている存在」なのだ。

これが、本来の自然の姿かたちなんだよなぁ。目を閉じて、そんなことを思う。
梅雨のさなかは毎日曇り空だったけど、真夏日がつづくこれからは、きっと満点の星空が見られるはずだ。よく晴れた夏の日は天の川も見られるという。

ここにはWi-Fiがないし、携帯のアンテナは1本だし、TVもないわで、IT革命もなんのその。
利便性は削ぎ落としたような不便さも多々あるけれど、電磁波に囲まれた生活にはない豊かさがある。
べつに、どちらが優れている、劣っているとは思わない。
東京にいた頃にしか得られなかった資源はたくさんあるし、逆に、これからは地方でしか獲得できないなにかを積み重ねていくのだろう。

生活に伴う不安なことは多く、安心して自然に身を委ねる、なんて状態には遠く及ばないけれど、
変わっていくこと、変わらないこと、そんな折々をだいじにしていけたらいいなぁ。

あなた→わたし→誰か→ほかの誰か