100年遅れ

消閑に御一読を。

100年遅れ

消閑に御一読を。

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    • 妙薬

       消印の無いプレパラートを黒糖で焚き付けて、明朝、縊死した胡桃を乱 層雲へ野辺送りする  饒舌な遺跡の周辺を公転する地震計に投入された禁書には、健やかな妄言 が装着されていた  御息女の夢語りに、手探りで鏤める妙薬の木霊  辞世の砂絵で彩られた環礁から舞い上がった密輸業者へ、僅少な葉桜を委 託する  非売品の同一律と矛盾律は同床異夢に終わると知れ  下枝が欠航し、姦しい郭公の射影が消散する  謹告された自爆に媚びた金蛇の潜入による鏡像異性体の争奪  銀朱をちらつか

        • 夏?

           竜舌蘭の流謫  艶麗な代理人が過つ筋書  甚だしい虚言の粉塵  蘇りに倦んだ木苺の蔓  ゆくりなく、正午に瞑する青玉  櫻草の憂鬱  夜鶴が晦ます潤み  月白の朱夏

           天頂に伏流する弁明と戯れる鶇が、小暗い曲がり角で遺失された信憑と予 期せず際会し、いかがわしい密林に陥った  頑是無い星鴉は揮発した因果律を悼み、不揃いな回文を不朽の砕氷へ嘉納 する  萌葱色の偏差  アルゴルが放散する加護を育む蓮角は、にぎにぎしい黒曜石をまばゆい暗 渠で後見している  やましい入江からの送電が、切迫した浮氷をアムールトラに披露した  蒲葡の悔恨  掩蔽された理法を褐色の続け字で紡ぐ口さがない鸚哥  あられもない無限級数に満ち足りた濁世で、線形の

          (prendre une pause)

           末枯れた媚態の音感  累進する誤伝に平絹を積み上げる、あやふやな過客  逆光を浴びた倫理  沖積世からの控え目な神変  自転する衰運

          (prendre une pause)

          気疎い寝醒め

           懶惰な賓客がペリスコープ越しに眺める式年祭で、驕られた盟約を明らめ た檳榔樹  雪渓を統べる熊鷹は、不壊の便箋に書き表された禍事を、微かな夢合わせ で霧散させることに遑が無い  成層圏での銷夏に、鈍色の使わしめが白露を密売する  一枚の禁令、あるいは、不在の哲理  天恵の贋作を監禁した蔦紅葉は、時ならぬ佳人の化現によって討伐された  廃忘と優しい捏造  藪陰から滲み渡る月琴の音へ、憂き身の諡を託す  曖昧な寝覚めに観取された往事の自伝よ、冥福であれ  律動せる双曲

          気疎い寝醒め

          宵、黎明

           徒死した夏日に塞がれた草屋  しどけない鏡面で、未聞の夜歩きが臙脂の遠火を幾筋も差し付ける  不届きな卵塔を濫作しつつ身罷った鈴掛の波及により、憔悴した屏風は観 想を中絶した  入相の紫電に謫れた福音  もう一つの土星と、宵闇に立ち竦むオキシダントの電位差が、なおも蠢動 する火食鳥を手懐ける  醜行を演ずる符号付きくいなはチェロを嗜んだ  荊棘の半減期は、少なくとも取扱説明書には書かれていない  呪いと呪いの径庭を図式化せよ  常夜の国にて図らずも払暁を生起させたの

          宵、黎明

          定数

           ふくよかなヘリオトロープの中指が授けた梟とプランク定数の縁に、名に し負う風神は放心した  それから、健気なゼラニウムが月影へ、含羞を記した錆色の付文を白真弓 で捧げる  楕円を描く凶兆に対峙する浄火を遠回りに測量する叛徒は、不見識な蜥蜴 に躓く  愚直な端末上で、移植された氷柱が釈義への返礼を差し延べた  程経て、滞留していた供物は謙虚な愚問に感づく  鳶色の塔の屋上では、竜胆と彗星が懐旧を温めていた  覆滅した黙約  自壊する追想  緩慢な退隠の拠り所は何?  補

          晩冬

           中空にかかる撫子の太刀で、密雲を割いた公達  白綾を纏う雛鳥が僻遠の孤島から逃れ、濃紫の石室に棲みつく  端的な正午に帰路を沈思する猟師は、指数曲線を描く放線菌を木叢へ積 み上げた  おみなえしの私通  走禽が絶筆とした教理が、浮氷に塞がれた東屋に蘭麝を媒介する  風花が舞う電離層の湧泉で潤びる白金  木星蝕から日向の庭草への通路に満ちる金糸を散らし、メルトンを佩びた 魚影が晩冬の除名を進展させた  言い違えられた誓約が指す真理の対偶を示せ  相克する桧葉の連なりを

          如月

           鴇色をした遠近法  複眼を持つ山茶花に授けられた約束が立ち騒ぎ、忙しない異論の 反復は他郷までの道筋を問い質す  損なわれた歴史上の三角形と、街並に横溢する喝采の漏電  不揃いな野薊は無関心な投げ銭に食傷し、思いがけず引用符を撤去する  半焼した決意が大樹の陰で思いを致す、微熱を帯びた隠滅への甘え  夕暮れの国に逢着した基体は如何なる類縁性を通り抜けて来たのか  五夜に咲き乱れる立金花を指差す無制約な負数  秒針が照らし合わせる雨滴で作動する館長から、撚れた擬人法が成

          響き、文法

           短調の春風が迎える不埒な碧雲  静寂を濫造する白雪が偏執した石畳に、延焼を免れた月光がほろほろと降 り積む  川面で遭遇した燃え殻と弾頭は、緩やかに密約を飛散させた  破倫の鑑定家が開局した庁舎より発せられた空電に感応する梧桐  至上のシラブルを謹んで貢ぐ晦の月食へ、変転する空文は濃やかな靄を 纏わせる  ラグランジュポイントにおける永訣  主語を喪失した語族が土煙をあげて侵襲するため、文献学者は色消しレン ズと軽水を兌換する  代名詞の迷宮  重力の井戸で綴られた短

          響き、文法

          _

          安危を暗記したアンチモン 衣装の意匠の縊死 迂遠な有縁の薄焼き 塩基を延期する円錐 王冠が往還せる黄道 回春した改悛に開眼 机上で騎乗した菊花 九曜を供養しない海月 軽快な警戒に啓上 後悔を航海する攻殻 蹉跌する砂鉄が殺到 弛緩した死姦の四月 水葬を吹奏する酔態 凄惨な聖餐で制裁 僧衣を創意せぬ蒼穹 他生の他称の多情 痴漢を置換した知覚 痛切な通説を痛飲した 諦観した定款が低徊する 韜晦の倒壊が投下された 内縁にある内苑の内通 入唐の日当は肉桂 主の塗師は鵺 禰宜が葱を労う

          星辰、草木

           早暁に浮かぶ歳星の観測者として金木犀が警告する  「螢惑の接近を堰き止めよ」  遠浅の汀に猶予う不敬な機雷に授けられた薬石で、千尋の淵の雪解け水に 潜む黒瑪瑙を暴露し、呪言を消却する年古た桂花  涼しげな輝度で旋回する箒星が遠日点から伝える消息は、柊の先見に言祝ぎを齎した  麗らかなコバルト60の薫り  破格の奇岩に萌す定言命法の発芽  末筆に吉祥を飛白で綴った便りを、鵲が偶さかの凪へ届ける  干上がった貯水池にアメジストは咲かない  物堅い銀杏が、絶え間なくさんざめ

          星辰、草木

          夕景

           長月の槐が予感した、夕霧に染まる手紙の刻印  子午線上に立ちはだかる緑の板に印された異説の密計が響きだし、空と地 表が近づいた  開闢の反転に一閃する抛棄の想い  澄ました旋毛風が、夕景に満ちた河口で、時の止まった光をスペクトル解 析する  返り血を踏み躙る砂の諦めに、幼き頃の呪いの成就  しかし、呪いの主は馥郁たる嘲りすらも差し出せない  玉響の青い秋水  亜寒帯に降る星に芽吹く刺草は、針葉樹林の明るみに忘却を埋蔵する  雀色時の燐光で映された横顔に懇請は拒まれ  

          (無題) #07E606

          起源を失念した寒椿は朝焼に庭園を探偵する。 鳴神に猶予を峻拒された天敵と、奇知を飛散しつつ捻転する門衛に、明けの明星を登攀する間者が業火の律動を認める。 溺死を望んで線路の傍の春に溺れている令嬢が、鏡の奥で菫の雫を集めてい た。 吹雪で決壊した工房から合歓木の帳が靡き、晨星から渡来する木菟は落慶を批准する。 焦げた雪にしがみつくため、溶けた爪を研ぎ、開いた戸口で霧になる彼女(とは誰?)の白い影。 Union; 三角州を包囲する玫瑰の見神。 綿密な計算に基づく乱数表の交差

          (無題) #07E606