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(無題) #07E606

起源を失念した寒椿は朝焼に庭園を探偵する。
鳴神 なるかみに猶予を峻拒された天敵と、奇知を飛散しつつ捻転する門衛に、明けの明星を登攀する間者が業火の律動を したためる。
溺死を望んで線路の傍の春に溺れている令嬢が、鏡の奥で菫の雫を集めてい
た。

吹雪で決壊した工房から合歓木の とばりなび き、晨星しんせい から渡来する木菟 みみずくは落慶を批准する。
焦げた雪にしがみつくため、溶けた爪を研ぎ、開いた戸口で霧になる彼女(とは誰?)の白い影。

Union;

三角州を包囲する玫瑰 まいかいの見神。
綿密な計算に基づく乱数表の交差点での出逢いと、反り返った予測に連れられて蒸発した漣で、可憐な夏の農園が完了した。
黄昏に包囲される宗家は磁気嵐の凪を怨嗟するのか。
黎明に芽吹く紫陽花が祝う立太子の鎮護。
無情な翠の鱗粉。
蝦夷菊の訪いが帰着する追憶を、崩壊する愚者は損なわない。

贈り物は一刻いっとき の痙攣、或いは、眠るための吐息。

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眠れない夜に

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