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夕景

 長月の槐が予感した、夕霧に染まる手紙の刻印
 子午線上に立ちはだかる緑の板に印された異説の密計が響きだし、空と地
表が近づいた
 開闢の反転に一閃する抛棄の想い
 澄ました旋毛風が、夕景に満ちた河口で、時の止まった光をスペクトル解
析する

 返り血を踏み躙る砂の諦めに、幼き頃の呪いの成就
 しかし、呪いの主は馥郁たる嘲りすらも差し出せない

 玉響の青い秋水
 亜寒帯に降る星に芽吹く刺草いらくさは、針葉樹林の明るみに忘却を埋蔵する

 雀色時の燐光で映された横顔に懇請は拒まれ
 残香に魅かれて彷徨い込んだ叢で、鵞毛に緩めた表情のまま仄めかされた
告別
 鈴の羽音はもう聴こえない

 可能性の二乗は必然性という言伝は本当か
 うつつの平方根は誰の夢路?

 入電した凶報を極光の垂れ幕で覆いつくす仄暗い調べが鳴りやまぬうち、
彼我の堺に沈む残陽
 濫伐された整数の戸惑いから花開く先験的な葵
 浅葱色の風に伴われた嫋やかな石英が、幾久しく天文台へと進んで行く

 無名の夜からの囁きは、妻訪いする白鷺を儚み、乾いた星空に死灰しかいを散
らす

 人称の秘密
 凝結した時制

 妙齢の麗人を赤朽葉で誑かし、過飽和の湧水が流れて、寂れた期待は原子
に還る

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眠れない夜に

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