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夏の記憶、異国の女

 2日間、車で遠方の店を回った。高速道路のパーキングエリアで休憩しながらこんなことを思い出した。

 十数年前の夏、車で帰省した。
 途中、缶コーヒーを買うつもりでサービスエリアのコンビニに入ったら、先にノースリーブの若い女が飲み物を選んでいた。
 後ろで順番を待っていると、棚の商品を取ったり戻したりする女の腋からちらちらと毛が見えた。どうも腋毛が普通に生えているらしい。
 あんまりじろじろ見て、変な誤解を受けても面白くないから目を逸らしておいた。どうやら異国の人だった。

 元来、自分は腋毛が嫌いだ。何しろ見苦しい。まっすぐだったらまだ身の振りようもあるところを、なまじっか縮れているものだから始末が悪い。
「君ぃ、だからいいんじゃぁないか」と欲情する人も世の中にはあるが、甚だ賛同しかねる。

 女性は大概剃ったり抜いたりするのだろうが、男がそうしてつるつるにすると不自然でいけない。
 あれば見苦しく、なければ不自然で、どっちにしたって都合が悪いから、自分はこれまで腋毛のことはなるべく気にしないようにして生きてきた。これからもきっとそうして生きていくだろう。

 なお、学生時代の友人辻(男性)には生来この腋毛がない。それで仇名が『マッチ』になった。
 本物のマッチには現在脇毛があるそうだが、辻がどうなったかは特に興味もないから、訊かずにいる。


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