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おかしな「励まし・激励・なぐさめ」 ~ドラマ「ザ・ボーイズ」の場合 #1

ブッチャー「(MMとフレンチーが揉めた時に突然)スポーティ・スパイスの近況を知っているか?」

ブッチャー「いいか?ソロになると皆ゴミ同然になっちまう。でも、グループでいりゃあ――あのすごいスパイス・ガールズになるんだ」「要するに、俺たちも1人だと何もできない。お互い助け合って協力しないと成果を上げることはできない」

MM「……あいつ、人を励ますのが下手すぎだよな?」
フレンチー「ああ、全然ダメだ」

ドラマ「ザ・ボーイズ」(シーズン1の第2話)




◆概要

【おかしな「励まし・激励・なぐさめ」】は「コメディシーン、ギャグ」に関するアイデア。


◆事例研究

◇事例:ドラマ「ザ・ボーイズ」(シーズン1の第2話)

▶1

本作の主要キャラの1人・ブッチャー(中年男性)。


いろいろあっていま彼は、

・Step1仲間(MM、フレンチー)と共に、キミコという女性の行方を追っていた。

・Step2:ところが、MMとフレンチーは元々仲がよくない。ちょっとしたことから口論になり、殴り合いの喧嘩に発展した。

・Step3:ブッチャーが制止する「おい、2人とも待て!」。いまは仲間割れなんてしている場合ではない。力を合わせてキミコを探さねばならぬのだ。それだのにまったく!


というわけで、

・Step4:ブッチャーは言った「スポーティ・スパイスの近況を知っているか?」。――「スポーティ・スパイス」とは、女性アイドルグループ「スパイス・ガールズ」の一員たるメラニー・チズムの愛称である。なお、以下の会話に登場する「○○スパイス」はすべて同グループのメンバーの愛称。

・Step5:は?いきなり何の話だ?MMは意味がわからない。彼は訊き返した「誰だって?」。

・Step6:ブッチャーが言う「スポーティ・スパイスだよ!いま何してるか知ってるか?」。MMが答える「知るわけねーだろ!」。するとブッチャーは「そうだよな」。

・Step7:次いでブッチャーは、フレンチーに訊いた「じゃあポッシュ・スパイスは?知ってるか?」。フレンチーが尋ねる「何が言いたい?」。ブッチャーはその言葉を無視して、「ポッシュは拒食症のやつらに服を作ってる。成長市場ってわけでもないのに」。

・Step8:ブッチャーが続ける「ベイビー・スパイスは何をしてると思う?――何もだよ。ゴシップネタにも出てこない」。さらに、「スケアリー・スパイスは、訴訟とセックス動画で話題になっている」「ジンジャー・スパイスはアルバムをリリースした。『Passion』『Schizophonic』、それから『Scream if You Wanna Go Faster』の3枚だ。耳が痛くなるひどい出来さ」。

・Step9MMとフレンチーはポカンとしている。ブッチャーの野郎は一体何を言っているんだ?

・Step10:しかしブッチャーは気にしない。彼は言った「いいか?ソロになると皆ゴミ同然になっちまう。でも、グループでいりゃあ――あのすごいスパイス・ガールズになるんだ」「要するに、俺たちも1人だと何もできない。お互い助け合って協力しないと成果を上げることはできない」「さぁ、キミコを探すぞ!」。

・Step11:いまやすっかり平常心を取り戻したMMが、フレンチーに言った「……あいつ、人を励ますのが下手すぎだよな?」。フレンチーが同意する「ああ、全然ダメだ」。

・Step12:その後、3人はキミコの捜索を再開したのだった。


▶2

MMとフレンチーが大喧嘩を始めた時のことだ。

ブッチャーがふいに言った「スポーティ・スパイスの近況を知っているか?」。そして彼は、スパイス・ガールズのメンバーの近況を延々と説明し始めた。

ブッチャーは「伝説的アイドルだったスパイス・ガールズといえども、解散してからはパッとしない。俺たちも同様だ。仲間割れしている場合ではない。さぁ力を合わせて頑張ろうぜ!」と仲間を励まそうとしたわけだが――当のMMとフレンチーは終始ポカンとしていた

そう、最終的に2人が平常心を取り戻して仕事に戻ったのは、ブッチャーの説教が効いたからではない。ブッチャーがあまりにも訳のわからぬことをまくし立てるものだからポカンとしてしまい、怒りが醒めただけのことだ。


というわけで――「スパイス・ガールズのくだりが長すぎる!(笑)」「そりゃMMとフレンチーもポカンとするだろうよ(笑)」「さてはブッチャー、お前はスパイス・ガールズの熱烈なファンだな?(笑)」「まぁ最終的にはブッチャーの狙い通り、MMとフレンチーの喧嘩は収まったわけで、ブッチャーは説教上手と言える……のかな?(笑)」と思わず噴き出してしまった鑑賞者は少なくないだろう。


なお、ブッチャーがスパイス・ガールズについて知識豊富なのにはちゃんと理由があり(ただのアイドルオタクやゴシップ好きではない!)、それは後のエピソードで明かされることになる。


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