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物置がなくなった! その① 〜どんどん物が盗まれる話〜

物が、消えていく

今年に入り、次々と物がなくなるようになりました。
アマゾンの置き配だけでなく、娘のヘルメットや、スケボーのようなリップスティックという遊び道具なんかも。

最初に気がついたのが、アマゾンで注文していた水筒がなくなっていたこと。

いつも玄関に置き配をしてもらっているのですが、日中少し外出している間に配達完了メールが届きました。
配達状況の写真も確認出来ています。


でも、帰宅すると玄関に荷物がない。
代わりに何故か、新品の?水色の洗濯物ハンガーが置かれてありました。

実はその時すでに、玄関脇に置いておいて時間が出来たら組み立てようと思っていた物置もなくなっていたのですが、まさかそんな大物がなくなっているなんて思いもしなかったことと、目の前の水筒が水色のハンガーに変わっていたことに気を取られて全然気が付きませんでした。

気味悪いと思いつつ日中はバタバタ過ぎてしまい、それから物置がなくなっていることに気がついたのはその日の夜。
翌日出すゴミの整理をと玄関を出た際にようやく気がつきまして。
ダンボールに梱包されたままとはいえ、私の背よりも大きくて重たい物置がなくなるって、どういうこと?!


アパートの女性

このことが起きて、気になる人物が1人頭に浮かびました。
数日前からよく見かけるようになった、近くのアパートに住む女性です。

「人から見られているような気がする」
というのは大抵自意識過剰だと思っているのですが、2階の彼女の家からは我が家の玄関がちょうど見える角度で、数日前から何度となく外に出るとこちらを見ていて気になっていました。

「もしかして彼女、、、?!」
いやでも、水筒はまだわかるけど物置って、
「ちょっと盗る」
にしては大物すぎやしないか?!
頭の中はちょっとした混乱が起こりました。

そこで、日中アパートの外でずーっと何かの作業をしていた彼女の姿を思い出します。
「まさか、、、」
真っ暗で人気のない時間に確認するには少し怖かったですが、携帯のライトを照らしてアパートの1階に行ってみました。

「うわ。
ビンゴ、、、。」

そこには、私の物置が出来上がった状態で置かれていました。
開梱されたダンボールもそのまま。
送り先の住所部分だけ切り取られていました。
急いで何枚も写メを撮りましたが、色も型番も私が購入したものと同じです。

「これ絶対うちのだよね?
盗られたってことだよね?
え、でも何この雑な行動?
こんなすぐバレるようなこと、するもの?!」
私の頭はますます混乱します。

物音ひとつしない真暗なこんな時間に、誰もいない場所で、もしその女性が現れたら、、、一瞬我に返りゾッとします。
というか、私に何が起こっているの?!

次に取るべき行動はなんだろう。
あ、警察か!
そう思いつくと、翌日を待つのももどかしく自転車に乗り警察に向かいました。

窓口にいた女性警官に事情を説明し、その方の上司も同席した上で調書を書いてもらいました。
状況説明をし画像を見せると、
「十中八九、その女性で間違いないと思う」
と意見をくれました。
しかし何より「証拠」がない。

その女性が持ち出したという証拠がないことには、警察は動けないのだそう。
おおよそ予想していた回答でしたが。

なくなった物もですが、置かれていた謎の洗濯物ハンガーはどうしたものかと相談したところ、拾得物として預かって頂けるとのこと。
刑事課や生活安全課の方なども話を聞いてくれ、その時既に夜中の2時半くらいになっていたのですが、もうその勢いのまま取りに戻ることに。

恐怖体験

そんな真夜中、街は寝静まっていて人とすれ違うこともありません。
家の近くにくると、前方から懐中電灯を照らしてこちらに歩いてくる人がいました。
その人が通り過ぎるのを待って自宅に入っていったのですが。

まだ肌寒い季節だというのに、ピンクのパジャマだけで歩いている女性。
一瞬ののちにそれが件のアパートの女性だと気づいて心臓がドクンと高鳴りました。

振り返ると、懐中電灯の光はあちこちランダムに照らされています。
まるで、家々を物色しているかのように。

さきほどすれ違った際は私のことが眼中にない様子だったけれど、うつろな顔つきだったのを思い出します。
「今、私が家に戻ったことに気づいたら、、、」
自転車の音がならないようにそっと停めて。

でも、まだ近くにいる。
今鍵を開けたら音で絶対にバレる。
住宅街で、夜中の2時半に出歩いている人なんていない。
静寂の中、私と彼女だけが近距離にいる。

緊張が高まります。

私は一旦家に入ることを諦め、懐中電灯の動きを確認しながらお隣さんの家の方に隠れます。
極力そっと停めたけれど、自転車の音で何か気づいたのか、今度はこちらの方を照らし始めました。

「もし、ここまで来たらどうしよう」
夫から長期にわたって罵詈雑言を言われたり脅されたりしていたので、男性からの威嚇にはかなり免疫がついていたと思いますが、この種の恐怖は感じたことがなく、息を殺して身じろぎせず、気持ちを張り詰めました。

何秒経過したでしょう。

「ここまでは来なかった、、、、今のうちに」
鍵の音が出るのは仕方ない。
”カチャ”
でも、静寂の中で鳴り響く音は思った以上に大きい。
しかもよりによってこんな時に、、、

その時。
アパートの2階からこちらを照らす光が。

咄嗟に、しゃがみ込む私。
別に自分の家に入るのは悪いことじゃないんだから、堂々としていればよかったのかもしれませんが。
日中ならまた違ったのかもしれませんが、すれ違った彼女の顔は正気ではなかったような気がして、
「隠れなきゃ」
と思ったんです。

腰くらいまでの塀に隠れてしゃがんだ私の姿が見えていたのかはわかりません。
執拗に玄関ドアを照らしていたので、今更立ち上がるわけにもいかず、体をできるだけ小さくして祈るような気持ちでした。

ようやく懐中電灯が玄関を照らすのをやめると、もうバレてもいいから家に入ろうと震える手でドアノブを開け、中から鍵を閉めました。

家の中なのに安心できない気持ちになったのは初めてでした。
今にもここまで彼女が来るんじゃないか。
ドンドンされたらどうしよう。
警察の人に一緒に来てもらえばよかった、、、

色んなことが頭の中に渦巻き、電気も点けずに家の中でもまたしばらくじっとうずくまっていました。

10分。いや20分ほど経ったでしょうか。
「警察に行かなきゃ」
せっかく入ったドアからまた外に出るのは勇気が要りましたが、ハンガーを持っていかなくてはならないし、今のことも報告しなきゃと外に出ました。

光は見当たらず、私はまたそっと自転車を出しました。
出ると、私と反対方向に懐中電灯を照らしながらフラフラと歩いていく彼女の後ろ姿がありました。

警察再び

再び警察署に着いた私は、緊張が解けたのか安心したのか、涙が出てきました。
警察はパトロールの見守りを強化してくれるとのこと。

最終的に警察署を出たのは朝の4時半でした。
しかし1月の朝4時半はまだ真っ暗です。

「もしかしてまたいたら」
という緊張はあるものの、
「いるかもしれない」
という警戒心が働いていたので、先ほどよりは落ち着いていた私。

彼女は。
いました。
2階からアパートの階下を照らしていました。

それを横目に見ながら、少し落ち着いて家に入る私。

眠たいはずだけど、頭は妙に冴えています。

「警察が証拠を探してくれることはない。
じゃあ、どうしたらいい?」

3時間ほど眠り、翌日は朝から動きました。

(続く)


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