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「アタラクシア」金原ひとみ を読みました(ネタバレあります)

最近読んでいた金原ひとみさんの「アタラクシア」を読み終えて、感じたこととか思ったこととかが日々の中に溶けて無くなってしまって掴めなくなる前に、書いておかなきゃと思って今書いているの、あと忘れたくないなと思って。

由依
最初は由依の視点で始まる。
瑛人さんのことが好きで、普通に恋愛をしているかのような由依。普通ってなんだろうと思うけれど、多数がこれは恋愛だよねっていうような。
でも由依には夫がいる。

英美
瑛人と同じ職場で働くパティシエ。
夫は度重なる不倫を繰り返し、息子は反抗的、同居する自身の母も好きではなく反抗してしまう。
夫に不倫をされている側なため、瑛人と由依の関係に嫌悪を抱いている。


由依の夫で小説家。
初めて由依を見かけたときに気になり、あとをつけて話しかけたことにより2人の関係は始まる。
盗作疑惑が出てから、仕事がうまくいかなくなる。

真奈美
モデルを諦めた由依が始めたフランス語翻訳の仕事で関わっている編集者。プライベートでも飲みにいく仲。同じ会社の荒木と不倫をしている。夫と息子がいるが、夫は音楽での稼ぎが減り暴力をふるわれている。後ろめたさを感じながらも、荒木との関係があるからそんな家庭でもやっていけていると思っている。

瑛人
由依が好きで由依を好きな男性。
自身のお店を持つ料理人。

枝里
由依の妹。由依とは父親が違い、また歳が離れている。表情があまりない由依と仲良くない。

由依は瑛人の前だと表情豊かだと思っていたけれど、由依自身は表情豊かなつもりでも相手にはそれが伝わっていないのかもしれない。そのせいもあって、桂も瑛人も由依の存在をよく掴めていない。
真奈美と一緒にご飯を食べたとき、つくねに添えられていた卵の黄身を悪気なく全部自分のつくねに付けて食べたように、表情が淡々としていて大人っぽく感じる由依の中身は、自分に正直な子どものままなのかもしれない。
怒りを言葉や態度で表す英美は、そんな由依とは対照的だ。自分では一生懸命に仕事をしているのに、夫は不倫をし、子どもは反抗的で母親も好きではない。英美が子どもに対する愛情がないのを子どもは感じとっている。まだうまく言葉で伝えられない子どもは暴力でしかそのさみしさや悲しさをあらわせない。
それは真奈美の夫にも共通しているものがあるのかもしれない。もう立派な大人だけれど、大人だからこそ素直なことばを言えず、その吐き出せない言葉は暴力となるしかない。

由依は桂に離婚を切り出したが、桂は自分が由依を好きな限り離婚はしないという決断をする。
桂が由依の身体を無理矢理ねじ伏せたこと、なんなら最初のストーカーじみた出会い、桂は自分のことしか考えず自分のことが好きなのではないか、だからこそ由依は桂じゃなく、由依のために美味しい料理を作ってくれ、自分のことを考えてくれる瑛人を好きになったのではないか。

最後の方、「できた」と言った由依の妊娠は、無理矢理のときのかと一瞬思ったけれど、過去のまだ2人が結婚してから浅いときの出来事とわかり、ほっとした。
流れるままに桂と結婚した由依に愛情というものが芽生えたのはお腹の子に対してで、でもその子どもはいなくなってしまう。そしてその次に芽生えた愛情は、瑛人に対してのものだ。

桂の本の出版社でもある会社の人間が、少女を殺した罪で逮捕されたというニュースがツイッターで流れ、それを見た由依はTVのチャンネルを回してそのニュースを探す。逮捕されたのは、真奈美と不倫していた荒木で、荒木は有名なツイッターラーのコウノボクノマックだった。枝里がオフ会で実際に会い、そして枝里に暴行を加えた人物だ。
この繋がりは全く予期していなかったから、とてもびっくりした。
真奈美から見た荒木
枝里から見た荒木
とても同一人物とは思えず、疑いすらしていなかった。
真奈美と接する荒木は優しく
枝里と接する荒木は荒々しい。
真奈美のことを本当に好きだったから、別れて壊れてしまったのか。
今回は荒木だったけれど、もしかしたら英美や桂が荒木のようになっていた可能性もある。
もしかしたら全員に可能性があるのかもしれない。
ドーナツの穴のように、本当は無いのにそこにある。
そんな穴のようなものを皆が求め続けているのかもしれない。

荒木が殺したのは、もしかしたら枝里だったのか。
ニュースを知った真奈美はどう思ったのか。

色んな想いを考えずにはいられない。


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