表紙_最終_

経営の技法 #50

5-12 社員教育
 社員教育は、下の正三角形(内部統制)上、極めて重要なツールであり、会社組織のリスク対応力を高めることになるが、「やって良かった」と思われる社員教育を実施するために、「リスクセンサー機能」「リスクコントロール機能」など、内部統制の重要な概念や機能を正しく理解することが重要である。

2つの会社組織論の図

1.概要
 ここでは、以下のような解説がされています。
 第1に、社員教育について、ビジネスのための社員教育とリスク管理のための社員教育を一体として考えるべきである、と説明しています。
 第2に、社員教育が会社経営に必要であることを確認しています。
 第3に、経営陣に学んで欲しいテーマについて、有名な講師を呼んだところ、もったいないからと多くの従業員を参加させたために、中途半端な研修に終わってしまう例を参考に、研修の企画の重要性を説明しています。
 第4に、研修の目的を明確にすることと、リスク管理などの研修であっても「儲ける」ための研修にすることがポイントである、と説明しています。

2.社員教育をさせることの重要性
 さらに、社員教育をさせることも重要です。
 これは、社員に自分の後継者を作らせることを意味します。サステナビリティ―という問題として、会社の永続性を確保するとともに、教えることによって自分自身の理解を深めることにもなるのです。
 管理職者の中には、忙しいから、仕事を通して教育しているから、等と言って、後進の指導に熱心でない人も多く見かけます。けれども、例えば子育ては親自身の勉強である、と言われるのと同様、後進の指導は、自分の経験やノウハウを明確化し(曖昧なままだと教えられない)、定着させる(人に教えると、その準備や経験から、記憶にしっかりと刻まれる)ことです。
 また、何よりも管理職と部下のコミュニケーション不足が深刻な問題を招きますので、それを予防する効果も期待されます。
 管理職者に、社員教育させることも、検討しましょう。

3.おわりに
 ところで、そもそも社員教育は必要でしょうか。
 専門家ばかりを中途で集めた会社を作れば、それぞれが自分の専門性を確立し、高めるために自己研鑽してくれるでしょうから、こちらから教育する必要もなさそうです。
 けれども、会社、特に内部統制(下の正三角形)は、人の集団です。人の集団が集団として存続し、集団として機能しなければなりませんので、その構成員である従業員には、それぞれの能力以外に身に着けてもらわなければならないものがあります。
 特に重要なのは、1つ目として、組織それ自体の目的や存在意義の認識の共有です。いかに専門家と言え、バラバラのままでは何もできません。
 2つ目は、経営やマネジメントの能力です。組織が組織として活動するためには、人を使ってもらわなければなりません。経営は人を使うことである、と経営学で定義される場合もあります。したがって、経営の基本や人事の基本(労働法も含みます)も、学んでもらわなければなりません。
 このように、どのような組織でも社員教育は必要なのです。

※ 『経営の技法』に関し、書籍に書かれていないことを中心に、お話していきます。
経営の技法:久保利英明・野村修也・芦原一郎/中央経済社/2019年1月



この記事が参加している募集

推薦図書

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?