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松下幸之助と『経営の技法』#46

4/1の金言
 何としても二階に上がりたい、その熱意ある人が、ハシゴを考え出す。

4/1の概要
 松下幸之助氏は、以下のように話しています。
 熱意が重要。
 二階に何とかして上がりたい、という熱意があると、ハシゴを考える。上がってみたいなあ、では駄目で、俺の唯一の目的は二階に上がることだ、という熱意が必要。
 才能が非常にすぐれているからハシゴを考える場合もあるが、熱意が必要。仕事の上の熱意がなかったらお豆腐みたいなもの。人間は何といっても熱意であり、習った技術、知識というものも、熱意があればぐんぐん生きてくる。

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 職業柄、数多くの経営者にお会いしましたが、特に経営者には熱意が必要です。熱意の源は、経営者ごとに異なり、単純にお金が欲しいだけの場合もあれば、正義心、自己顕示欲、承認欲求、など様々です。
 これは、多くの人々の生活を支えつつ、さらにリスクを取ってチャレンジしなければならず、リスクに足が震えても、すくまずに一歩踏み出すべき立場にあり、そのために「熱意」が重要だからでしょう。安定した大企業の、現状維持を役割とする中継的な経営者を除き、すべての経営者に共通するのは、ときにうっとうしく感じるほどの熱意です。
 そして、松下幸之助氏は、この熱意をむしろ経営者でない従業員に要求しています。
 一つのことをやり遂げるのに、特に会社の事業に役立つこととなると、一人でできるものではなく、多くの人を巻き込むことになりますが、ここで求められる熱意は、当然、他人を巻き込むことをいとわない熱意となるでしょう。会社や状況によっては、そのようなことが会社の秩序を害し、好ましくない、と言われるかもしれません。
 けれども、会社は適切にチャレンジをすることが必要です。経営者のミッションは、儲けることであり、そのためにはリスクを取ってチャレンジしなければならず、会社も、経営者のミッションを果たすためにリスクを取る活動が必要となります。取るべきリスクだったのかそうでなかったのかは、簡単に判明することではありません。やってみなければ分からないものも多くあるはずであり、それを会社秩序という理由で簡単に阻害しては駄目な場合が多いでしょう。
 氏が、経営者ではなく従業員をけしかけているのは、会社内の壁も超えて欲しい、というメッセージが込められているように思われます。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 特に、社内での積極的なチャレンジを推奨している点を重視すれば、株主として経営者に求める素養としても、会社経営を安定させることよりも、活気を与え、様々なチャレンジが自発的に行われるような状況をつくり出す能力こそが、求められる、ということになるでしょう。
 チャレンジを求めると、短期での成果を求め、会社の成長をかえって阻害する、という反感を抱かれる場合がありますが、短期での成果とチャレンジは、必ずしも一致するものではありません。むしろ、腰を据えて息の長いチャレンジをし続ける信念こそ重要なはずです。
 経営者の資質として、チャレンジし、継続的に利益を上げる、というミッションを遂行できるかどうか、という最も基本的なことを、改めて重視すべきでしょう。

3.おわりに
 個人の力量と、その個人を邪魔しないことを中心に検討しましたが、このような熱意や苦労を、一人の従業員だけに押しつける必要はなく、むしろ、同じチームや、さらに会社全体が、熱意を共有して活動した方が良いに決まっています。
 そのためには、新しいことにチャレンジする意欲を高めることから取り組まなければなりません。小手先の表層的な対応ではなく、社風や従業員の意識、という根本的な部分からの変革や維持が必要なのです。
 どう思いますか?

※ 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
 テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。


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