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ショートショート『裏表』

私の住む街にはトンデモ家電を販売している店がある。メ-カ-はSという会社でトンデモ商品を発表しつづけていた。例として、闇を放射する照明などがあった。夜勤勤務など、昼間に就寝する人のために開発されたそうだが、これだと目をおおうこともなく、自然に暗い室内で眠ることができる。

噂によれば、あるSF作家がアイディアを提供しているのだそうだ。なんでもかんでも反対のものを題材にして、作品にしてしまうのがお得意な作家だそうだ。 

私もふくめ、多くの人たちがつぎはどんな家電販売を発売するのか、心待ちにしていた。

そんなある日、仲良くしている店員の鈴野君からLINEが来た。ようやく、新商品が発売されたそうだ。それは『真実を映す鏡』だという。さっそく店にでかけると、鈴野君から説明を受けた。

鏡にふれると人の本性が映るという鏡である。どんなメカニズムなのかは知らないが、開発にあたり、争い事が多発し、人事異動のもとになったという噂のある商品だ。その鏡は円形で、真っ黒なふちどりのデザイン。みた目にはふつうの鏡とかわらない。

「どうですか? さわってためしてみたら」 

鈴野君がそうは言ってくるが、どうにも気がすすまない。

「しかしねえ、自分の本性をみるのは怖い気がするよね」

「やはりそうですか、陳列してから一ヵ月。誰ひとり手にしようとしないんですよ」

          (fin)

※トップ画像のクリエイターさまは「かこ」さまです。

私のオリジナルソング「ナイトゲーム」


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