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歴史&文学散歩

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各地の史跡をめぐった記録です。
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記事一覧

【ミニ旅行記】色とりどりの花たち #シロクマ文芸部

 花吹雪が舞う中、列車に乗りました。ひたち海浜公園内を走る列車、シーサイドトレインでの話です。ネモフィラを見に行ったのですが、山桜がまだ残っていたので、強風にあおられてピンクの花びらが舞いました。  この前の日曜日には、水戸に桜のお花見に行き、「偕楽園は葉桜が多いけど、千波湖はまだ見頃だね」と言っていたのに、水曜日にはネモフィラのお花見。一気に季節が進んだのですね。  ネモフィラの群生地の写真を見て、綺麗は綺麗だけど、ちょっと人工的な気がしていました。SF映画に出てきそう

京都・定番旅行

 3月上旬に帰省を兼ねて京都を訪ねました。  実家が大阪北部、中高は京都市内に通っていたので、主な観光スポットはだいたい訪問済みなのですが、今回はあえて定番の場所を巡ってみました。   最初に訪ねたのは知恩院。浄土宗の総本山です。法然が営んだ草庵が起源のお寺ですが、現存の三門や御影堂(本堂)は徳川秀忠・家光が再建したものです。大きな鐘でも有名なお寺ですが、本堂から更に上に登らなければならないということで、今回は省略。  知恩院の隣が枝垂れ桜で有名な円山公園です。織田作之助

ご当地文豪@文京区 鷗外、一葉、啄木など

 関西出身で、地理に興味もないので、東京周辺には知らない市町村が多いです(何も、張り切って書くようなことでもないですが)。  埼玉県の羽生市も、最近知った地名です。田山花袋の『田舎教師』に出てきたので、ネットで調べると、「田山花袋の小説『田舎教師』の舞台となったまち」と市のHPに出ていました。田舎教師が売りみたい。「田舎教師像前」というコミュニティーバスの停留所までありました。近所に住んでいたら、遊びに来る友達に「田舎教師像前で降りてね」と説明するのでしょうか。それはちょっ

三鷹 太宰治ゆかりの地をめぐる

 三鷹駅で少し時間があったので、太宰治ゆかりの場所をいくつか回ってみました。 三鷹跨線橋  JRの線路をまたぐ跨線橋です。太宰治のお気に入りの場所だったとのことで、ここで写した太宰の写真も何枚か残っているようです。橋の上からは富士山がきれいに見えました。太宰も、同じ富士を見たのですね。当時は、眼下に武蔵野の平野が広がっていたのでしょうか。  残念ながら、近々取り壊されてしまうので、最後に見ることができてよかったです。  網がかかった以外は、太宰の時代と変わらぬたたずまい

東京国立近代美術館 『重要文化財の秘密』 森鷗外に導かれて

 東京国立近代美術館で開催中の『重要文化財の秘密』展を見てきました。明治以降の重要文化財(絵画・彫刻・陶芸)68点のうちの51点を集めた特別展です。  去年、東博の国宝展を見た時に知りましたが、国宝指定の美術品のうち、成立年代が一番新しいのは渡辺崋山の『鷹見泉石像』(1837年)。つまり、明治以降の作品はまだ国宝にはなっていないんですね。ある程度時間が経たないと、評価が定まらないということなのでしょうか。  文化庁のHPに「国宝 重要文化財のうち極めて優秀で、かつ、文化史的意

出光美術館『江戸絵画の華 京都画壇と江戸琳派』を見る

出光美術館  出光美術館の特別展『江戸絵画の華 京都画壇と江戸琳派』を見てきました。  この美術館は、出光興産の創業者・出光佐三のコレクションがもとになっています。収蔵品のメインが日本と東洋の古美術なので、これまでは全く縁がなく、よくそばを通っているのに存在さえ知りませんでした。  今回の展覧会では、江戸時代の絵画を収集なさっているプライス夫妻(カリフォルニア在住)から出光が買い受けた江戸期の絵画190点のうち、80点が前期と後期にわけて展示されています。  私が鑑賞したの

パリと下落合、広告 『佐伯祐三 自画像としての風景』

 東京駅にある東京ステーション・ギャラリーで開催中の「佐伯祐三 自画像としての風景」を見てきました。  noteでは小説や映画の感想を書いていますし、音楽も、言語化はできないのですが、好きな曲やいい曲はわかります。  でも、絵画は、優劣どころか、自分がどんな絵を好きなのかもよくわからない…。学生時代、女子美の友人たちの個展やグループ展に何度か行った時も、感想が思い浮かばずに苦労したものです。一応好きなジャンルもあるのですが、その一つ、フランドル地方の画家たちに興味を持ったき

伝通院と新選組 背景を持たない者はどう動く 【幕末歴史散歩】

 先日、徳川家の菩提寺としての伝通院について書きましたが、幕末が好きな私にとっては、伝通院といえば浪士組結成の地=新選組始動の地でもあります。  浪士組は、文久3年(1863年)の将軍徳川家茂上洛の際、将軍警護のために作られた組織で、新選組の前身の組織になります。上洛する時に、浪士234人が伝通院の塔頭(寺院内にある寺)処静院に集まったことから、そこが浪士組結成の地とされています。  幕府に浪士組の結成を提言したのは、庄内藩郷士の清河八郎でした。  私が清河八郎を知ったの

窪塚洋介の演技に圧倒される 『沈黙-サイレンス-』

 Yahoo!ニュースのトップに窪塚洋介さんの記事が出ていました。  窪塚さんといえば、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙-サイレンス-』の演技がすごかったな〜。  主演はアンドリュー・ガーフィールドなのですが、彼のファンなのに、印象があまり残っていないぐらいに、窪塚さんがはまり役でした。  この映画は、遠藤周作さんの『沈黙』が原作。江戸時代初期に、日本に来たカトリックの神父たちの物語です。神父をアンドリューとアダム・ドライヴァーとリーアム・ニーソン、江戸幕府の役人をイッ

新選組発祥の地 新選組隊士と夏目漱石のつながりなど 【幕末歴史散歩】

 自分では覚えていないのですが、幼稚園に入る前から、日曜の夜は父と二人、大河ドラマを観ていたというので、生まれついての歴史好きなのでしょう。特に、敗者や悲劇の人、滅び去った者への思い入れが強く、幼稚園児の時には、源義経や弁慶をあわれんで、「頼朝ペケ!」と怒っていたそうです(これも自分では覚えていない)。  その後、地元の英雄である小楠公・楠木正行への興味を経て、小学校の高学年になると、幕末に興味が移りました。通っていた塾の図書室がとても充実していたんですね。「中学受験は、読

漱石山房記念館訪問記 特別展『夏目漱石と芥川龍之介』

 新宿区区立漱石山房記念館に行ってきました。夏目漱石の最後の家である、漱石山房の跡地に建てられた記念館です。  高校生の時に芥川龍之介の随筆『漱石山房の秋』と『漱石山房の冬』を読んで、漱石山房のことを知りました。芥川が亡き師の家を訪ねる冬の随筆が特に好きだったので、上京後、どこにあるのか探してみたところ、当時は漱石公園として名をとどめるだけでした。  以前、『吾輩は猫である』の文学散歩の時に書いたように、明治村には猫の家(漱石と森鷗外の旧宅)、石川啄木の下宿、幸田露伴邸と

上野の森で悲劇の画家の最高傑作を見る 「国宝 東京国立博物館のすべて」 後篇

 トーハクの国宝展で一番見たかったのが、渡辺崋山の「鷹見泉石像」です。田原藩の家老、蛮社の獄で自死に追いやられる政治家としての崋山のことは前から知っていて、尊敬もしていたのですが、画家としての崋山には興味がありませんでした。浮世絵以外の日本の絵に興味がなく、江戸時代の文化についてもよく知らなかったので、「家老なのに、絵まで描いていたなんてすごい」程度の認識だったのです。  それが、森鷗外の史伝小説『渋江抽斎』と『伊澤蘭軒』を読んで、江戸時代後期に活躍した崋山のような文人に興

上野の森で国宝を見る 「国宝 東京国立博物館のすべて」 前編

 上野にある東京国立博物館(トーハク)で開催されている特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」に行ってきました。  トーハクは、上野公園の西郷像のある場所を手前とすると、一番奥にある博物館です。今回の特別展では、博物館の創立150年を記念して、国宝89点を始めとする所蔵品中の逸品を展示しています。 私とトーハク  私にとってトーハクは、特別展で何度か訪れただけの馴染みの薄い博物館でしたが、森鷗外が総長を務めていたと知って、改めて訪問したくなりました。  それで、トーハクに

東大図書館で知の巨人の足跡を追う 森鷗外歿後100年記念展

 東大附属図書館で開催されている「テエベス百門の断面図 歿後100年記念 森鷗外旧蔵書展」を見学してきました。  図書館の閲覧スペースは東大関係者しか入れませんが、展示会は誰でも無料で見学できます。おまけに分厚い目録まで無料だなんて、国立大学だからとはいえ、太っ腹ですね。  だけど「テエベス百門の断面図」って…。東大生はこれを見て「おおっ。面白そうだな。ちょっと見て行くか」と思うのでしょうか? もともと小難しそうなイメージがある鷗外を、ますますとっつきにくいものにしているの