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お酒とミステリー

推理小説、もしくは探偵小説好きで、卒論はクリスティや乱歩という純文学から外れたテーマで、最終的に評価も外した記憶がある。

思えば小学生時分から、未来はきっとワクワクするような出来事があるはずだと、なんとなく期待していた。
映画はグーニーズやスタンドバイミーが好きだった。平凡な私も、きっとこの小さな主人公たちのようにいつか旅に出、大海原にでて、大きな冒険をするのだと疑っていなかった。
ドラマや小説の主人公のように、大事件の謎解きをするのだと信じていた。

そのようなアホな考えは大人になればすっかり忘れ、ることもなく、いつかいつか、と思って今現在。立派な中年になってしまった。
当然、己の人生に胸躍るアドベンチャーなど訪れることはなく、リアルな生活のもと、リアルな悩みに明け暮れる毎日。
お酒と本だけが現実逃避させてくれる人生になるとは。

学生時代からの仲間、夏美、長江、熊井ら飲兵衛の3人は、今でも長江の家に集っては夜通し多様な酒を愛で、その日の肴を厳選し、かつ、毎回招かれるゲストの何気無いエピソードをもミステリーという極上の肴に変えて盛り上がる。

気心の知れた仲間と、気心知れた家での宅飲み。しかも男女入り混じる光景。
これは、その昔憧れたトレンディードラマにも通ずるし、その宴の最中、ゲストの小話から謎を解いていく様は、優雅な安楽椅子探偵風、ライトなミステリードラマでもある。

そこには突飛な出来事も殺人事件も起きない。
ただ、お酒と会話があるだけ。
私たちが営むなんて事ない日常にもすれ違いや勘違いがあって、なんて事ない1つの出来事の中に人間の真意が幾重にも潜んでいる。
そしてそれが、人生をややこしくもさせる。
けど、そのややこしさもまた人生なのだなぁ…

大の大人たちが、お酒を飲みながら物語の真実をあーだこーだと紐解いていく様子は、何も起きないんだけれど妙にワクワクする。
勿論、むかし夢見たワクワクとは違うけれども。

余談ですが、最後の最後、私的には驚くオチが用意されていた。先入観禁止。



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