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UPDRS Part Ⅰ 1−2〜1−6

【UPDRSって知ってます?】では、UPDRSにはどのような項目があるかと、パーキンソン病診療ガイドライン2018との関係について書きました。【参考】日本神経学会https://www.neurology-jp.org/guidelinem/parkinson_2018.html

UPDRSの各パートと理学療法・リハビリテーションの関係について考えようと思います。

UPDRS PartⅠとはパーキンソン病での非運動症状をみます。非運動症状でみるものは、つまり、精神機能と行動と気分でした。前回は1.1 認知障害まで見てきたので。その続きです。

1.2 幻覚と精神症状

【引用開始】
評価者への指示: 錯覚(実際の刺激を誤って感じること)と幻覚(自発的に誤った感覚が生じること)について注意をはらって判断してください。すべての主要な感覚の種類(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)について検討してください。はっきりと具体的に形となって表れた感覚だけではなく、はっきりとは形になっていない感覚(例えば、誰かいる感じとか一時的な誤った印象)についても判定してください。患者が幻覚についてどの程度自覚しているか、妄想や精神病的な思考も確認して評価してください。

患者[および介護者]への指示
この1週間を通して、あなたは現実にはそこには存在しないのに、見えたり、聞こえたり、においがしたり、感じたり、したことがありますか?[もしそうなら、評価者は、患者か介護者に詳しく述べるように頼み、情報を精査します。]

0:正常: 幻覚も精神的な行動異常もなかった。
1:ごく軽度: 錯覚や、形をとっていない幻覚があるが、患者自身はそれを認識しており、病識は失われていない。
2:軽度: 外界の刺激によらない形をとった幻覚があるが、病識は失われていない。
3:中等度: 形をとった幻覚があり、患者には幻覚という認識がない。
4:重度: 患者に妄想症やパラノイア(偏執症)がみられる。

【引用終了】
【出典元】Official MDS Translation Copyright | Last Updated January 29, 2019© 2014 - 2019 International Parkinson and Movement Disorder Society

錯覚とは、実際の刺激を誤って感じること。つまり、実際にあったことを勘違いする事ということで、
幻覚とは、自発的に誤った感覚が生じることとのこと。つまり、実際にないこと感じることをさしている。なるほど、文章となるとそうなるわけです。

この評価者への指示内容は、いきなり読んで、すぐに評価するのは大変。

中等度であると、形どっているため、かなりはっきりした、幻覚が見えることがあります。どのようなものが見えるのかを聞きます。机のうえにあるようなものなどで幻覚に発展しそうなものはなるべく取り除きます。

重度の妄想症、パラノイア(偏執症)。 偏執症とは、不安や恐怖の影響を強く受けており、他人が常に自分を批判しているという妄想を抱くものだそうです。普通に偏執症って聞いてなんだろうって思いましたが、つまりは、陰口を言われているように感じたり、批判されているように感じたりなどなどです。


1.3 抑うつ気分

1.3では抑うつ気分。1.4では不安感が、どのように社会的な関わりに影響してくるかをみています。評価指標の内容はほとんど同じです。


ですが、質問される患者さんや、介護者側では、抑うつや不安についてそこまで分けて考えることをしていないことも、よくあります。
評価するときには鑑別しておくことが必要になると思います。

では、以下が抑うつ気分の評価です。

【引用開始】
評価者への指示: 気分の落ち込みや悲しみ、絶望感、空虚感、喜びの喪失を評価してください。この1週間を通しての抑うつ気分の存在とその期間を調べ、患者が毎日決まってやることや社会とかかわりをもつ上で、どれだけ妨げとなっているかを評価して下さい。
患者[および介護者]への指示:この1週間を通して、気分が落ち込んだり、悲しくなったり、絶望的になったり、なにをしても楽しくなかったりしたことがありましたか?もしそうなら、このような気持ちは一日をこえて続きましたか?そのことは、あなたが日常の生活活動をしたり他の人と過ごしたりすることを困難にしたことがありますか?[もしそうなら、評価者は、患者か介護者に詳しく述べるように頼み、情報を精査します。]

0:正常: 抑うつ気分はない。
1:ごく軽度: 抑うつ気分があるが、一度起こったその気分が1日をこえて続くことはない。患者の日常の活動や社会とのかかわりに影響しない。
2:軽度: 抑うつ気分があり、数日間持続する。しかし、患者の日常の活動や社会とのかかわりに影響しない。
3:中等度: 抑うつ気分があり、患者の日常の活動や社会とのかかわりを妨げるが、それらができないわけではない。
4:重度: 抑うつ気分のため、患者の日常の活動や社会とのかかわりが全くできない。
【引用終了】
【出典元】Official MDS Translation Copyright | Last Updated January 29, 2019© 2014 - 2019 International Parkinson and Movement Disorder Society

気分のおちこみや悲しみなどの抑うつ気分での浮き沈みによって、毎日やる行為への影響を診る項目。いつも行く喫茶店に行かなくなったなどの話を実際に聞くことがあります。

この項目は、そのまま、チェックすれば問題ないと思います。


1.4 不安感

【引用開始】
評価者への指示: この1週間を通しての神経質、緊張、心配、不安感(パニック発作を含む)を判定し、評価して下さい。患者が普段通りのことをしたり、社会とかかわる際に、それらの気分がどれだけ持続しているか、患者の生活を妨げているかを評価して下さい。
患者 [および介護者]への指示: この1週間を通して、あなたは神経質になったり、わけもなく心配したり、緊張したりしたことがありますか?もしそうなら、その不安な感覚は一度につき1日をこえて続きましたか?そのためあなたが普段通りのことをしたり、他の人と過ごしたりするのが困難になったことがありますか?[もしそうなら、評価者は、患者か介護者に詳しく述べるように頼み、情報を精査します。]

0:正常: 全く不安感はない。
1:ごく軽度: 不安感はあるが、一度につき1日をこえて続くことはない。患者の日常の活動や社会とのかかわりを妨げない。
2:軽度: 不安感があり、一度につき1日を超えて続く。しかし、患者の日常の活動や社会とのかかわりを妨げない。
3:中等度: 不安感があり、患者の日常の活動や社会とのかかわりを妨げるが、これらができないわけではない。
4:重度: 不安感のため、患者は日常の活動や社会とのかかわりが全くできない。
【引用終了】
【出典元】Official MDS Translation Copyright | Last Updated January 29, 2019© 2014 - 2019 International Parkinson and Movement Disorder Society

神経質、緊張、心肺などの不安感が、どのように行動への影響があるかをみるものです。抑うつ気分の評価内容と、ほとんどかわりません。


1.5 無関心 (アパシー)

【引用開始】
評価者への指示: 自発的な活動や自己主張、意欲、積極性の程度を評価して下さい。日常生活や社会活動に対する活動性の低下の程度を評価します。ここでは、評価者は無関心(アパシー)と,うつからくる類似症状とを区別するよう努めて下さい。
患者[および介護者]への指示: この1週間を通して、何かしようとしたり、人と一緒にいることに関心がなくなったことがありますか?
 [もしそうなら、評価者は、患者か介護者に詳しく述べるように頼み、情報を精査します。]

0:正常: 無関心さはない。
1:ごく軽度: 患者自身、あるいは介護者が気づいている無関心さがある。しかし、日常の活動や社会とのかかわりを妨げない。
2:軽度: 無関心さが、一部の日常の活動や社会とのかかわりを妨げている。
3:中等度: 無関心さが、大半の活動や社会とのかかわりを妨げている。
4:重度: 受け身で、引きこもっており、積極性が完全になくなっている。
【引用終了】
【出典元】Official MDS Translation Copyright | Last Updated January 29, 2019© 2014 - 2019 International Parkinson and Movement Disorder Society

無関心は、アパシーです。自発的になれるかというというところで評価をします。うつと区別するようにとなっています。なかなか、難しいことをいっています。

うつは、常に気持ちが落ち込んでいて。自覚症状があって。本人も苦しい。

アパシーは意欲的になることもなければ、気分が落ち込むわけでもなく、何事に対してもフラットな心理状態で、自覚症状はない。本人は困らないけど、周りが困るという状態。

まぁ、つまりは、この質問項目の通りです。

やっとこ、UPDRS PartⅠの最後まで来ました。


1.6 ドパミン調節異常症候群の症状

【引用開始】
評価者への指示: 以下のような様々な活動に注意を払って下さい。普通でない、あるいは過剰なまでのギャンブル(例えば、パチンコや宝くじなど)、普通でない、あるいは過剰なまでの性的衝動・性的興味(例えば、ポルノ雑誌への異常な興味、自慰行為、配偶者などに対する性的欲求など)、他の反復性の活動(例えば、収集癖、電化製品などの分解、片付けや仕分けの繰り返し)、あるいは健康上必要がない、医師の処方によらない薬物の摂取(例えば、耽溺行動)などの有無。患者自身の生活や家族の生活、社会的な環境におけるこれらの異常な活動・行為の程度を評価してください(お金を借りなければならなかったとか、クレジットカードの停止といった経済的な問題や、家族との対立、仕事をさぼる、食事や睡眠時間を削ってまでの上記の行動などの有無)。
患者[および介護者]への指示: この1週間を通して、がまんできないほど異常に強い欲求を感じたことがありますか?何かをすることに駆り立てられたり、考え続けたりするように感じたことがありますか?またそれをやめることが非常に難しいという自覚がありますか?[ギャンブルや掃除、コンピューターの使用、余分なお薬の服用、過食、過剰な性行為、これらを患者に応じて例示してください。]

0:正常: 問題なし。
1:ごく軽度: 過剰な行動はあるが、たいていは患者や家族/介護者にとって問題になっていない。
2:軽度: 過剰な行動があり、患者自身の生活や家族の生活において少し問題を引き起こしている。
3:中等度: 過剰な行動があり、患者自身の生活や家族の生活において大きな問題になっている。
4:重度: 過剰な行動があり、患者の正常な日常の活動や社会とのかかわりを妨げている。あるいは、患者とその家族の以前の標準的な生活の維持を
妨げている。
【引用終了】
【出典元】Official MDS Translation Copyright | Last Updated January 29, 2019© 2014 - 2019 International Parkinson and Movement Disorder Society

耽溺行動?、(たんできこうどう)と読む。

耽溺とは、(よくない事に)夢中になって、それ以外のことを顧みない事。
【三省堂 大辞林 第三版】

とういことです。

ドパミン調節障害は、dopamine dysregulation syndrome (DDS)と呼ばれ、

【引用開始】
病的賭博、性欲亢進、L-ドパ渇望など快楽への欲求が抑えられない行動障害の背景には、脳内報酬系を形成する腹側線条体回路の過活動や側坐核に分布するドパミンD3受容体の過剰刺激が重視される。
【引用終了】
【引用元】パーキンソン病診療ガイドライン2018  Q and A 5-11

となっています。病状の1つとしてとらえることが必要だと再認識です。

性欲亢進などもあったりするので、症状によっては、対応する時の担当者の性別の考慮も大切。


これで、UPDRS PartⅠを見終わりました。
とみせかけて、もう少し続きます。

UPDRSの内容をしっかりみると、パーキンソン病の非運動症状がしっかりと網羅されています。理学療法士こそ、こういう指標をしっかりと使って把握すると良いと思います。


それでは、次回に続きます!


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