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ミュージシャンと詩の問題

 ポップミュージックの、というのか、歌詞つきの曲というのか、その歌詞が詩であれば嬉しいと思うのですが。

 例示する。GRAPEVINEは詩を歌ってた。ボーカルの人による歌詞だろうけれども、田中さんね、あの人は読書家であるから詩になっちゃうんでしょう。中村一義も詩人だ。ときどき解釈が難しいフレーズが出てくる。浅井健一も独自の感性がある。亡くなっちゃったけどチバユウスケだって詩的じゃないですか。忘れちゃいけないブルーハーツだとかも。井上陽水もそうですよね、世界観をつくれる人だ。ボカロ界隈でいうとピノキオピーも詩とか文学の香りがする。ガチの詩人の歌詞となると、なんとしても『千と千尋の神隠し』のテーマ曲『いつも何度でも』を覚和歌子が書いてるのを挙げなければならない。歌詞読みながら聴けば泣きますよあんなの。

 詩とは、あるいは詩的とはどういうことか、というのが、ここまで語ってきてそもそもはっきりとはしてないか。これは詩であると認められたものは詩なので、そういう作品に似ていれば詩的な文章ではあるが、詩としてその概念を独立させることはできるのか。
 ま、おとなしく辞書を引こう。明鏡国語辞典から。

し【詩】
[名]
(1)さまざまな感情・思想などを一定の韻律をもつ形式で表現した文学。
「詩を朗読する」
(2)漢詩。

 文学。とあるので、詩とは文学の一種であるわけですが、じゃあ詩的というのと文学的というのはほぼ同じですね。ついでに引こう。

ぶんがく【文学】
[名]
(1)言語で表現される芸術作品。詩歌・戯曲・小説・随筆・評論など。文芸。
(2)言語で表現される芸術作品を研究対象とする学問。文芸学。
(3)自然科学・社会科学以外の、文芸学・言語学・哲学・史学などの総称。

 さて、芸術作品といわれてしまった。芸術的な文章が文学であり、つまりは文学的であり詩的でもあるのか。では芸術とはなんだね。また引く。

げいじゅつ【芸術】
[名]
人間が心に感じたことや思想などを、さまざまな方法・様式によって、鑑賞の対象となる美的な作品として創り出すこと。また、その作品。絵画・彫刻・音楽・演劇・舞踊・文学・建築など。

 美的な作品とある。ふむ……。

 まとめましょう。詩とは文学であり、芸術であり、美的な作品である。ここまでくるとだんだんわかってくるというもの。要するに何かにシビれればその何かは美的なものだし、鑑賞に値する芸術と呼ばれるものだし、そこに文章で勝負してるのが、ひとつには詩という文学なのだった。まとめかた合ってますか。

 だからもうこれ、いいこといってるとかすげえこといってるとか、そんなキラーワードを歌ったらそいつは詩人なのだ。詩をやってるやつだ。そういう人々があたくしは好きである。

必要なのは 愛だけさ 愛だけさ 笑うなよ 殺すぞ  byくるり

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