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ひつじたちの旅-③僕は君の

ランチをすっ飛ばして
ディナーの話をするとはいかがなものかと。

なるほど言われてみたらその通りである。

メシの話から始まったこの旅であるからして、
時系列は異なるがメシ系列として正すのであれば

昼ごはんの話をしよう。

朝から味噌ラーメンを胃の中に流し込み
例えようのない罪悪感を打ち消すかのように
「寒かったからちょうどいい」などと
独自の理論武装に身を固めた我々は

全く知識のないままに看板を頼りに
ランチを求め彷徨っていた。
いったいこの地方の名物が何なのか
それすらもボンヤリとしたままだった。

旅っぽい感じがいいよね。
年齢的にもさ、旅先でハンバーグとか
あんまりないでしょう、その、風情とか。
こういう時は少し背伸びして、
老舗っぽいような郷土料理で渋く決めたい。

背伸びと言ってもバレリーナの様な
キレイな爪先立ちなんかできない
もう、若くはないのだ。
腰を伸ばすだけで精一杯。
プリマドンナは遠い夢なの。

店選び

🚗ブゥゥゥーン
車が走る。

目についた看板を次々と読み上げる。
助手席では妻がそれをスマホで
検索して情報を読み上げる。

料理のジャンル・営業時間・口コミなど
運転中は写真が見られないので
美味しそうな料理か、キレイな店内か、
妻のインプレッションに頼るしかない。
こうやって私たちは店を決める。

○○家、レストラン△△、マックダァーナァ、
店名に時折「ニトリ」などと
混ぜ込んでみる。人生に必要なユーモアだ。

妻「違う」


瞬殺である。

普段はふんわり系女子の彼女だが
食事に関しては常に真剣勝負なのだ。

男というものはこうやって空気を読めずに
種族間のイザコザを引き起こし、
無益な争いを続けてきたのであろう。
世の既婚男性諸君にアドバイスするとしたら
君たちに必要なのはユーモアではなくお金である。


肝に銘じろ

幹線道路をいったりきたりすることなく
実にストレートに目的地を決めることが出来た。
私たちがたどり着いたのは
「なんか雰囲気良さそう」から
コチラ

落ち着いた雰囲気漂う和風な感じ


外構えも非常に趣がある。
歴史を感じさせるような暗めの店内。
にも拘らず、店内外にはこれでもか
というくらい商品アピールが凄い。
そう、ここは.…


鳥もつ煮

この地方の大定番B級グルメ
「鳥もつ煮」それが看板メニュー

これまで食べたことがない。

人生初挑戦の食べ物に出会えるとは
これもまた旅の醍醐味だ。
鳥もつ煮はレバー、ハツ、砂肝...etc
鳥の内臓を砂糖と醤油で甘辛く煮たもの

レバーというのは言わずと知れた
人によって好みが分かれるアノ部位だ。
嫌いな人はとことん嫌いだし、牛でも
鶏でも、豚でも、ダメなもんはダメ。
好きじゃない人は見るだけでイヤになる。
苦手な人は多く、レバニラなどという
ふざけたネーミングの料理があったりする。
牛のレバーに関してはさらに酷くて
偉い人が「ダメです」といってるのに未だに
「レバ刺し」という都市伝説を語り継ぐ輩がいる。

そう、私はレバーが大嫌いだ。


しかし、ココは旅先。
まして大好きな蕎麦屋なのだから
冒険することも厭わない。

元祖、初代、本店、発祥、
そんな肩書を堂々と掲げるこの店ならば
初めてレバーを美味しいと感じるに違いない!

いざ、尋常に勝負!


ズバァァァァン

甘い香りとテリッテリな輝き

意外とガッツリな量が来てしまった。
でも、大丈夫。隣の席の爺さんも
うら若き乙女を3周くらいしたご婦人方も
みんなみんなこれを注文している。

仙人みたいな爺さんは小鉢に入った
鳥もつ煮を頼み、チビチビ酒を飲みながら
最後にざるそばを注文していた。
粋だねぇ。なにが粋かわからんが
長生きしろよ爺さん。

実食

醤油と砂糖の甘辛い味付け
淡白な味の蕎麦と、濃い目の
鳥もつ煮のコントラスト。
滋養強壮にもいいんじゃないだろうか
だから爺さんたちがこんなに
元気なんじゃないだろうか

レジ横にも芸能人のサインがいっぱいあった。
取材や番組で良く紹介されているみたいだ。
なるほど、だんだん店が混んできたぞ。
みんなこの味を求めてやってくるんだな。
昭和25年に誕生したメニューだって!?
すごいなここまでくるB級グルメの枠を超えて.…

しかし、しかしだ、
世間の評判や能書きなどというものは
一口の前には皆、無力なのだ。

受け容れ難し


多くは語るまい。
長く培われた私の舌は
意外と頑固だったのだ。
でも、蕎麦は美味しかったぞ。

鳥もつ煮に関して
「クセになる味、後引くね。」
のちの妻はこう評した。
良かった。妻がレバー好きな人で。

いつも君は私の足りない部分を
補ってくれるね。ありがとう。
やっぱり僕は君のそばがいい。


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