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読了「生き物たちよ、なんでそうなった!?」

まえがきの書き始めで、既に楽しい気分になれた本、五十嵐杏南・著「生き物たちよ、なんでそうなった!?」を今日、読み終えた。

 地球には、すごくヘンな生き物がいる。
 体毛がつるっ禿げになったサルのような容姿を持つ動物だ。直立二足で歩き回り、ハゲてしまったその体に布を纏い、「労働」たる行為にせっせと勤しむらしい。「労働」をしていないときは、こうして本を手に取ったり、他にやることを見つけたりして時を過ごすそうな。
 人間は充分ヘンな動物なのだが、地球は、人間からしてみたらヘンな特徴を持つ生き物で満ち溢れている。

「生き物たちよ、なんでそうなった!?」まえがき

「ヘンなのは私だけじゃないらしいよ。良かったね。」と、勝手な事を思いながら、気軽に読み始められた。

サイエンスライターという肩書が書かれていた。軽い読み口の文章が楽しかった。たくさん笑った。身近な言葉でされる比喩も伝わりやすかった。

図書館の新着図書の棚で見かけて借りていた、2022年出版の新しい本。限界まで頑張ったんじゃないかと思うくらいに、最新情報が反映されていた。

「WHO ARE WE? 観察と発見の生物学」国立科学博物館収蔵庫コレクションVol.01哺乳類展でも見かけた、イッカクの歯、カモノハシの話もあった。

本文の最初の話は、ユニコーンの角だった。
ユニコーンは実在しない動物の名前で、それは「イッカクの角」と書かれていた。

それは哺乳類展で見たものでは?と、展覧会場でもらえた資料を出してみた。
すると「イッカクの歯」と書かれていた。
写真は撮っていなかったが、螺旋模様の表面の長い歯だった。
1mくらいはあっただろうか。

角じゃないらしい、と思いつつ読み進めると、しっかりと歯の話、何のために長い?という研究の話が書かれていた。オスにだけ生えるもので、3mになることもあると書かれていた。

2010年代の研究で注目された、著者の表現では「人間の歯がこんな造りになっていたら、歯が染みてしょうがない」感覚器官として使われている説。
2020年には「やっと角がモテるために使われているという説に関する強力な根拠が得られた。」

という感じに、いろいろな動物について、不思議なところと研究の成果でわかったことが書かれていた。
更には、まだわからないことも紹介されていた。

表紙に描かれているのは、カモノハシ、一番古い原始的なカメユーノトサウルス、パンダ、ハチ。

他にもたくさんの動物が出てきた。
どの動物の話も興味深く楽しんだ。

研究の結果から面白かった一つは、キリン。
キリンの長い首の理由については「今も議論が絶えない」とタイトルに書かれていたので、不確定な話ではありそうだが。

キリンと近縁種で首は短めのオカピの話などが書かれた後、2022年の研究発表について書かれていた。

中国北西部で見つかった、著者の表現だと「カッパのコスプレをしたオカピ」の化石に、ディスコケリクス・シエジーと名付けたと。その動物は、盛んに頭突き勝負をしていたらしい。

シエジーは獬豸かいちという中国の伝説上の動物。
牛か羊に似ている、頭にユニコーンのような角のある動物。
獬豸は日本の狛犬の起源ともされているので、狛犬の源流はキリンということになるという話。

獬豸を自分で検索するとウィキペディアの情報がヒットした。
「麒麟に似ている」と書かれていた。
麒麟きりんは、動物園にいるキリンとは全く違う。獬豸と同じく伝説上の動物。

それでも、麒麟も獬豸も幻ではなく、キリンやオカピの祖先、みんなキリンなんじゃないか?と、うっかり思ってしまったりもした。

獬豸はキリンの仲間の化石がインスピレーションの源ではないか、という研究者による推察が書かれていたが、「議論の的となっている」と書かれていたので、どんな話になっていくのか気になった。

もう一つ面白かったのは、2017年の分析、クマムシの将来について。
最強生物と呼ばれるクマムシに予測された、天文学的スケールでの強さは… 読んだ人が楽しむということで。

研究内容以外の文でも、たくさん笑った。
モザンビークにあるゴロンゴーサ国立公園のアフリカゾウの牙が、密漁により急激に進化している研究が始まった、きっかけについて書かれたコラム。
アボカドの種による、ヒトへの地味な危険性。
締め切り間近の感情など。

研究の面白さと笑える面白さのある、楽しい読書になった。

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