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“好きなジャンルだけエシカル”だって十分だ

服を大切に作りたいし、大切にしてほしいし、大切にしてくれる人に買ってほしい!!

アパレルデザイナーとして働いていく中で、心のそこからそんな風に思うようになった。

どんなにこの思いが強くても、私は普通の会社員だ。意見を言うことはあっても上司や会社の決めたことには従わなければいけない。

利益を生むことが最優先ならば、服を安く作って高く売らなければいけない。

その事実は、作り手にとっても客にとっても幸せにならない負のループを生み続ける。


最近は「エシカル=道徳的な」「サスティナブル=持続可能な」という言葉がビジネスでも政治的にも飛び交っていて、

アパレル業界でも毎日のように耳にする言葉になっている。

アパレル業界は、服の大量廃棄によって二酸化炭素を大量に生み出し、

大量生産によって土壌や水を汚染し、

発展途上国で働く人々にものすごく低い賃金で作らせたりしている事例もたくさんある。

あまりにも道徳的でない、持続し続けられるわけがないやり方をしている業界だ。

そんな業界のアンチとして、問題の解決のために「エシカルファッション」という新たなジャンルが生まれているのが現代だ。

エシカルファッションブランドは、実は数多くある。

それぞれのブランドが様々な取り組みをしていて、例えばフェアトレードを徹底したり、オーガニックコットンのみを使用したり、地産地消に力を入れたり、ヴィーガンレザーを使って動物愛護を訴えたり、

どこかで何かを助けたり、改善するような活動をしている。

けれど正しい服作りをすると値段は決して安くはならなくて、安い他のブランドに負けてしまうし、

大量に作ることもないから多くの人に行き渡らないし、

広告費もないから知名度も上がらないという経営としてはなかなか厳しい状況。

会社員のデザイナーとして働く中で、安い服が大量に生み出されて、たくさん捨てられて、その事実やカラクリを知りながら自分もそこに介入していて、

自分の作った服だってたくさん捨てられているであろう事実に、私はじわじわと疑問と不満と不安でいっぱいになっていた。

私は、ここ数週間でエシカルファッションについてを過去ないほどに調べて、今後の自分が本当にどうするべきで、どうしたいのかを真剣に考えていた。




濱島優里さんの書く文章が好きで、以前からnoteを読んだりInstagramをフォローしたりして彼女の発信をよく見ていた。

「Netflixでカウスピラシーというドキュメンタリー映画を見て影響を受けた」と仰っていて、たまたま時間が空いているタイミングがあったので見てみることにした。

その映画を簡単に説明すると、

酪農が地球温暖化に非常に大きな影響を与えているにもかかわらず、酪農で儲かる人がいたり資本が大きすぎることによって多くの人がそれを見ないふりをしている、という事実が描かれている。

「人間が儲かりたいだけの、行き過ぎた酪農をやめよう」というメッセージを込めて、お肉や動物性の食べ物を食べないという、ヴィーガンとして生活する選択をする人々がいる。

ヴィーガンの人々がそういう理由で活動しているということを、私はその時初めて知った。


その映画を見ると多くの人がヴィーガンになる、と聞いていたのだけれど、私はヴィーガンにならなかった。

その事実を知っても、私が思うことはこうだった。

「私はお肉が好きだし、栄養価のことも考えると今後の自分のために食べていきたい。それに例えば地球上の人間がみんなヴィーガンになってしまったとしたら、酪農家の人たちはどうなるの?誰かが補償してくれるわけでもないのに。」

特別動物が好きでもない、地球を守りたいという気持ちも無い私にとって、

この映画はとても勉強になったのは事実でも、私の行動を変えるようなことはなかった。

ヴィーガンになるためには、この映画で今後の人生を変えるほどの影響を受けるには、

それ以上にそれまでのバックボーンが必要だったのだ。

そして思うのは、洋服も大切にするという考えも同じだということ。


自分が着ている服が、どんな状況で働かされている人が作っていて、何で作られていて、なぜこんなに安いのか。

自分達が安い服を何も考えずに買うことで、安い服しか買わないという意志があることで、その消費者のために流通してしまうことで、

どれだけ大量の服が捨てられて、どれだけの作り手が傷ついているのか。

そんなことに胸を痛めて行動を変えようと思えるのは、それだけ服への想いが強い一部の人だけなのだ。

その一部の人の1人が私だ。そして私は、この真実を知れば、みんなも服を大切にしてくれるんじゃ無いかと、心のどこかで思っていた。

だけど、それは違うと今はわかる。

私がヴィーガンにならなかったように、多くの人は何も変わらない。

私が動物に対して大した思い入れが無かったように、服に対して思い入れがない人だってたくさんいる。

私が現実を知ってもお肉を食べ続けたいと思ったように、現実を知っても服を安くたくさん買いたいと思う人はいる。

行動を起こしたり、自分の生活を変えようと思うには、相当そのジャンルに対して思い入れや愛が無いと難しいのだと、本当にそう思った。




私は地球を守りたいとか、温暖化を止めたいとか、そんな大層なことは正直考えていない。

なんなら、地球がめちゃくちゃ暑くなっても適応できるように生物は進化するんじゃない??とか、

私はその頃には死んでるだろうしな〜とか、

地球を守るって言っても地球は辛いとは思わないでしょう、とか、最低かもしれないけど思ってしまう。

でも、自分がデザイナーとして生きている間は、服を大切にしてもらえるように発信したり動いていく活動はしたいな、と思う。

それが地球を守りたい人たちの活動と繋がるなら、ついででラッキーじゃん!一緒にやりたい!って思う。


私はヴィーガンにはならなかったけれど、ヴィーガン料理が気になるようにはなったし、週に数回ならお肉を食べなくたってそれでもよくて、

「それでも十分いいんだよ〜!」って褒めてもらえるなら、なんとなく嬉しい。

そんな風に、エシカルファッションを知ってもらったり、

古着を購入したり、服を大切に手入れして着てくれる人が増えたりしたら、それをしてくれる人をたくさん褒めたたえていきたい。

今すぐファストファッションを辞めろ!!なんて言うつもりは無くて、

ZARAで買って物だとしても大事に長く着てるの最高だね!!って言う人でいたい。

私はまだまだ勉強中だけれど、これからも服を愛する気持ちを深めながら学びたい。


便利さを捨てず、無理もせず、興味の無いことは興味の無いままでもいいから、

みんながみんな、思い入れのあるジャンルでエシカルな活動をしていけば

それが一番バランス良くこの世が良くなっていくんじゃないかと今は思っている。




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