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早くも私的BESTエッセイ大賞2021『女ふたり、暮らしています。』

いい本が沢山あったけれど、これ以外思いつかない。
2021年の私的BESTエッセイ大賞は『女ふたり、暮らしています。』一択。

選択の幅が広がり、幸せの形は少しずつ多様になっていると感じるが、まだまだ「結婚&出産 is 女の幸せ」というステレオタイプが根強い中で、新しい幸せの在り方を提示してくれた一冊。
夫婦でもなく、同性カップルでもなく、友達をパートナーとして暮らす。家に性愛神話を持ち込まない選択。
よく女友達やオタク仲間での老人ホーム理想論が語られるけれど、それに近い。
人気コピーライターのキムハナと、ファッション誌『W Korea』の編集長 を長く務めたファン・ソヌという、社会的地位のあるおしゃれな人たちによる共同生活エッセイ。

友達だから相手の実家に貢献しなくて良いし、法事や年末年始の労働など家父長制の悪習から解放され、むしろ行けば喜ばれる。最高。
年末年始にご馳走を作っては、親戚の集まりの後に寝込んでいた母の姿を私は一生忘れないだろう。あんなのは心底御免だよ。おっと、うっかり恨み節。

お互いに共同生活の為に努力をすることは、どの場合でも不可欠だし、ふたりの価値観やフィーリングの相性も大事だから本当に幸運な実例と思うけれど、新鮮さを感じつつ、読んでいてあたたかい気持ちになれた。


先日twitterで回ってきた信田さよ子さんの話がとても興味深かった。

信田:家族は父と母、つまり一対の男女が仲良くやっているという演技によって成り立つと思うんですね。仲の良い男女はどういうものか、ということを、日々演技すればいいんじゃないですか? すごい冷たい言い方になっちゃいましたけど。

-それは、いわゆる「アメリカのファミリードラマ」的な?
信田:そうそう。ものすごくアーキテクチュアル、というか、人工的ですよ。私は、本当にクールなので、そういう家族だけが生き延びられると思っている。

-「おはよう、ハニー」から始まって
信田:そう。なぜなら、夫婦が密着して、心底すべてをわかり合えるようにしようとすると、それは暴力につながってしまうと思っているんですよ。親密性は危ない、と思っているので……。(中略)だからそういうなかでも、「私たちは、とりあえず仲の良い父と母なのよ」ということを演技する。
家族って、技術と意志によって維持されないと、もたないと思っているんです。愛情がなんとか、って言っていたら、もう絶対に無理ですよ。コロナになって表面化した、日本の底の抜けた家族のなかで、次々と誰かが死んだり殺されたりして、事件になってきているんですね。これからまだ出てくると思うんです。そうなったときに、これは本当に「家族愛が足りない」ということで済まされる問題なのか。それはやっぱり、技術と意志を、ある程度教え込まなきゃいけない。

【ELLE】DVから解放された新しい家族像を求めて~「加害者」とはなにか?


他人だから割り切って許せる、仕事だから優しく出来るけれど
それが家族になると途端に許せなくなる事あるあるなので、納得が深かった。
子どもの存在はDVリスクになりやすいとか、
他にも興味深い話をされているので、読んで欲しい記事。

少し話は逸れちゃったけれど
これまでの普通とされるレールに乗る為に
我慢不可避のライフスタイルを選ばなくていいんだよって話が
語られ始めて、あたたかい光を感じた一冊でした。

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