見出し画像

【詩】抱きしめて離さずにいたかった


寝静まった家の中
時計の音だけ響く夜



午前3時を待ちわびる
軋む床が恨めしい
冷蔵庫のコンプレッサーよ 今鳴くな



一呼吸 ドアノブに手をかける
気圧の変化で家が唸る




温くなった風が吹き抜け
ちらとほのかに舞い落ちる






何も持たずに家を出る
海まで行こうと決めている



遠くでカラスが鳴いている
月もそろそろ見えなくなる



まだ夜は寒くて
大袈裟な吐息が形となって
視界を一瞬湿らせる



バレたら怒るだろうか
それで鼓動が速いのだろうか



まだ夜は明けない
春先の朝にはまだ早い




民家の少ない街灯の下
君が隣に居てくれたらと、
GOING STEADYの佳代を口ずさむ
銀河鉄道の夜を叫びたくなる



海沿いのあの子の家の
脇を通って行くとしよう



大通りは避けていく
田んぼと川に挟まれた
暗い砂利道 マイロード




温くなった風が吹き抜け
ちらとほのかに舞い落ちる




砂利道の先の桜並木
工場裏のマイロード
レミオロメンの茜空

夜と朝の境界で
僕だけが起きているこの世界で
夢の中にいる君を思う





踵をすり減らしたスニーカーで
春に緩んだ川のせせらぎと共に
BUMP OF CHICKENのメロディーフラッグ
明日がすぐそこまで来ている





小さな海辺で箱舟が
僕を待ってはくれないだろうか
何かがあることを祈っているんだ




あの子の家にたどり着く
もしかしたらと少し待つ
スズメの鳴き声に焦らされて

何もないのはわかっていたよな


暁の海に腰を下ろす
水平線の東雲に
日の出は薄く隠された



「たとえ二人並んで見た夢から覚めても」
FLOWのDAYSを口ずさむ
「この想い忘れはしないずっと」



春だな海は凪いでいる
霞んだ空と眼の霞み



立ち上がり
砂を払う
これから帰るのは億劫だけど
家族が起きる前に布団に戻ろう
川の中流の我が家まで
日の昇りきるその前に



温くなった風が吹き抜け
ちらとほのかに舞い落ちる


バレたら怒るだろうか
それで鼓動が速いのだろうか




夜明けも寒くて
大袈裟な吐息が形となって
視界を一瞬湿らせる






春だな新たな世界へと
二人は別の道を行く



ーーーーーーーーーーーー

中高生の時分。家を抜け出した思い出。

海まで歩いたときのお供↓








この記事が参加している募集

#思い出の曲

11,224件

#眠れない夜に

68,867件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?