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存在意義

 認知症の義母がデイサービスから帰ってきた。
 同じマンションに住む方も、施設で生活されているお母様に会いに行かれていて、ちょうど帰って来られた。
 「もう、私のことなんかわからないのよ。」と少しくたびれたご様子だった。
 私は義母の傍にいる経験上、「そんなことないですよ、わかっていても、こちらにわかるような反応ができないだけですよ。」と言った。
 「そうかなあ?まあ、いいや、生きていてさえくれたら。ねぇ、おかあさん、生きててね。」と、その方は私の義母の手を取り、涙ぐまれた。
 義母は相手の感情が移りやすいので、同じく涙ぐみながら、頷いていた。

 また、毎朝お会いするある方は、「私の父は施設にいるんだけどね、この前、貼ってもらっていた冷えピタを食べちゃって大変だったのよー。まぁ、身体が元気だからいいけどね。ねぇ、おかあさんも元気で過ごしてね。」と仰り、それ以降、朝、義母がデイサービスに出かけるときには、「行ってらっしゃーい。」と手を振ってくださる。

 義母を通して、それぞれの大切な家族に思いを馳せる方々がいる。
 それだけでも、このマンションで生活する義母の存在意義は大きい。







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