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ロケのまぼろし。

小泉孝太郎が来てるぞー」。

 家の外の細めの道路で、自転車に乗った小学生らしき男子が、思い切りこいで、かなり大声で叫んで、そこに何台かの自転車がついていった姿は覚えている。

 どうやら、何かのロケが小さな地元の町の駅前であるらしいこと。そこに小泉孝太郎が来ていることは分かったけれど、どうして小学生の男子が、小泉孝太郎に対して、それだけ熱心に関心を向けているのかは、少し謎のままだった。


ロケ

 他にも、時々、地元でテレビドラマなどのロケがある。

 ちょうど撮影をしているときにあたった時は、道路の交通規制のようなことをしていて、それでも撮影がいったん止まって、その場所を通ると、道をはさんで、そのドラマに出演している女優さんが見えて、とても小柄で、顔も小さいのは分かったりもする。

 どういうタイミングなのかわからないけれど、商店街の一角と、そこから100メートルほど離れた河川敷で、それぞれ別のドラマの撮影のロケを、同時期にしていたこともあった。

 何より、家の前のビワの木がテレビに登場したこともあった。

 ある日、門のそばに、10人くらいの人が集まっていて、何か光を当てて、大きなカメラが見えたことがあった。洗濯物を干そうとしていて、その姿を見て、家に引っ込んでしまい、その一群が去るのを待った。

 そのあと、再び、大きなカメラを持った人が来て、道路に出してあった鉢のビワを撮影しているようだったので、そのときは、その人だけだったので、近づいて、聞いたら、ある散歩番組のロケだと知った。

 後日、その番組を見た。自分の住んでいる町の知っている人が、その散歩番組に出演しているベテラン俳優と話をしていた。その俳優は、うちのビワにも関心を持ってくれたようで、その絵まで描いていた。

 親戚から電話がかかってきた。それがウチの前のものだとすぐにわかったようで、そして、人だかりがなんだか怖くて、引っ込んだ話もしたら、えーテレビに出ればいいのに、的なことを言われた。

 こんなに早く反響があると思わなかったので、まだテレビの影響力はあるのだと思い知らされた出来事だった。

マンションの壁

 テレビドラマは、視聴者として今も見ている。

 2023年の夏の時期にやっていて、夜中のせいなのか、季節感はあまり関係なく、でも、普段は映画監督が多い人が関わると知って、見始めた。

 途中まで、かなり無理な設定だけど、確かに、そのバイオレンス描写は、テレビドラマではあまり見ないリアルさがあって、それは、相手の攻撃を見切る時の距離が短く、より緊迫感が出ていて、それもあって、どうなるのだろう、と思って見続けた。

 その頃、珍しく夜に外出をして、帰りが午後10時頃になったときがあった。

 自宅の最寄りの駅を降りて、いつものように小さい商店街の道路を通っていたら、少し前に人だかりができていた。

 そして、制服を着た道路工事の関係者ではなく、少しオシャレ感を出していることを本人が意識しているような中年男性に、いく手を阻まれた。持っている棒は工事関係者と同じなのだけど、その笑顔や仕草が世慣れていて、なんだか違うと思ったら、「撮影なので-----。すぐ終わりますから」と言われたので、ドラマのロケらしいとわかった。

 考えたら、ロケ、などという専門用語を、私のようにその分野では素人でも知るようになったから、専門用語の広がりのようなものをふと考えたりもしたが、同時に、本当にすぐなのだろうか、と思いながら、20メートル以上は向こうの撮影現場を見ていたら、見たような男性と女性が立って、向かい合っていた。

 あれは、確か「ダイマジン」に出演している人(浜野謙太、シシド・カフカ)では、と思っていたら、本当に、程なく撮影は一段落したようで、道路は開放された。

 私が、その撮影されていたマンションの前を通るときは、出演者の姿は見えなかったけれど、この壁か、と思って、後日、その壁の写真を撮った(それが見出し写真です)。

最終回

 それから、ドラマ「ダイマジン」を見ているとき、ストーリーを追いながら、セリフを聞きながら、違う緊張感が加わったのは、私が見たはずのロケ現場が、もしかしたら映るかもしれず、それを見逃したくない、というような欲があったせいだ。

 毎回、見続けていて、それは、次の日のために早めに寝なくてはいけないから、どうしても予約録画で見ることになり、さらには、このドラマの1回分だけ、どうしても、他の番組の方が見たくて、だから「ダイマジン」の最後の15分ほどが録画できない時があった。

 だから、もしかしたら、その時間に、自分が見たロケ現場が映っているのかもしれない、といった焦りに似た思いもありながら、最終回まで見た。ストーリー自体は、そこまでの流れは面白かったのに、最後は、投げ出されたような感じで、納得がいかない展開になってしまった。その上、自分が遭遇したロケ現場らしきものも、全く映っていなかった。

 振り返れば、「見られなかった15分」に、もしかしたら、映っていたのかもしれない、と思ったけれど、配信を見たり、他の様々な方法をとってまで見ようとは思わなかったのは、その見逃した15分は、自分が目撃したロケと数日しか経っていないときで、そんなに早く映っているわけはない、と思っていたせいもあるし、単純に使われなかったのでは、と考えていたからでもあった。

 そんなふうに、何が何でも探す、と思いきれないまま、時間は過ぎ、ますます確認できる機会も減り、なんとなく再放送もされないような気がするので、そのロケ現場は、自分にとっては、まぼろしに近い記憶と共に残るだけなのかもしれない。



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