見出し画像

症状が出たら、もう遅い。 それが「緑内障」。

人間ドックの眼科の結果、「要検査」と書いてあるのに、症状が特にないからと、つい後回しにしていませんか…?

眼科医として警鐘を鳴らしたいのが「緑内障」の発見です。

緑内障は、日本における失明原因の第1位。40歳以上の日本人の5%、つまり20人に1人の割合で緑内障の患者さんがいます。それほど珍しい病気ではないのですが、自覚症状に乏しいがゆえに発見が遅れがちなケースもあるのが現実。 今日はこの緑内障について簡単に解説してみようと思います。

1.緑内障とはどんな病気か?

私たちの眼は、なぜ「見える」のでしょうか?

まず、眼の中に入った光が、眼の奥にある網膜に届きます。その光によって、網膜から発生する信号が神経線維の束を伝って、脳へ届き、「見える」という現象に繋がります。(絵1)

緑内障眼の画像

(絵1:日本眼科医会webより)

健康な眼は、この神経線維は100万本ほど集まって束となり、「視神経」という眼と脳を繋ぐ神経を作っていますが、緑内障になると、何らかの原因でこの神経の繊維が減ってしまうのです。

これまで見るための役割を果たしていた神経が減っていくと、テレビのケーブルが徐々に断線していくように、その部分が視野欠損として見えづらくなっていき、その視野障害はどんどん広がっていきます。(下絵参照)
そして、適切な時期に正しい治療をしない場合は、最悪の場合は失明に繋がるという病気です。

画像3

恐ろしいことに、緑内障は中期まで進行しても、視力検査では1.5が出る。
末期になって、ようやく視力が下がるため発見が遅れるケースが多い。

2.消えた視神経は戻らない。早期発見こそが最重要。

先ほど、視神経の繊維が減っていくと説明しましたが、この死んでしまった神経、今の医療では元に戻すことはできません。つまり、一度欠けてしまった視野をよみがえらせることは不可能なのです。できるだけ早く発見をして、適切な治療を始めれば、早期ならば進行は年単位で、かなり遅らせることもできますが、末期になってしまうと進行を遅らせることは難しくなってきます。

早期発見には、人間ドックや会社健診などの積極的、自発的検査がとても大切です。普段外来で診察していると、定期的に健診を受けていない自営業の方、会社勤めの旦那さんは毎年やっていても、その配偶者の方は受けていない、また要検査という結果が出ていても、特に自覚症状もないので後回しにして忘れてしまう、という話も伺います。

自覚症状がないまま、気づいた時には失明の一歩手前という「Silent Disease」であることを覚えておいていただきたいと思います。

画像5

3. 緑内障リスクが高い5つの要因

原因がいまだに解明されていない緑内障ですが、米国眼科学会からは次の5つの要因が、緑内障リスクを高めるとして報告されています。

①家族歴:親または兄弟に緑内障患者がいると、発症リスクは9倍高くなるという研究報告があります。

②加齢
: 緑内障リスクは加齢により増加することから40歳からは、眼科医による眼科検診をすすめています。

③アフリカ系、ヒスパニック系またはアジア系人種
:アフリカ系とヒスパニック系は最も一般的な緑内障を発症するリスクが白人の3倍高く、特にアフリカ系米国人は、緑内障による失明が白人よりも6倍高い。アジア系人種は閉塞隅角緑内障(急性緑内障)の発症リスクが高い。

④近視
:近視の人は緑内障になりやすく、ある研究では近視が重度であるほど緑内障リスクが高まると報告されています。重度の近視の人は、眼球が奥に楕円形に伸び、それと共に視神経が引き伸ばされて薄くなっているためです。
【参考】なぜ怖い?子どもの近視に潜むリスクとは。近視進行抑制治療①

⑤糖尿病(2型糖尿病)
:糖尿病を患っている期間が長いほど緑内障リスクも高くなります。

上記のどれかひとつでも当てはまる40歳以上の方は、年に1度は視力検査だけではなく、きちんと眼底検診を受け、緑内障のリスクがないか検査されることを強くお勧めします。視力が1.0あったとしても、緑内障を否定することはできません。特に強度近視の方は、35歳を超えたら、眼底検査を始めるようにしてください。

4.医療の進歩で「極早期」発見の検査も

近年眼科分野では、画像検査の進歩により、診断、治療方法が非常に飛躍・変化してきました。そのひとつ、光干渉断層計(OCT:Optical Coherence Tomography)を用いた《極早期緑内障診断》をご紹介します。

まず、眼底写真を撮ります。視神経のへこみ(視神経乳頭の陥凹)具合や神経線維の色合いなどを主観的に判断します(写真①ピンク矢印、緑内障初期〜中期)。

従来はこの視神経のへこみ具合を見て、推測されていた緑内障ですが、最近はその評価にOCT光干渉断層計を用います。神経の厚みを計測し、早期よりさらに早い、極早期に緑内障を発見・進行予防できることがわかってきました。

緑内障写真1

(写真②全体的に緑色で視神経の厚みは正常。写真③はピンクの部分が広く、神経が薄くなった異常な部分を指している)。

5.治療は主に点眼。点眼薬も日々進歩。

緑内障治療は、主に点眼になります。現段階では、眼圧を下げることで進行を防いでいきます。その進行具合により、1剤、2剤・・・3剤と点眼薬を組み合わせながら、種類を増やしていきます。
最近は、2種類の薬剤効果が得られる点眼剤が1本にまとまっている配合剤も開発され、患者さんの点眼回数を軽減でき、また、防腐剤フリーの1回使い切りの点眼剤や、薬剤性の角膜障害など副作用が生じにくい点眼剤も開発されています。

~~最後に繰り返しお伝えしますが、緑内障は、白内障のように手術すれば治癒できる病気ではなく、失ってしまった視野を取り戻すことができません。早期発見、適切な治療を受ければ、生涯視野を保っていくことは可能です。平均寿命が延びる分、眼もずっと健康でいられるよう、健診を怠らぬよう、よろしくお願いします。私からの切なる願いです!

6.まとめ

緑内障は、視神経が次第に薄くなり、視野が時間をかけて欠損していく病気。視力が良くても病気は進行していることがあり、発見が遅れるケースが多い。
※※40歳を超えたら(強度近視の方は35歳以降)、年一度の眼科の健診は視力検査だけでなく、必ず眼底検査までされることをお勧めします。

本日も最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。スキマークでの応援(ログイン不要)、フォローしていただけると励みになります。

✅noteには記事更新のお知らせ機能がないため、新しく更新したら公式LINEやTwitter でお知らせしています!登録していただけたら嬉しいです。

📍Twitterアカウントをお持ちの方はリンクはこちら

📍公式LINEQRコードはこちら!

LINE友達招待


※本noteは私的なメディアであり、勤務先の病院とは一切関係はございません






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?