見出し画像

正しい孤独、改め、お手伝いの話

どこからが「ヤングケアラー」でどこまでが「お手伝い」なのか。

私はその答えを知らないが、知らないなりに、「学業に支障が出たらヤングケアラー」という線引を勝手にしてきた。

うちの三きょうだい、いっちゃん、ニンタ、ミコ。

障害のあるニンタと、まだ幼いミコは、まだ二人共とても手がかかる。必然的に、一番上のいっちゃんは、私の話し相手になるし、お手伝い要員でもある。

その状態は決して良いとは思っていないけれど、私がキリキリ働いている横でゲームに興じるのは、人としてどうなのよ、という気持ちもあって、いっちゃんには遠慮なくお手伝いを頼んできた。

ルールは一つだけ。いっちゃんが勉強している時は、じゃましない。

しかし、その線引だけでは不十分なのかもしれない。私は今、そのルール改定に取り組んでいる。

きっかけは、月に一度通っている、児童相談所でのいっちゃんの面談での事だった。いつも一時間ほどでさらっと終わるところが、今回、いっちゃんがなかなか部屋から出てこない。詳しくは教えてもらえないが、親への不満を言っているうちに、ヒートアップしてきてしまったらしい。

頼りない親、話の通じない幼いきょうだい。家への不満がないわけがなく、それを話すためにここへ来ているのだから、その日は成果があったということだ。

ただ、「話せてよかったね」で終わらせる事も出来ないので、まず自分が出来る事として、私のいっちゃんへの依存、お手伝いについて、見直すことにした。

いっちゃんに頼んでいるお手伝いは、特別な事ではない。食器の上げ下げや、私の手がふさがっているときに、下の子のおもちゃを取ってやったり、下の子に頼まれたDVDを再生することなど。

内容自体は過酷ではないけれど、問題は「心理的な負担」なんだろうな、と思っている。私がいっちゃんを頼りすぎていること。

いっちゃんは、「おかあさんは大変なんだから、助けなければいけない」と思っている。忙しすぎて私が不機嫌になる事を恐れている。いっちゃんが大きくなるにつれ、私といっちゃんは子育てのパートナーのような関係性が出来てしまっていて、常にスタンバイ状態でいることが問題なのだ。

私は、いっちゃんへお手伝いを頼む頻度を少しずつ減らした。それ自体は自分の出来る範囲で減らしているので問題はなかったけれど、今度は心理的な負担が私にきた。

いっちゃんの「心の疲労度」をいつも推し量ること。家の中で唯一頼りがいのあるいっちゃんが、庇護の対象になったことで、どっと孤独感が押し寄せてきた。

それこそが、今までの私が、親として間違っていたことの証拠のような気がした。なぜなら、こどもは本来、庇護の対象なのだから。

我が家にやってきた、新しい孤独をまじまじと見つめてみる。それは本来、親なら誰しも持つべきものであって、なかったことがおかしい。子を仲間や同僚にしてはいけない。それがヤングケアラーの始まりなのかもしれない。

正直、とても寂しい。いっちゃんとチームになって乗り越えて来た時間が、一人きりの時間になる。周りから見たら何も変わっていないように見えると思うけれど、私の中の意識が変わってしまったから。

でも、これが正しい形なのだと、私は思う。

長男長女を、特別に信頼をしているから、特別な繋がりがあるという言い訳で、親の仮面を少しはずして本音を見せてしまう。そういう甘えが、子を苦しめることがある。もしかしたら、それを糧に頑張れる子もいるのだろうが、でも、いっちゃんはまだ小学生だから。

親は孤独なのが正解。企業の経営者が孤独なのと同じ事。

といって、今後もずっと、家のあれこれを私一人で背負っていく気概があるわけでもない。ニンタとミコが大きくなったら、三人平等に、それぞれお手伝いをしてもらおうと思っている。それは社会参加だし、教育だから。

同じお手伝いでも、自分一人が頼まれることと、三人が同じように頼まれるのとでは、かなり違うのではないかな、と思う。

下の二人に頼むと余計にやっかいな事になるのだけれど、私はようやく重い腰を上げて、下の二人に片付けなどを覚えさせようとしている。今まではいっちゃんに頼んでいたから、一瞬だった。それがつきっきりで指導しながら食器などを下げさせるので時間がかかる。

でも、これが未来への投資なのだ。私にとっても、こどもたちにとっても。

そして、三人が平等にお手伝いが出来るようになるまでは、私はいっちゃんへの依存度を、定期的に点検していこうと思う。そのくらいでは、いっちゃんの悩みは消えないだろうけれど、親としての、せめてもの贖罪だ。

いっちゃんとは、一緒にテレビを見て感想を言い合ったり、下の子の成長を見て喜びあったりできる。そんな繋がりがあるのだから、孤独なんて大げさな言葉をわざわざ持ち出すのもどうだろう。

「いっちゃんのお手伝い、減らそっかな」という、ただそれだけの話だ。





サポートいただけると励みになります。いただいたサポートは、私が抱えている問題を突破するために使います!