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餃子奴隷事件

こんど、オンラインサロンの5歳サロンで餃子パーティーをする。みんなで餃子を作って焼いて、わいわいするのだ。

運営のお手伝いということもあるし、餃子がすきなので、頑張って包んでいきたいなと思ってる。

餃子は、わたしにとって特別な食べもののひとつだ。

高校生のころ、別居する母はちいさなレストランを経営していた。まあまあ気性の荒い父と頑固なわたしが喧嘩して母のところに逃げると、母はお店の台所でランチとディナータイムのあいだの時間に、餃子のつくりかたを教えてくれた。

あまり母に料理を教えてもらったことはないから、そういう意味でも貴重だ。

父の機嫌を取るために、餃子を包め。オブラートに包まず言えば、母の作戦はこうだ。

父は餃子はすきだが、ニンニクが苦手なので市販の餃子が得意ではない。だから臭み消しにしょうがを使ってタネをつくってあげるのだと教えてくれた。

肉をこねて、きざんで塩をふったキャベツをしぼって加え、切ったニラも加えて混ぜる。

混ざったら、しょうゆと顆粒だし、料理酒、片栗粉、しょうがの絞り汁を入れて、なじませて30分ほど冷蔵庫でおく。

あんができたら皮に包んでいく。ひだを均等になるように、母の手元を見よう見まねで包んでみる。

できあがったものを持たせてもらって、なんだかんだ車で店まで迎えにきた父と家に帰って、餃子を焼いて食べた。

それから、わたしの得意料理&ごめんね料理として、餃子は活躍することになった。

今日は餃子! という日は、たくさん餃子をつくって、まずは焼きで。さいきんはビールを飲みつつ、父と妹が食べてるのを見つつ、フライパンで2回くらい焼く。

「そろそろ変える?」
「そうだね、変えよう」

父が焼きに満足したら、水餃子にチェンジ。いっぱいのお湯を沸かしておいた鍋に、餃子を投入する。

水餃子も食べ切ったらフィニッシュ。我が家で餃子を食べるのは、パーティーなのだ。

ただ、平和をつくるための餃子なのに、争いを巻き起こすこともあった。

「もう! 早くしてよ!」

せっかちな父が、夕飯の支度をしてたくさんの餃子を包み続けるわたしに向かって怒鳴ったのだ!
仕事で帰ってきて疲れていたのもあると思う。そう言われて、わたしの反応は……

「わ、わたし……ぎょうざをつつむ……奴隷じゃないもん……」

泣いた。
これは我が家の餃子奴隷事件として、いまもふざけてよく話題に上がる。いろんなことが重なってて、急に悲しくなってしまったのだ。こんなことで泣く日がくるとは、餃子のつくりかたを母から教えてもらったときには想像できなかった。

ねえ、見て。これはある日の、わたしのつくった餃子。奴隷のように涙ながらにつくった餃子。



ああ、5歳サロンの餃子パーティー、楽しみだなあ。

さいごまで読んでくださり、ありがとうございます! サポートしてくださったら、おいしいものを食べたり、すてきな道具をお迎えしたりして、それについてnoteを書いたりするかもしれません。