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現代アートを離島に展示する、都市に展示する

直島の現代アートを、瀬戸内国際芸術祭と同義に扱ってはいけないなあと思うようになりました。常々、瀬戸内国際芸術祭は島を消費していると思っていることに変わりはありませんが、喜びや生きがいという側面からは島のお年寄りに、活力的な変化を確実にもたらしています。

豊島のおかあさんが道ゆく人に声をかけたり、尋ねてくる人をもてなしたり、数々のインタビューにも答え、豊島への思いを笑顔で表しています。単純に「島に活気が出た」という喜びが伝わってきます。

でも、それは総意ではありません。瀬戸芸が始まるに至った島への説明を、どれだけの島民が覚えているでしょうか。コロナ禍の開催宣言、離島の医療と救命、現状と対策が十分にすり合わせられないままの実施。豊島(てしま/瀬戸内海)と直島、それぞれのありよう。

現代アートを離島に展示する。人の多い都市なら、現代アートはいいのか。六本木の森美術館によく行きますが、豊島で感じるように「現代アートが六本木を消費している」と思ったことはありませんでした。圧倒的な人の数の差。そこに、昔から住んでいる人たちの民意は都市計画に含まれているのだろうかと、考えたこともなかったのです。人口800人を切った豊島は、お互いの顔が見える暮らしがあります。以下の文字起こしは、直島についてですが、六本木についても「地域を消費する」ことが当てはまるのか、考えていきたいと思います。

クリス智子さん
福武総一郎さんなど、福武財団の名誉理事長でいらっしゃって、直島であったり、今またまさに豊島とかいろいろ広がってますけど、日本でも多くの方々がアートを目的に旅をするというところに直島ってもうありきになっているとおもうんですけど、この辺の考え方とかバックグラウンドとか、あの拝見するとふむふむ、すごいな。やっぱりものを作っていく、どういう風に考えて、長い目で見ると場所をどうしていくか考えてというのは、この辺も面白かったですか?

原田氏
直島というのは鄙びた美しい田舎、田舎というか島で、自然のたくさんある島で一般の方々が普通に暮らしている島だったんだけれど、でも、そういうところにアートを持ち込むということは、周りの人たちから見て、えっなんでっていうリアクションがあったっていうことだったんですよ。

だから自分にはクリアなビジョンが見えていても、なかなか形にするまでには周りの人人たちを説得しなきゃいけないし、実際に動いて見せなきゃいけないということもあったけど、福武さんの場合は実際にアクションをすることができる立ち位置にもあったし、またそうするためには強いビジョンを持ってなければできなかったと思うんですよね。

でも、それを時間をかけてやることによって周りの人たちも巻き込まれつつ、またその島に暮らす人たちもおじいちゃんおばあちゃんも、あそこのアートがね、とかアーティストにあってすごくもてなしたりとか、アートを見るためにたくさんの人たちが島に訪れることになったというのが大変誇りに思っていらっしゃる。そのこと自体が福武さんにとっても大きな誇りになっているというのは、本当に素晴らしいなと思いましたね。

森美術館の森佳子理事長にお話を伺ったときに、六本木ヒルズの森美術館の存在というのもかなり同じようなことがありまして、街なかに現代アートのスポットを作るということを大きなミッションとして、かつて社長だった森稔さんがやってこられたというを今の森理事長も継承されて、森美術館があるから六本木に行く、六本木ヒルズにいくという人もたくさんいらっしゃると思うんですよね
そういった方々の努力だとか、絶対に諦めない挑戦力というものが重要なんだなと感じさせていただく対談がたくさんありました。


j-wave  GOOD NEIGHBORS 2023-3-1 より文字起こし
【TALK TO NEIGHBORS】
アート界のレジェンドとの対話で見えてきたものとは?
原田マハ氏


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