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オランダの性教育の現状と課題

Hoi!こんにちは!
前回は、世界で初めて同性婚を認めた国・オランダの結婚制度についてお話ししました。

今回は、オランダの性教育についてお話しします。

はじめに

自由の国といわれるオランダでは、多様性の理解が進んでいることは有名です。そしてその根本にはこの国の教育が関わっていることは言うまでもありません。
以前の記事ではオランダの自由な教育制度についてお話ししています。)

そんなオランダの性教育の現状と課題をRutgers(オランダで性と生殖に関する権利について若者と協働し、より良い性教育の実現に努めている団体)のレポートを参考にお話しします。

オランダ式の性教育の考えかた

Rutgersは、オランダのポリシーは
- to have positive attitudes and approaches towards sex and sexuality
(性や性関係に対してポジティブな姿勢を持つこと)
- to start teaching about those topics at an early age
(早い段階からそれらの内容を教え始めること)
であることとしています。
これらの結果として、若者たちは早い段階から性多様性や恋愛、性に関する健康や安全の知識と心構えを持つことができるのです。

オランダの学校での性教育

幼いころから性教育をすることに抵抗感や不安を持つ人も多いのが実情ですが、オランダでは性や交際関係に関する良質な教育は、性感染症などのトラブルを起こしにくくする他、このような性の話題をオープンに話しやすくさせ、性生活の健康や、多様性の理解を促すと考えられています。
また特徴として、これは危険、ダメ、などのネガティブな教育ではなく、その喜びや楽しさも教えるポジティブな教育になっているとのことです。

こちらの動画は、オランダの幼稚園で性教育を行う様子です。好きな人に対する欲求は人間としてごく自然なものであり、それを前向きにとらえている様子がうかがえますね。

初等教育:4歳から12歳

日本でいう保育園/幼稚園から小学校までの期間にも性教育は行われていて、最低限決まっている部分はあるものの、教える内容ややり方はある程度自由が認められています。

その中でもKriebels in je buik (直訳するとお腹の中の蝶)という教材は有名で、英語に訳されたSpring Feverはイギリスの一部でも採用されています。
(ちなみに、spring feverは春の高揚した気持ちを表す英語表現です。)

中等教育:12歳から

中等教育用にも有名な教材があり、多くの学校でThe Lang Leve de Lifede(直訳するとLong Live Love)が取り入れられています。

こちらは6つのレッスンで構成されていて、
1. 【何が起こるの?】思春期、恋愛、同性愛、恋愛のはじまりにおける両親や友達との関係
2. 【何のための準備をするの?】誰かと話したり出かけたり、別れたりして心が傷つくこと、スキンシップ
3. 【どこで線引きをする?】何を求めていて、どこで線引きをするのか。他の人はどう思うのか。正しいネットの使い方や理想的でない経験
4. 【性交渉をどう特別なものにするか?】初めての性交渉、そのための心構え、準備、疑問や問題に関しての助けを得て対処すること
5. 【安全な性交渉とは?】避妊、安全でない性行動、危険な性交渉をしてしまった場合の対処
6. 【安全な性交渉の方法とは?】避妊具の使用法、時には断ることで対処すること

このように、恋愛というものを包括的にとらえ、その一部に性に関する問題があることを示していることがわかります。日本の保健の授業で学ぶような局所的な性教育との違いを感じると思います。

家庭での教育

学校での教育だけでなく、家庭での保護者による教育も重要視されています。学校で得た性に関する情報や教育の意味を話してあげることが進められており、実際オランダの子どもたちは学校よりも両親から性に関する情報を得たいと考えているようです。

まとめ

世界の多くの親たちは早期の性教育は若者の不必要に早い性交渉を助長すると考えていますが、これらの教育が広がるオランダの10代は他の欧州諸国やアメリカと比べて性交渉を経験する時期が遅く、ほとんどの若者が初めての性交渉を「自ら望んだもので、良い経験だった」と答えます。

今後の課題

オランダでは避妊具や安全な中絶を利用でき、政府も一体となって国民の性の権利と性教育を支援しています。しかし、課題は依然として多いのが現状。オランダ女性の半数がジェンダーに基づく暴力を経験し、若者は学校での教育に満足しきれていません。

また、先ほど、学校の性教育には自由が認められている、と書きましたが、裏を返せば解釈は自由で教師によっては不十分なケースもあるということです。中でも性多様性の理解に関しては改善の余地があるとされ、EUやオランダ政府も後援するiglyoは、LGBTQ European Education Indexの報告資料内で、この問題に言及しています。

2016年に教育監査委員がオランダの教育現場での性多様性の教育に関して調査し、「学校が性的多様性について学ぶ内容は、学校にかなりの裁量権が与えられているため、大きく異なったり恣意的になりうる可能性がある」と結論付けた。さらにこの調査では、5校に1校がこの問題ついて生徒を教育していないと報告している。

Netherlands - LGBTQI European Education Index 2018 (education-index.org)

こちらは2018年時点での報告書ですが、先進的な考えを持ち、性の理解に関しては世界のリーダー的立ち位置であるオランダでさえも課題の解決に向けて奮闘しているようです。

次回は

今回は性に関する話題の中でも学校教育に焦点を置いた内容をお伝えしました。次回は、国民の考え方やLGBTQに関するトピックについてお話しします。それではまた次回、Tot Ziens!

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その他参考資料
Sex education in the Netherlands | DutchReview



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