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短くて不思議な物語。

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詩よりは長く、けど短めの文章。
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2018年11月の記事一覧

『マル』

マルとの暮らしは長くは続かなかった。
マルの最期は寿命からくる老衰だった。

病院に運ばれてからも何度か発作を起こし、その度に点滴を打たれ、ぐったりとしたまま身体はどんどん小さくなっていき、意識が薄れ、獣看護士の受け応えにも反応しなくなり、2回程小さな嗚咽を繰り返し、動かなくなり、最後はカチカチに固まっていって、やがて眠る様に死んでしまった。

看取った義母は大往生だと言った。
マルは捨て猫と

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『青春』

16歳のとき、恋をした。

当時、溜まり場にしていたファミレスで出会ったその子は同い年だった。
友達の彼女だった人だった。
気は強いが何処か寂し気な雰囲気を漂わせた人だった。きっと水商売であろう特有の大人びた化粧と落ち着いた物腰があいまって僕は一瞬で恋に落ちた。彼女をどうしても振り向かせたいと思った。
しかし、まだ2人は別れて二ヶ月くらいで互いに連絡は取り合わないが周りの友人を通じて互いのことを

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『霊的互換性と魂の救済アレコレ』

救われたい人間は嘘を信じる。信じると嘘は本当になる。不思議だけど。逆に救われない人間は嘘を嘘として扱う、そこには一ミリの余地も無い。全ては理にかなったものとして嘘の向こう側にある真実には目を向けずに、あっさりと見過ごしてしまう。

ここに小さな家があるとする、ここにはあなたが住んでいる。小さな家なので小さなドアが付いている。家の中には古い暖炉が一つある。この古い暖炉はあなたが生まれる前からずっとず

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