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はじめての、おかいもの

noteを毎日書いていると、たまに「これは絶対に書かねば」という気持ちになる。

もともとは、娘の成長を書き記すために始めた毎日更新。最近は、日々思うことや書くことについての感情を言葉にする記事も多いのだけれど、昨日は本当に「これは絶対に書かねば」という一大イベントが発生したので、こうやって書いている。

なにかというと、5歳11か月の娘が、うまれてはじめてお小遣いで買い物をした。なんだ、そんなことか。そうです、本日のnoteは、人様にとっては「なんだ、そんなことか」を一生覚えておこうとしている親の記録です。

以前、こちらの記事で紹介したように、我が家のお小遣いルールは「お手伝いを完了したらもらえる制」である。気まぐれな5歳児。「今日は、お皿洗うね」と食事中に話していても、食べ終わったら忘れてテレビを見ているなんてことも珍しくはない。

ゆっくりと貯めたお小遣いは、9ドル50セントになった。そしてある日突然、娘は「私、このお金つかえるんじゃない?」と気づき「お小遣いでお買い物したい」と言い出した。

「何がほしいの?」と尋ねると、「トランポリンのお店で、アイスクリームを買う」とか、それぐらいならお母さんが買ってあげるよと思う回答が返ってくる。かと思えば、「お金でお金を買う」という投資家のような発言も飛び出したり。

まあ、じっくり決めればいいでしょと静観していた数日後、とあるお店の商品に娘の目が釘付けになった。

それは、「JoJo Bow(ジョジョシワリボン)」という子ども向けのヘアアクセサリーである。もとは、アメリカのティーンユーチューバーであるJo Jo Siwaちゃんがトレードマークとしてつけていたリボン。娘の小学校でも人気で、頭にでっかいリボンをつけている子を見かける。

「娘ちゃん、これ欲しい」

指さす先をみると、ちょうどセールで$5になっていた。娘がつけたら、さぞかし可愛いだろうと容易に想像できるが、残念ながら娘はヘアアクセサリーを壊す・なくす系の幼児である。髪留めをつければ紛失し、ゴムで結べばなくして帰宅、ヘアバンドはなぜか飾りがとれる。

なので、私は買い与えることを渋った。そんな母の迷いを読み取ったのか、娘は力強くいった。

娘ちゃんのお小遣いで買っていい?

ほほう、そうきたか。たしかにそれは、いい考えだ。すぐに壊れてしまうヘアアクセサリーも、お小遣いで購入するなら大事に使うかもしれない。でも、あいにく今日は現金がない。NZはキャッシュレス社会だが、はじめてのお買い物は現金を払うほうが「買っている感」がある。

「じゃあ、週末に買いにこよう」

そうして、娘の「はじめてのおかいもの」ストーリーは幕を開けた。

週末までの数日、「お母さん、銀行でお金おろしてきてね」と何度も確認してくる娘。

娘の貯金箱は、銀行口座と紐づいている電子版で、貯金箱自体に現金は入っていない。「はいはい」と返事をしつつ、銀行まで行く時間がなかったので、「お父さん銀行」のキャッシュから$5を取り出して、ネットバンクで娘の銀行口座から$5を生活費の口座に移しておいた。

これで、娘のお小遣い残高は$4ドル50セントになった。

せっかく貯めたお金が減るのは、寂しくないのかなと思ったが、娘は$5を手にしてニコニコしている。

そして週末の土曜日。いざ、ショッピングセンターに出陣。

お目当てのJoJoBowは種類が多い。水色、レインボー、ショッキングピンクなど、色とりどりのリボンが並んでいる。

まえもって「黒いリボンにする」と言っていた娘だが、いざお金をもって現物を目の前にすると迷いが生じ、どうしようかなと左右にゆらゆらしている。

娘の背丈よりもずいぶんと高い位置にある商品が見えるように、夫が抱っこしてあげる。娘は5秒で「白のか、黒のがいい」と2択に絞り込んだ。意外と決断が早い。

次に、判別しやすいように2つのリボンを娘の頭にあてて、写真をとってあげる。本当は鏡がほしかったが、周りになかった。スマホの写真を交互に見比べた娘は、やはり5秒で「白いのにする」と決断した。

はじめてのおかいものの商品が、無事に決まったことに安堵し、意気揚々とレジに向かう私たち。ただ、5歳児の意思は固いようでゆるい。

レジ周りのおもちゃに反応し、「これ買っていい?」を3秒に1回は繰り返す。挙句の果てにバナナ型のおもちゃを手にして「こっちを買おうかな」と言ってくる。バナナ型のおもちゃは、$8だったので「足りないよ」とあきらめてもらった。

待つこと3分、レジは娘の順番に。

娘が手にしたリボンをレジ台に置く。つづいて、お財布から$5札を取り出し、店員さんに渡す。店員さんは、小さな子のお買い物に笑顔になったようだった。レシートまでしっかりもらい、お買い物完了。

娘はたいへん満足げな顔でリボンを手にし、車に向かう途中で頭に取り付けようと悪戦苦闘していた(お家に帰ってからつけてあげた)

こうして書いてみて、読む人が退屈しないように、なんとか話の流れの起伏をつくろうとしたのだが、どうやっても5歳児がリボンを買ったというだけの話である。まったくドラマチックなことが起こらない。

でも、娘が「白いリボンにする」と意を決して手に取った瞬間とか、レジで店員さんにお金を手渡すちょっと緊張した娘の面持ちとか、商品を受け取った誇らしげな笑顔を、ずっとずっと覚えておきたいと思う。

ほんとうはどこかの記念碑に「はじめてのおかいもの記念日」と彫りたいぐらいだが、記念碑がないのでかわりにnoteに書いている。


これは私の個人的な考えだけれど、自分で稼いだお金で好きなものを買うのは、とても気持ちがいい。

私は娘を妊娠中、数か月「外で仕事をしていない時期」があった。そのときは、自分のためにお金を使うことに、ものすごく抵抗があった。

これは、他人がどうとかではなくて、私自身の感情なので専業主婦の地位云々に言及しているものではないと前置きしておく。なんかこう、美容院にいくとか、化粧品や洋服を買いたくても、お金使っていいのかなと迷ってしまった。

もちろんそれは、家計がギリギリで無駄遣いできないという切迫感も関係していると思う。もし、私がミリオネアの家庭なら、気にせず使うのかもしれない。なったことないから、断言できないけど。

そんな抑圧された気持ちを持っているので、再び外でお金を稼いだときは、本当にうれしかった。それは、お金を稼ぐだけの行為ではなくて、自由を手に入れているような、自尊心を回復させているような、たとえ少額でも私にとってはとても意味のあることだった。

大黒柱じゃないから、そんな風に「楽しめるんだ」と言われたら、うん、それも一理あると思う。でも、誰が何と言おうと、稼いだお金を好きなものに使えるのは気持ちがいい。

だから、娘がお手伝いで得たお金を、自分で決めて、好きなものにつかったという「はじめてのおつかい」を傍らで見守ることができて、うれしいなあと思っている

娘は帰りの車で「やっぱり黒にすればよかったかな」と言っていたけれど、その迷いすら、お買い物をする楽しみだ。

大きなリボンをつけてポニーテールにした娘は、やっぱりハイパー可愛かった。この先も、喜びを感じることにお金を使っていけたらいいねと思いながら、めちゃめちゃスマホで写真を撮った。


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