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『ルパン三世 カリオストロの城 大事典』(1982年)収録の「宮崎駿・大塚康生」インタビューの引用と要約。「名プロデューサー・鈴木敏夫」誕生前夜?

◆MOOK本『ルパン三世 カリオストロの城 大事典』(1982年ラポート)

本書には、声優の「島本須美(1954-)」さんのインタビュー(3ページ)と、作画監督「大塚康生(1931-2021)」と映画監督「宮崎駿(1941-)」の両氏同席のインタビュー(10ページ)を収録。個人的には後者に興味深い発言が多い。
ただインタビュー収録時の日付が載っていないので、初出誌や時期は不明。

両者とも、アニメ界の現状(問題点)と展望を現場目線で語っておられますが、私は、さほど思い入れも関連する知識も無い(子供の頃は沢山観たし、アニメ映画が嫌いなわけではない)ので、何もコメントすることはありません。


=宮崎氏の発言で興味深かった部分を引用=


★☆★監督した映画『ルパン三世 カリオストロの城』(79)について★☆★《宮崎 あの、いや、そうなんです。困ってるんですけど……。これもどっかで喋ってるんですけど、いろいろこう、やったぜ!! という感じじゃないですよね、こっちとしては。だから、うっ屈がいろいろあるもんですから、まあ、どうも素直になれないんですね。あまり記事にはならないと思いますけど、せっかくですから喋りますけど、やっぱり、何で今さらルパンなんだろう?という思いがものすごく強くありながらやった仕事だったもんで、だから、その屈折の部分が、やっぱり映画の出来上りにはマイナスになっているんじゃないかという思いが、なんかあるんですよ。もう少し、こう……素直にやれるような企画の方が、よかったんじゃないかな? ということがありますけど、そう企画を選んでやるようなことができないわけですから……。_ただ、物語と内容については、ものすごく古典的なものをやったつもりで一つの舞台があって、その中で完結し得るような話で、世界も大体見渡せるぐらいの規模で、というふうに、一番手法としては古典的な物語の作り方だと思うんです。だから、目新しいものをやったような思いよりも、昔からよくあったものなんだという思いですね。_それから、なんかしらないですけど、クラリスが、こう変なふうになっちゃって…(笑) これはどうしたらいいかわからないんですけれど、そのヒロイン像なんかも、別に思い入れたっぷりというよりも、こういうヒロイン像がありきたりだった時代が、僕はあったんじゃないかって気がしてて……。》 P.94 ※クラリスのロリコン人気? 
宮崎 まあ、「カリオストロ」は、あと一ヵ月あれば、もっとちゃんとした映画になっただろうと、本当に思うもんですから……それが、変な話ですけれど、ドイツ軍みたいなものでね。ソ連の高原になだれ込んで行ってね、確かに地平線のかなたにモスクワの金色の塔のね、輝きが見えたんだけど……ついにそこで力つきて全面撤退っていう感じがあるんですね。》 P.103

★☆★「長編アニメーション映画と映画を作る制作スタジオついて★☆★
宮崎 あの、アニメーションの名作といわれたものは、みんなスタジオつぶしているんですよ。ディズニー以外はみんなつぶれているんです。フライシャーもバッタ君でつぶれ、それからグリモーはもちろん未完成で終り。最近がんばって完成させたのか知らないけど、何やってんのかよくわからない。それからロシアでは雪の女王が最高だと思うんですけど、あのあと本当にだめになってますね。また、短編の中に解体していって、短編ではおもしろいものを作っているけれど、長編では全然だめですね。_だから長編をきちんと作るとなるとたとえば、僕らはテレビでやっていてテレビのスケジュールというものに慣れているから、労働基準法を無視して、苛酷なこといっぱいやってね。それで短期間にワァーッと短期決戦で作るっていうふうなことをやってますけど、たとえば、ちゃんとスタッフを育ててきちんとやろうと思ったとたんに、もう能率はどんどん落ちてくる。それに一定の個性で、あるいは数人の個性で、全体をしばって長期間かけてやっていくという、非人間性みたいなものはね、そのスタジオが長期に続いていて、人がだんだんと変わっていくんだという保証でもないとね。いつか俺も芽を出すぞということがないとね、たえがたいシステムなんですよ。~~~》 P.97~98
宮崎 ~~~結局長編アニメーションっていうのは、本当に一生懸命やったら、そのスタジオはつぶれるし、そのスタッフは解体するしね、その映画は当たらないしね。長編アニメーションっていうのは、そういう恐しさを持っているんじゃないかと思いますね。》 P.102

★☆★「良心的作品」論?★☆★ ※↓嘲笑ではなく自戒?を込めての意見
宮崎 ~~~_といって、そうやって努力して作ったから必ず見ろ、とかね、良心的にやったから絶対おもしろいんだってのは、ウソですからね。良心的にやらなかったのがおもしろかったり、やったものが全然おもしろくないってことは、いくらでもありますからね。良心っていうのは、作る側の勝手な思い込みにすぎないからね。(笑)~~~》 P.102



大塚氏の発言は、私なりに要約すると、これからのアニメ映画は現状の「企画(雑誌のマンガやTVアニメ)」先行よりも、「作家(監督やチーム)」先行になるべきだ、そして、そうなるように、アニメファンも「作家先行」を要望するテレビ局などへの投書で後押ししてほしい、という主張と理解しました。



最後に宮崎駿監督が語る「プロデューサー論」「プロデューサー待望論」を引用。この当時(※1982年)は「名プロデューサー・鈴木敏夫」誕生前夜か?


―――今、やりたいというと、どんな作品ですか?

 宮崎 よく聞かれて、いつも困るんですよね。本当にやりたい物ってのは、絶対に当たらない自信があるものしか思いつかないんですね。_しょうがないから、その枠の中で、何とかして観られる物にしようって、あがく事によって、何か出てくるんで、やりたい企画みたいな物は、延々と持っていますけど、それを、どういう風にして相手をだましてでもやるか、ですね。現場においては、良心的な人間という事だけでは済まないと思うんです。相手を乗せて、金を出させる政治力のようなものも必要で、それを僕らは持っているかと言うと、実は全然持っていない連中なんです。机にしがみついて、自閉症気味でね。_手八丁、口八丁で、喋った相手をまんまとのせてね。それで、やりたい物を作っちゃうという能力を持っていればいいんですけど、持ってないんですね。

 ―――するとやはり、本当の意味でのプロデューサーですかね。いてほしいのは。

 宮崎 そうですね。プロデューサーが実際、金を持ってるし、具体的なイメージを持った人をスタンバイするような、プロデューサーらしいプロデューサーがいればね。

 ―――プロデューサーが防波堤になって、上を全部丸め込んできて、現場に金だけ渡して、ハイ、好きなようにと。これなら本当に、いい映画になるのに。

 宮崎 アメリカのプロデューサーはもっと権限を持っていますね。こういう映画を作りたいという思いをプロデューサーが持っているのかもしれませんね。そういった意味で、ズイヨーエンタープライズの高橋さんと言う人は、作るときに明確なイメージを持っていて、ロッキーチャックをやったり、ムーミンをもってきたり、次にハイジももってきたし、そういう意味では、プロデューサーらしいプロデューサーだったと思いますね。逆に言うと、そういう人は、ヤマトみたいに当たっちゃえばともかく、そうでなきゃ袋だたきにあいますね。そういう事がありますね。

―――思いいれを込めて、これをやらして下さいって言ったやつがこけると、その時のたたかれ方が凄いんですよね。

 宮崎 いや、たたかれてもいいんですよね。逆に言いますと、だから作品は、僕のは当たらなくてもしょうがないんだと、思うしかないんで……。

 ―――作った方が勝ちですね。

 宮崎 ええ、作った方が勝ちですね。~~以下、続く~~》 P.102~103


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「ほぼ日刊イトイ新聞 」で鈴木敏夫高畑勲大塚康生の各対談(2004年)。


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