超優良コンテンツ、持たざる者
自分のことを『なにもできない人間』だと思っている。
「謙虚ですね」なんて言われるけど、そうじゃない。
圧倒的自分軸で超肯定的に自己を捉えたら、結果こうなった。
幼い頃は、全能感の強い子どもだったと思う。
根拠は全て、他人軸での相対評価。
1位が取れるから、賞がもらえるから、ママが喜ぶから、友達にすごいっていわれるから。あの子よりわたしの方がかわいいから。
これらが通用しなくなっていく世界での、身の振り方を知らなかった。
どんどん愚鈍になり、行動が出来なくなった。
なんてつまらない、失敗を避けて後悔を積むだけの這うような毎日。
もっと速く走りたかった。走りながら学べたらどんなに良かったか。
気づいてしまったら地獄の始まり。
しつこく『凡庸』を突きつけられては何度も何度も死にたくなる。
だからその都度、自分の狭い世界に閉じこもった。それしか自分を守る術を知らなかったから。
それでも、項垂れてとぼとぼ歩いていたから見つけられた花があった。
寝転がり蹲らなければ香げなかった、草のにおいもあった。
どうしたらポジティブに生きられますか?という質問に「ネガティブであり続けること」と答えた人のことを思い出す。
ネガティブでいる時の方がポジティブに触れていると思うんだよね〜、なんて言っていた。
どこまでいっても、わたしはわたしのことを信用しきれない。
だけどそれって、別になにも悪いことじゃない。
『なにもできない』というどん底のネガティブは、見方を変えれば究極のポジティブだった。
なんにもできないから、なんでもできる。不安だけど、やるんだよ。
凡庸な人間にしか味わえない、ゆたかな平凡がある。
そう気づいて、「なにもない人間でーす!」という顔で生きられるようになったのは30歳を超えてからだと思う。
なんでも出来るようなキツい顔してカツカツ歩いてた頃に比べるとえらい違いだ。随分傲慢なことしていたなと思う。
怖いのにめいっぱい頑張って、偉かった。
世の中にはさ、自分の弱さや不安を紛らわすために、自分より“持ってない”ように見える誰かを雑に扱いたくてたまらない人が一定数存在するんだよ。
透明で純粋な存在ほど、黒く濁ったものに付けいられる。
その濁りは、大きな組織の中にも、小さなコミュニティの中にも。どこにだって上手に隠れる。
例えば偶然乗り合わせた電車の中や通りすがりのSNSでのやりとり。ともすれば血縁の身内のなかにだって、突如ぬるりと現れる。
自己優位性を保つ為、相手に理不尽に攻撃したり、勝手なレッテルを貼って憐れみたい人たち。
そういう人たちにとって、なにもできない“持たざる者”は『超優良コンテンツ』なんだと思うよ。
ぼんやりした顔で大人をやってるとよく視える。それはもう、悲しいほど。
わたしのことなら、煮るなり焼くなり好きにしてみればいいと思う。食えると思うなら。
「期待してたのに」という言葉を免罪符に相手を攻撃したい人は、期待が向いてない。
ビジネスでも同じだと思う。相互信頼で繋ぐ共同戦線。一方的な負荷となれば相手は潰れる。潰したくてわざとやる人もいるからタチが悪いよね。
相手に期待を掛けていいのは、いざと言う時にその人を助ける気がある人だけだと思う。覚悟があれば尚良い。
祈りだって、寄り添う気持ちがあって初めて成立する。
大人になって、子どもと触れて、何となく気づいた。
絶妙で繊細なバランスで成り立っていた“期待と祈りの結晶”こそ、幼い頃の『全能感』の正体だったんだと。
生まれてから、這えるようになって、歩けるようになって、走れるようになって、もっともっともっと。
何かひとつでも僅かに上回ったり、追い越したり、欠乏してはたちまち壊れてしまう。
一人で生きてきたような顔をした瞬間にはもう、一瞬でぐにゃぐにゃになるのがこの結晶なんだ。
なんと、あまりに脆い。
これまで出会った素敵な人たちは、いつもただそこにいた。
“持っている”なんて顔はしない。だけど、分け合うことを惜しまない。
それが誰かにとって圧倒的な救いとなる。そういう存在だった。
だからほんとは誰だって、ただそこにいてくれるだけでいい。特別な何かになろうとしなくても、大丈夫。
少なくともわたしは、大好きな人達に対してそう思う。
一緒に笑ってくれたらもっといい。
これまでわたしに本当の『期待』や『祈り』をくれた存在への、ささやかなお返しとして。
“持たざる者”としてぼんやりしているわたし自身がいっそ、何か娯楽に近しいものとなればいいな。
そんな事を思って、今日も自由に生きている。
どう足掻くか。どこへ向かうか。
先が読めないからさ、結構面白いと思うよ。
なにもなくていい。多分ほんとは全部ある。
noteを書き始めた時も、似たような文章で〆た気がする。
書き始めてから一ヶ月の一昨日に寄せて。
持たざる者・碧色 拝
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