「すべてを強調」することのワナ
プレゼン、セールス、面接、講演、講義など、「ここ一番で、どう話せばいいですか」ーそんなお声を耳にします。
一言でいうなら「相手目線で話す」こと。
そのうえで、ただ全力で話せば良いって訳じゃない!ってことについて、きょうは書いてみます。
ビジネスシーンでの賢い話し方
▶歌い読みの危険性
たとえば。
「むか~し昔、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました」
この絵本を朗読するとしたら、どんなふうに読みますか?
・むか~し昔
・あるところに
・おじいさん
・おばあさん
一音一音はっきりと区切るように、そして太字の言葉を、同じような声の高さで山を描くように読む。いわゆる「絵本読み」のイメージでしょうか。
この読み方は、実はビジネスシーンには通用しません。
独特の節回しがついてしまうからです。
「歌い読み」とも言われ、メリット?としては、話している本人は気持ちがいい。デメリットとしては、聞き手からするとBGMのように聞こえてしまい、情報がまったく残らない、ということが挙げられます。
▶選挙演説が心に残らないワケ
独特の節回しのある選挙演説を思い浮かべてみましょう。
ご本人の情熱は伝わってくるのですが、具体的な政策が耳に残らないのは、話し方に問題があるからです。
▶「すべてを強調する」=「すべてを強調していない」
すべてを強調するということは、情報の受け手側からすると、どれがキーワードか曖昧になり、つまるところ、すべてを強調していないのと同じことなのです。
では、どうしたらいいのでしょうか。
2つご紹介します。
①相手が知りたいことは何か
1つは、相手が知りたいことにフォーカスすること。
なんだかんだ言っても、私たちは、知りたいことしか聴かない動物です。聞いている素振りをしても、本気で聴くのは知りたい情報だけ(笑)。
相手目線に立ち、相手が知りたいポイントのみ際立てて、残りは引き算で伝えましょう。
そのときに、一音一音はっきりと区切って読むのではなく、意味のつながりを意識して、塊(かたまり)で読むことも大切です。
②キーワードは何か
相手が知りたいポイントが不明なときは、優先順位をつけましょう。
目の前の相手に対し、有益だと思われるポイントから話すのです。
*自己満足…何も考えずに、すべて強調する話し方。
*相手満足…相手が求めるもの・相手に有益な情報を考慮した話し方。
どちらが相手の心に響くかは、お分かりのとおりです。
💎生成AIが今のところ出来ないスキル
このように、相手を慮った話し方は、今のところ、人間だけの専売特許です。生成AIの進歩はめざましいといえど、話者の心の動きに伴う“息遣い”“声域の調整”は学習中の段階だといえるでしょう。
💎人の声だから、相手の心をつかめる
冒頭の「絵本読み」に話を戻して、まとめに入ります。
たとえば、どれほど昔?にフォーカスするなら、「むかーーーーし昔」の表現を工夫する。
ex.
・紀元前なら「むかーーーし」と長く伸ばし、100年前なら短めに「むかーし」
・1回目の「むかし」を大きく、2回目の「昔」を小さく
・1回目の「むかし」をしっかりと、2回目の「昔」をウィスパーで
など、強調の仕方はいくつもあります。←生成AIにはできない!
主人公が「おじいさん」であれば、「おばあさん」より「おじいさん」を際立てて強調すると、冒頭から聞き手の心に「おじいさん」が印象付けられます。←まだ生成AIにはできない!
絵本には「絵」があるし、読み方は「読み手の自由」です。
誰に何を、いつ話すかによって、何通りもの伝え方ができるのは、今のところ人間だけ!
ビジネスシーンでの「ここ一番」でも、話し方の戦略は、幾通りもあります!その戦略を、お客さまやレッスン生の方々と一緒に考える時間が大好きです。
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以上、「すべてを強調」することのワナでした。