たいぞう

シンガーソングアーティストたいぞう 1959生まれ ●1959.3.26 O型 ●98…

たいぞう

シンガーソングアーティストたいぞう 1959生まれ ●1959.3.26 O型 ●98年よりプロ活動を始め、現在に至る。青森県内外でアコースティックデュオ【たいぞう&IKUKO】 で活動中

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ドアの向こうへ vol.22

~母、清子と再び~  その時、また写真立てがカタリ、コトリと鳴って、何か白い煙のようなものが、立ち上がって来た。 「いいわね、娘とお酒が飲めちゃって・・・」と声が聞こえて来た。 「え。清子か?」 「え。お母さん?」と二人同時に叫んだ。 それは紛れもなく母の姿だった。 母はそのまま歩いて来て父の隣へ座った。 次第に、母の輪郭が、はっきりしてきて、とうとう完全に生前と同じ姿になった。 「もう、そんなにじろじろ見ないで、お化けでも見るように・・・あぁ、いいのか、それで」って、ペ

    • ドアの向こうへ vol.28

      師匠の容体は変わらないまま、3日間が過ぎ、日曜の朝を迎えた。 今日は父の落語カフェへ行く日だ。 「あぁ、お父さん、由美子、うん、今日よろしくね。9時過ぎの 電車で行くよ、うん、大丈夫だよ、そうそう、お友達の美樹さん、 そうそう、前にも言っていた、その美樹さん、も来てくれるって、 うん、そうそう、ね。ありがたいよね。うん、じゃぁまた後でね」 師匠の事を伝えるかどうか迷ったけど、胸にしまい込んんで電話を切った。      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  愛用の自転

      • ドアの向こうへ vol.27

        それにしても、夢だとしても縁起が悪いよな、師匠の足が 消えてるなんて。 そう言いながら否定をするように冷たい水で顔を洗った。 顔を拭きながら居間に戻ったが、どうにも気になって、 師匠へ連絡を入れた。  「・・・・・・」 呼び出し音は聞こえるが、 出る気配がない。兄さんの誰かがいるはずだけど出払っているのかな。 もう一度かけてみようとした時、着信音が鳴った。 平蔵兄さんだった。慌てて電話に出る。 「はい、由美子です。兄さん、師匠に何かあったんですか?」 「あ、さくらさん、はい

        • ドアの向こうへ vol.26

          由美子は父の落語カフェで上げる演目を考えていた・・・あ、そういえばカフェの名前って聞いてなかった・・・父もあえて言ってなかったから聞きそびれていた。 行ってからのお楽しみにしておこうかな。 そうしようと、演目を考え出した。 そうだ、お母さんのことを元にして【へっつい幽霊】にしてみよう・・・【へっつい】とはカマドや七輪の事を言う、今はその事も知らない人がいるだろうからガスレンジか電子レンジまたは電磁調理器に変えて噺を作ってみよう・・・夢中になって話を創作して気が付いたら窓の外が

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        ドアの向こうへ vol.22

          ドアの向こうへ vol.25

          父へ連絡をした。 「あ、お父さん、私、今大丈夫?」 「おぉ、由美子、大丈夫だよ、どうした何かあったか?」 「あったよ、へへ・・・今日から、私、二つ目になったよ」 ちょっと、間があって 「そうか、そうか、良かったな、由美子。 二つ目に・・・それはすごいな、お祝いしなきゃね」 「ありがとう、お父さん、来週の日曜日は、お休みだから、帰るね」 「そうなのか、それは、楽しみだ、待っているからね」 「ありがとう、お昼前には落語カフェへ直接行くね」 「わかった、気を付けてな、じゃあ来週に」

          ドアの向こうへ vol.25

          ドアの向こうへ vol.24

          それぞれの新しい道へ  あっという間に半年の月日が過ぎ、母の一周忌の4月になった。 今月から新たにW大学の落語研究会が主催する高座が始まった。今回で最終回の三度目のそれも無事に済んで自宅へ帰ってきた。 明日は母の命日の22日だ。 「そう言えば、お母さんと逢ってなかったなぁ・・・、お父さんはどうしているだろう」忙しさにかまけて、忘れていたわけではないけれど、時が過ぎてしまった。  「あっ、お父さん、しばらく、ごめんねずっと連絡もしなくて」その夜、父へ電話をした。 「おぉ、由

          ドアの向こうへ vol.24

          ドアの向こうへ vol.23

          父への思い、仕事への思い  あくる日、実家で過ごす最終日の日曜日の朝、師匠へ連絡を入れた。 「おはようございます、師匠」 「おはよう、さくらさん、ゆっくりできた」 「はい、父とも、ゆっくり話もできました。この後11時過ぎの電車で、そちらへ戻ります」 「どう、お父様は元気にしていなさるの」 「はい、元気です。お料理など、身の回りのことは、結構器用にこなしていました」  「あら、そう、それは良かった・・・もう少しゆっくりしてもらいたかったけど、今夜からってことで、鍵本の席亭に待

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          たいぞう/みんなでうたおう

          作詞 guitaraたいぞう/作曲 guitaraたいぞう 【心の龍の絵画教室】《代表 福島悠起氏》主催の【みんな展】2020.7.17~19に弘前市百石町展示館で開催されました。 その中でも特に目を引いたのが参加アーティスト全員で描いた【みんなの絵】でした。 画像越しでしたがパワーを受け取りました。そして、この絵を見た瞬間に聞こえてきた思い浮かんだメロディと言葉を歌にしてみました。 ぜひ皆様も一緒に歌ってください。 協力: 心の龍の絵画教室 代表 福島悠起 イラスト: rhiannon / guitarataizo アニメーション: guitarataizo

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          たいぞう/あの日の風に吹かれて

          作詞:guitaraたいぞう/作曲:guitaraたいぞう 2020年2月16日に鹿角市で開催されたHANA1グランプリのイベントで、 お招きを頂きそれに合わせて制作した楽曲です。 小学1年生から4年生まで通った花輪小学校への想い出を歌にしてみました。

          たいぞう/あの日の風に吹かれて

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          ドアの向こうへ vol.21

          ~父と娘とお酒~ 「さぁ出来た」お父さんを呼んで来よっと、 片付けしている和室の襖が少し開いていた。 お父さん・・・と呼ぼうとした時、父の背中が震えているのが分かった。 畳の上にアルバムが何冊も広げてあるのが見えた・・・ 母との写真を見て、父は泣いているのだろうか・・・ そのまま声をかけずにそっと居間へ戻った。 急に寂しくなってしまう、無性に逢いたくなってしまう、でもどんなに望んでも、叶わない現実になすすべもなく、ただ悲しみに覆われてしまう・・・これが最愛の人を失くした者の

          ドアの向こうへ vol.21

          ドアの向こうへ vol.20

          ~由美子の父、浅枝崇~ 「マスター、そろそろ帰ります。今日はいろんなお話を聞けて良かったです。ありがとうございました」 「ミルクティーもご馳走さまでした」と頭を下げた。 「どういたしまして、何だか俺ばかり話しちゃって、ごめんね」とマスターが言う。 「いいえ、そんなことないです、バイトの頃はこんなにじっくりお話できなかったから、大切なお話聞かせて頂き、ありがとうございました、また時間を見つけて来ます」 「いつでもおいで、待ってるよ、元気でね」 傍らで微笑んでる美樹へ 「じゃぁ

          ドアの向こうへ vol.20

          ドアの向こうへ vol.19

          ~羽化を果たした美樹~  俺は【引きこもり】への理解度が増すにつれて、美樹への対応が最悪だったと自覚した。部屋へ怒鳴り込むなんて、何と酷いことをしてしまったのだろう。何とかして、離れてしまった美樹との距離を縮めることが出来ないかと模索していた。 「済まなかった」の一言でいいのかもしれないが、そのきっかけが欲しかった。 だからという訳ではないが、帰宅後は書斎にこもって、美樹の子供の頃からのアルバムを何度も見直していた。 あの公園で二人でセルフタイマーで撮った写真がとても気に入

          ドアの向こうへ vol.19

          ドアの向こうへ vol.18

          ~鳥谷部 昇のドアが開いた~ 鳥谷部昇、美樹の父親はS市の市役所に勤務している。60歳の定年まであと1年の、2014年の4月に【福祉部・障がい者支援課】へ課長待遇で配属された。引きこもりに関する相談を受け支援をする課だ。 昇はこの課へ来るまで、【引きこもり】は、根性のない、怠け者の姿だと、ずっと思っていた。まして、娘の美樹がそのような状態だから、尚の事、正面から向き合うことを避けてもいた。  この課では月に一度、社会福祉士を講師に招いて研修も開催していた。講義を受けて行くう

          ドアの向こうへ vol.18

          ドアの向こうへ vol.17

          ~美樹の決断~  隣に座っている由美子が 「マスター、そろそろ帰ります。今日はいろんなお話を聞けて良かったです。ありがとうございました」 「どういたしまして、何だか俺ばかり話しちゃって、ごめんね」とマスターが言う。 「いいえ、そんなことないです、バイトの頃はこんなにじっくりお話できなかったから、大切なお話聞かせて頂き、ありがとうございました、また時間を見つけて来ます」 「いつでもおいで、由美ちゃん、待ってるよ、元気でね」 「じゃぁ、美樹さん、またここでお会いしましょうね。お

          ドアの向こうへ vol.17

          ドアの向こうへ vol.16

          ~美樹と由美子の出会い~ カランコロン・・・・と喫茶ひまわりのドアチャイムが鳴った。 「いらっしゃい」 綺麗な女性のお客さんが入ってきた。彼女こちらをを見てふわりと微笑んで一つ置いて隣へ座った。 「由美ちゃん、すっかり話し込んでしまったね・・・」とマスターは小さな声で言ってから、その女性の前へグラスとメニューを置いた。 「モカを」 「ハイ、承知しました。あ、美樹ちゃん、紹介するね。こちら浅枝由美子さん、高校時代にここでバイトしてもらっていたんだよ」 とマスターが紹介してくれ

          ドアの向こうへ vol.16

          ドアの向こうへ vol.15

          ~達彦の新しい出発~ 映画の帰り道に達彦は自分のことを多恵に話をした。 「わぁ・・・羨ましいな、何やってもいいなんて言ってくれて」 「そうなんですか?親方や女将さんは、多恵さんへはなんて?」 「両親には、後を継げなんて言われてはいないけど・・・どうしたらいいのか考えてしまうんだ」 「大学は後1年、通うけど、卒業後の進路を、まだ決めていないの」 「多恵さんの、やりたいことは何ですか?」 「・・・・・・それなんだ、それがまだ、見つけられないの・・・・」 そう言って多恵はため息

          ドアの向こうへ vol.15