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VISUAL Identity ~企業のロゴに込められた想い~

普段何気なく目にするロゴ。それは、企業が持つ理念や志、姿勢などを集約し、シンボルとして視覚化したものです。 これまで手がけた、企業の「顔」ともいうべきシンボルマークやロゴタイプについて、その由来を中心に、コンセプトや開発経緯などをご紹介します。
※本記事内容は、ideanote vol.71(2013年5月発行)からvol.93(2015年6月発行)に掲載したものです。

1.東武鉄道株式会社様

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東武鉄道様は2011年7月、東京スカイツリータウン(R)プロジェクトを契機に、グループ企業全体のさらなるブランド強化をめざしてグループロゴを制定しました。
新たに制定されたグループロゴは、「TOBU」の頭文字「T」を起点に、まっすぐ伸びていく「Future Cross」と名付けたラインを用いて、人々が集い、交流し、つながることで生まれる「すてきな未来」を表現し、東武グループとして、「沿線・地域の人々に安全・安心や楽しみ・期待感を提供する姿」や、「東京スカイツリー(R)の空に向かって高く伸びる姿」を視覚化したものです。
さらに4本のラインは上下左右・東西南北の全方位に張り巡らされたアンテナであり、沿線・地域のニーズを集め、先取りし、積極的に情報を発信する姿勢をも示しています。
また、カラーは「Future Blue」と名付けた青色を採用。これは、たくさんの人々の安全・安心で快適・便利な暮らしを支え続ける東武グループの「信頼性」や「包括力」、「期待感」を表しています。
ロゴの開発には、約10か月を要し、デザインの方向性やコンセプトの検討後、1500案以上の素案から徐々に絞り込んで決定しました。
このロゴには、東武グループが、にぎわいあふれる沿線を作り、たくさんの人々に愛され、笑顔あふれる「すてきな未来」に向けて、沿線・地域の皆様とともに、成長していきたいという強い想いが込められているのです。

2.株式会社 安藤・間(安藤ハザマ)様

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2013年4月1日、「安藤建設株式会社」と「株式会社間組」が合併し、新会社「株式会社 安藤・間(呼称:安藤ハザマ)」が誕生。創業から百数十年の歴史を持つ総合建設会社2社がひとつになり、新会社としてスタートしました。
コーポレートシンボルは、ブルーとグリーンを使い、スクエア(正方形)と大きな渦が合わさった形状をしています。このスクエアのフォルムを横切るように大きな流れが渦を巻くことで、堅実さと躍動感、力強さを同時に表現しています。
安定感のあるスクエアフォルムは、これまでの歴史の中で培った豊富な実績や信頼、そしてお客さま本位の誠実な姿勢を表し、また、大きな渦には、それらの価値を大切にしつつ、枠に収まらない新たな挑戦を果敢に続け、新しい価値を創造していこうという思いを託しています。そして、動きを感じさせるデザインによって、常に拡大し続ける姿を示しています。
シンボルの開発にあたっては、約200案の鉛筆書きスケッチから徐々に絞り込み、全社員のアンケートや経営トップの思いなどを踏まえて決定いたしました。またシンボルと併せて、呼称ロゴタイプや正式社名ロゴタイプを開発し、組み合わせパターンとして規定しています。
安藤ハザマ様はこれからこの新しいVIを旗印に、社員一人ひとりの情熱と時代に先駆けた技術力によって、豊かな未来の実現を目指し、建設業界でのプレゼンスをさらに高めていくことでしょう。

3.株式会社マルエツ様

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首都圏最大の食品スーパーマーケットチェーンであるマルエツ様は、現在270店舗以上を展開し、毎日約60万人のお客さまに利用されています。
マルエツ様は、1981年以来、ダイエーグループとしてダイエーの旧社章(上弦の月)をモチーフにした「D」マークを使用していましたが、グループ解消後、2007年5月に新しいCIを導入。「お客さまへの約束」と「ブランドメッセージ」から構成される「ブランド理念」とあわせて、「シンボルマーク」を制定しました。
このシンボルマークには、マルエツ様がお客さまにお届けする新鮮でいろどり豊かな「食」のイメージを、「魚」や「野菜」に見えるかたちと、生命感にあふれた色調で表現。特にこの独特の形状は、「にんじん」(キャロット)や「魚」(フィッシュ)に似ていることから、「キャロット+フィッシュ」で「キャロフィ」という愛称で親しまれています。また、この図形の中には、「マルエツ」の頭文字である「M」も表現されています。 そして、ブランドメッセージ「しあわせいかつ。」は、言葉のとおり「しあわせ」と「せいかつ」を掛け合わせた言葉で、お客さまにお届けしたい“ふだんの暮らし”の中で感じる“ちょっぴり幸せな気持ち”を表したものです。
これらのビジュアルアイデンティティを通じて、マルエツ様は、食品スーパーマーケットとして地域のお客さまの毎日の生 活になくてはならない存在でありつづけたいというメッセージを発しています。

4.株式会社バスクリン様

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株式会社バスクリン様は、医療用漢方製剤メーカーのツムラグループから2008年に独立し、2010年社名を「株式会社バスクリン」に変更しました。それに伴い、「企業としての未来像」を示し、かつ「社員の士気を高める」旗印として、「自然の力、新芽、成長」というキーワードが込められたシンボルマークを開発しました。
BATHCLINのBから出ている新芽は、バスクリン様がもっとも大切にする自然の生命を端的に表したものです。また新芽は、再生といった人や組織のあり方、状態にも比喩的に使い慣らされてきました。芽は、茎に支えられ、太陽の光と根から提供される養分に比例して成長します。社会や人々の生活に深く根付いた企業でありたいという理念は新芽に受け継がれ、成長し、やがては次世代の芽を生む原動力ともなることを表現しています。新芽は、バスクリン様のさらなる成長と発展の象徴なのです。

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2013年9月には、入浴剤「バスクリン」シリーズのリニューアル新発売に伴い、商品ロゴも一新しました。このロゴには、バスクリンの伝統カラーである緑色を基本に、オレンジ色で温かみを感じさせる商品特徴を示し、水色で進化感を伝えています。“インフィニティ”のモチーフは、「永遠に変わらない家族の絆」と、「バスクリンは進化し続ける」というメッセージを含んでいます。「伝統」「温かみ」「進化」「家族の絆」、これらすべてを表現した新しいロゴを、今後ファミリーブランドに共通して使用していく予定です。

5.巣鴨信用金庫様

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東京都豊島区に本店を置き、東京と埼玉に43店舗を展開している巣鴨信用金庫様は、「喜ばれることに喜びを」をモットーに「金融機関」から「金融サービス業」への転換を図り、さらに一歩進めた「金融ホスピタリティ(2005 年商標登録)」を掲げて、「どうしたらお客さまに喜んでいただけるか」ということを一生懸命に考え、お客さま満足を何よりも大切にする信用金庫を目指しています。
そんな巣鴨信用金庫様が2012年、創立90周年を契機にロゴマークを変更しました。 「SUGAMO SHINKIN」のマークは、頭文字の2つのSを囲む柔らかな円で地域の人々やお客さまとのつながりを表すとともに、そこから生まれる価値や感動の連鎖を表現しています。この円が上下に広がっていくことで、未来へ向けて地域のお客さまとともに成長していきたい、という思いを込めています。 また、柔らかで親しみのある書体は、「喜ばれることに喜びを」をモットーに、常にお客さまを起点としたサービスと、ホスピタリティあふれる対応を目指す役職員全員の気持ちを表現しています。
カラーは、ブルー、グリーン、イエローの3色で構成。清らかな水のように透き通ったブルーは「信頼」を、新緑のように澄んだグリーンは「親しみ」や「調和」を、清く輝くイエローは「喜び」や「幸せ」「未来への輝き」をそれぞれ表しています。
地域のお客さまとともに歩んできた巣鴨信用金庫様の、未来へ向けた新たな思いがこもったロゴマークです。

6.三菱日立パワーシステムズ株式会社様

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2014年2月1日、三菱重工業株式会社様と株式会社日立製作所様の火力発電システム事業が統合され、新会社「三菱日立パワーシステムズ株式会社」がスタートしました。ガスタービン、蒸気タービン等火力発電システム事業や地熱発電システム事業などを手がける新会社は、売上高で1兆1000億円規模となり、両社の持つ経験豊富な人材、高い技術力、幅広い製品ラインナップを結集して、火力発電システム分野におけるグローバルNo.1プレイヤーを目指しています。
そんな世界で存在感を発揮しグローバル競争で勝ち抜いていかねばならない新会社のシンボルマークは、M、Hの文字と、赤いラインの組合せで成り立っています。 MとHが一体となった力強いシルエットは、「三菱」と「日立」の火力発電システム事業が一つになることで生まれる強い連帯感とパワー、そして責任感を表しています。左右にかかる赤いラインは地球の表面を表し、グローバルな広がりをイメージさせるとともに、右肩上がりのカーブで強い成長力を示しています。また、その赤い色は、地球環境に貢献していく決意と熱意(エネルギー)を表現したものです。
「火力発電・環境技術で地球の未来を明るくする」というビジョンのもと、エネルギーと環境という地球規模の課題解決に貢献するために誕生した三菱日立パワーシステムズ様が、これから世界へ挑んでいく決意がカタチになったビジュアルアイデンティティです。

7.トモニホールディングス株式会社様

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トモニホールディングス株式会社様は、徳島銀行と香川銀行の共同持株会社として、2010年4月に誕生しました。
ネーミング「トモニ/TOMONY」は、両行の特色である地域密着の姿勢を「ともに」というキーワードで表現し、さらに「持株会社(holdings)」との連動性の視点から「ともに=tomoni」を「tomony」というローマ字表記に置き換えました。これにより「to money」→「To money holdings(お金をしっかり保持するために)」という独自の解釈を加え「両行がともに協調しあって、地域のお客さまとともに成長し、地元経済の発展を支えていく」というビジョンを表現しています。
そして、ブランドマークにおいては、「ともに」協調しあって、地域のお客さまと「ともに」、明日への発展を支えていくというビジョンを、翼を広げ飛翔するイメージで表現。しっかり支えあって飛び立とうとするイメージが、未来の発展への思いと行動を表しています。 左右に広がる豊かな曲線はヒューマンでやさしいイメージを、2つの形が合わさる縦の直線は知性や信頼感を表現しています。ブランドカラーは、ヒューマンで温かなイメージを感じさせる赤色を基調としており、少し青みのある赤色にすることで、知的で誠実なイメージも感じさせるものにしています。
形も色も、「親しみやすさ」と「信頼性のある品格」を“ともに”合わせ持つものにしようと意識したことで、先進的でオリジナリティのあるビジュアルアイデンティティになっています。

8.千代田化工建設株式会社様

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エンジニアリング会社として、石油・ガス・化学・産業設備などの大規模プラントを世界中で数多く手掛ける千代田化工建設様は、2012年に本社機能を横浜市みなとみらい地区へ移転。それをキッカケに、社員が対外的に発信するイメージの視覚的なバラバラ感を是正し、企業イメージの統一感を高めることを目的として、オフィスツール間のデザイン統一に向けたタスク活動をスタートさせ、ロゴのリファインとコーポレートデザインシステムの導入に着手しました。
シンボルは、その意義付けとして、右上方へ伸びていく2つの逆三角形から総意の結集、ハードウェアとソフトウェアを統合したシステムおよびブレークスルーを表しています。 このシンボルとの組み合わせと調和を考慮して、「CHIYODACORPORATION」とシンプルに2行組みで整えられたロゴタイプと組み合わせることで、ビジュアルアイデンティティを構成しています。
コーポレートカラーは、「清らかさ、透明、無限」を象徴するライトブルーと、「堅実、知性、信頼」を感じさせるブルーの2色を基本色とし、シンボルだけでなく、デザインアイテムの基調色・アクセント色としても展開しています。
また、グループのシンボルは、グループ役職員の公募から採用されたもので、現行シンボルをアレンジしたうえで、グループを示す「G」の文字で囲むことによって、現行シンボルの意義付けを踏襲しつつ、グループが一丸となり、さらにグローバルに発展していく様を表現しています。

9.株式会社Booklive様

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電子書籍配信会社の株式会社BookLiveは、2011年1月28日に設立。電子書籍ストア「BookLive!」の運営と、電子書籍配信プラットフォーム事業を行っています。
企業理念は「新しい価値を創造することで、楽しいをかたちにする」。シンボルマークはその企業理念をビジュアルとして翻訳したものです。新たな技術革新と人々のライフスタイルの変化に対し、BookLiveのビジネスが電子書籍を核として大きく拡がり輝く。その「拡がり」と「輝き」を、語尾の「!」を利用して表現しています。 「本と太陽」「発見と喜びの連鎖」「暖かくダイナミックな展開力」。この3つのコンセプトを、「!」とそれが扇型に拡がった形によってデザインしています。つまり、「!」はBookLiveのサービスを通じて提供する発見・喜びを意味し、「!」の回転で本がスムーズにめくれる様子を表すとともに、「!」で作る輝きで、BookLiveが今後電子書籍市場を明るく照らしリードする太陽の役割を果たすことを示しているのです。
コーポレートカラーのオレンジは、暖かみのある積極的なコミュニケーションによってお客様から親しみを持っていただくという使命を表しています。
いつでも、どこでも、多くの読者にさまざまな書籍をお届けし、本が持つ価値を読者と共有しながら、新しい価値を創造することで、楽しいをかたちにしていく。その想いが込められたビジュアルアイデンティティです。

10.周年記念ロゴ

今回は企業の周年記念ロゴをご紹介いたします。周年記念ロゴは、企業設立からの周年記念の際に作られ、一般的に1年間限定で名刺やカタログ、広告、WEBサイトなどに使用されます。また、ロゴと併せてメッセージ(スローガン)を加えることもあります。 それでは各社の周年記念ロゴを見てみましょう。

■ウシオ電機様 50周年ロゴマーク(2014年)
ウシオ電機様の50周年ロゴマークは、そのルーツであるランプ製品や、人々の笑顔、光や太陽をモチーフにデザインされています。ロゴマークの七色の光は、用途が拡がり続ける光の可能性を示し、その可能性をウシオの光技術で実現することで、みんなが笑顔になる素敵な世の中にしたい、という想いを表現しています。

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■八千代銀行様 90周年(2014年)
八千代銀行様の90周年ロゴマークは、大地に根ざす「大樹」をモチーフに、地域を支える憩いの場や未来への成長を表現しています。地域に根を張った金融機関として、金融業務を通じて地域社会の発展に貢献する想いを周年ロゴマークに反映させました。

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■読売新聞北海道支社様 発刊50周年(2009年)
読売新聞北海道支社様の発刊50周年記念ロゴマークは、大自然に囲まれた北海道の大地をモチーフに、その地で生活を営む人々により支えられてきた、読売新聞北海道支社様の50年間を表しています。大自然のモチーフになじむ素朴なタッチの風合いと、柔らかな色合いで表現しています。

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周年記念ロゴは、企業のロゴと併せて使用されることが多いため、企業のロゴとの親和性を考慮して開発します。そして、お客さまや取引先、地域社会など幅広いステークホルダーへ感謝の気持ちを伝えるとともに、自社の想いや姿勢をデザインに反映させています。


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