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原田マハ『ジヴェルニーの食卓』を読んだ


これまで美術へ興味を持つきっかけがなく生きてきたけど、ホロライブのらでんちゃんの配信で、愛情深く作品に接し、本当に生き生きと楽しそうに美術について語っているのを見て羨ましくなって、少しずつ美術館に足を運ぶようになった。

大阪中之島美術館でモネ展をやっているそうで、せっかくなら少しでも知識を入れてから行った方が楽しいのではないかと思い、手に取ったのが『ジヴェルニーの食卓』。

私の中で今まで天才画家と人間が結びついておらず、天啓みたいに降りてきたものを、天才たちが描いていた、みたいなイメージを持っていた気がする。それがぐるっと覆って、画家たちも人間で、時代の流れと周りの人間との関わりの中に身を置いていて、私と同じように幸福を味わったり苦悩しながら地道に絵筆を走らせていたんだと気付いた。当たり前だけど。絵画として飾られている風景も人もリンゴも、画家の目を通して、あるべくしてそこに今もある。なんでこの絵がこんなに有名なんだろうかと思う絵には、幻想的な宗教画や写実的な絵画にはない、一度見たら忘れない、構図や色味、切り取られた瞬間の魅力が込められてるのかとすごく納得した。なんて素敵な世界。

下記、好きな部分引用。

うつくしい墓(アンリ・マティス)
「そして、ふとした瞬間に、そのもの、その構図を好きになってしまう。光、色、かたち、配置。どれほど速く、的確に、また心情をこめて写し取るか、おわかりでしょう?だって、ひと目ぼれなのよ。その気持ちを、一瞬を、逃してしまってはだめ。たちまちまとめてしまわないと、一分後には世界は変わってしまっているのですから。」

エトワール(エドガー・ドガ)
「襟ぐりの大きく開いたドレス、奥をちらりと覗かせる膨らんだスカート。脚をうつくしく見せるトウシューズ。スポットライトを浴びたとき華やかに見えるように、うなじは白く、頬と唇は紅く染める。愛想のいい笑顔、しなの作り方。何もかも、金持ちの紳士の気を引くため。彼女たち自身が、金を得るための道具になっているんだよ。(中略)そうだ。彼女たちは、私たちなんだ。このシステムは、私たちが属している美術の世界とよく似ているんだ。芸術家と、パトロン。私たちもまた、パトロンの気を引くために、日々、絵を描いているじゃないか。パトロンに見出されなければ、生きていけないじゃないか。この世界の星になりたいと絶望しているじゃないか。君も、私も。メアリー、私たちは、彼女たちなんだよ。だから、私は描き続ける。星屑のような彼女たちを。星屑ではなく、いつか夜空に輝くいちばん大きな星になればいい、と夢想しながら。」

ジヴェルニーの食卓(モネ)
「時間によって風景は変わるんだ。いま見ているこの景色だけがすべてじゃないんだ。ああ、なんねそんな単純なことに気づかなかったんだろう。なんでそんな当たり前のことが・・・・・・こんなに、こんなにうれしいんだろう」

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