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ラース・フォン・トリアー『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を観た

胸糞映画とか鬱映画とか、そんな言葉で片付けられる映画ではない気がする。先天的な身体の不具合も、あんなこと言わなければ良かったという後悔も、お金さえあればなんてことなかった問題も、通常起こり得ること。その全てが悪い方向に噛み合って進むことも。

自分の身体のことすらままならないのに、利己的な他人や社会規範とも共存しなければならず、その衝突から生じる理不尽にも対応しなければならない。その時に何を守るかを自分で決められることは強さかもしれない。

自分の判断でその後に周囲の人間がどう感じるか、どう変わっていくかは結局のところ誰にも分からないなら、それぞれが自分の思う最善を選び続けるしかなく、実際今生きてる私の周辺だってそう回ってるんだろうな。

愛情深く、自然や素朴なものに幸福を見い出せて、ミュージカルをこよなく愛する美しい主人公が、物理的にも精神的にも暗い世界に落ちてゆくのは外野から見ているだけで苦しかった。でも、彼女の中に、他人には理解できない救いがあったと信じたいし、私の中にもそういうものがあると信じたい。

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